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第8話〜決闘〜

今日は、いつもより少し長めです。

王城の廊下を公爵とともに歩いているのだけど、きらびやか過ぎる。僕には眩しすぎる。元々、自宅が名家で広いとはいえ、木造で木目とかも見えていて、侘しさが好きだった。そんな僕からすると、別世界だ。大理石とか綺羅びやかな宝石類とか彫像とか、もう言葉がない。

因みに、陛下へ譲るつもりの刀はすでにアイテムボックスから取り出し、肩から下げている。傷つかないように布を巻いてあるが。


「グレン殿。落ち着かないかね?」


「ええ。昔から侘しい家に住んでいましたので、眩しく感じます。」


「そうか…。木材の家も憧れるな。」


そんな会話をしているうちに、他よりもさらに豪華で大層な作りの扉の前にたどり着いた。左右の隅でフルプレートの騎士が佇んでいる。隣の公爵が彼らに告げた。


「私は、アルベルト−フォン-アーソン。マーリン公国の参謀総長である。陛下にお目通り願おう。」


「陛下は、中におられます。どうぞ。」


「参るぞ。グレン殿。バベル様を降ろしてくれ。」


「バベル降りて。」


「キャン!」


僕たちは、公爵に連れられて中へと進んだ。奥には、豪勢な巨大椅子が配置され、誰かが座っている。あれが陛下であろうか。その周りを貴族らしき人たちが囲っている。


「陛下。遅くなりました。」


「よい。アルベルトよ。それで?隣の者らは?」


「は!こちらは、グレン殿。道中を盗賊団【桑園の傀儡】から救って貰いました。また、商人として新たな武器を提供いただきましたのでご同行頂きました。その横にいるのが、彼の相棒でフェンリルのバベル様であります。」


【桑園の傀儡】?あの貧相な装備の集団にそんな大層な名前があったんだ。後で、公爵に聞いてみよう。


「新たな武器!それにフェンリルとは…。神は、我らをお見捨てにはなっておらなかったか。公爵よ。その武器とやらはどこにあるのだ?」


「それは、後ほどお見せいたします。その前にこの者の武器の一つをご覧いただきたく。陛下も初めて見る武器と思われます。」


「ほぅ。面白い。見せてもらおうか、グレンとやら。」


「畏まりました。こちらになります。」


僕は、肩にかけていた布から備州長船を取り出した。僕は、それを近くに取りに来た貴族に渡し、彼経由で陛下へと渡った。いいやつだけど。大業物というのは嘘。それならもっとするはず。良業物くらいならあるんじゃない。そこの中間くらい?因みに僕が持ってるのは、菊一文字なんだ。親父は虎徹持ってるけど。新選組とうちの家は全く関係ないよ。じゃあ、何で持ってるかというと、まぁ、色々あるんだ。


「これは…確かに見たことがない。これはなんという得物なのだ?」


「これは、カ・タ・ナという武器にございます。」


「カタナ?これの切れ味はどの程度なのだ?」


「彼が言うに練度にも左右されますが、兵士が使っている剣なら一振りで両断できるとのこと。また、剣よりも軽いため、連撃にも向き、一人で多数を相手にすることも可能となるでしょう。」


「なるほど。素晴らしい。これはいかほどするのか?」


ええと…。陛下からお金はもらえないよ…。僕がオドオドしていると僕の心中を察したアルベルト様が周りの貴族たちに伝えてくれた。


「陛下。彼は盗賊団を討伐できる腕を持ってはいますが、貴族ではありません。陛下からお金は貰えないと考えているようであります。」


「な…」


「貴族ではない…平民ということか。」


「平民でありながら、【桑園の傀儡】の者を倒すとは…」


「そのうえ、商人でもあるのだろう。」


「彼の実力は、どれほどなのだ?アルベルト。」


貴族たちの中でも、逞しい肉体を持った中年の男が公爵へそう尋ねた。呼び捨てということは、この人が3大公爵家のもう一つかな?


「アルファードか。イルシス元騎士団長を覚えているか?」


「当たり前だ。私もあの方に剣術を学んだのだ。今の私があるのは、あの御方のおかげだ。今は、騎士団を引退して、お前のお抱えの騎士団を率いているのだろう?」


「そうだ。アルファード、落ち着いて聞けよ?」


「あ?」


「イルシス前騎士団長は、グレン殿に破れた。それも、一撃でな。」


「は?待てよ…。その少年にあの人が負けたってのか?」


「ああ。豪腕まで使い、本気だった彼の一撃をグレン殿は撃たせることもなく、首を捉えた。ただの少年ではないのだよ。」


アルファードって人だけじゃない。周りにいた貴族たちが呆然としている。イルシスさんってそんなすごい人だったんだ。確かに普通の人ならあんな勢いで迫られれば、怯むだろうね。でもね、うちの親父はもっと凄かったよ。何もしてないのにさ、殺気を向けられるだけで身動き取れなくなるんだから。その上、寸止めなんて考えずに振り下ろしてくるんだから。それに慣れてると、なんともないんだよね。


アルファードさんがこっちに向かって歩いてきた。なんか、嫌な予感がする。


彼は、満面の笑み…いや、悪そうな笑みを浮かべながら、俺の肩に両手をかけると…


「グレンとやら、私と決闘をしてもらおうか。イルシス殿を負かしたその実力見せてもらいたい。」 


「アルファード、私を疑うというのか?神獣も懐いておられるこのグレン殿が騎士道に反する事をしたとでも」


「いや?俺はただこの少年と手合わせをしてみたいだけよ。イルシス殿ほどの武人を一撃で仕留められる存在などそうそう出会えるものではない。なら武人として、手合わせを願うというのが当然というものだろう?さあ、少年!1つ手合わせと参ろうか。ガッハッハ!!」


「待ってください。それをやることで私にどんな益があるというのですか?」


「何?」


「私は、商人です。アルファード様のような武人ではございません。私に利益もない事で戦いたくはありません。」


「分かった!」


「陛下?何がでしょうか。」


「もし、アルファードが勝ったならば、この刀と言う物は、献上物としてもらおう。ただし、アルファード、そなたが負けたら、彼の言い値をそなたが支払うのだ。それでどうだろうか、グレン。」


「まぁ…それでしたら、お受けいたします。とりあえず、御名前を教えていただけますか?アルファード様。」


「ん?わしの名か。この国の出身でないのなら知らぬのも当然か。わしはマーリン公国軍務大臣兼、現騎士団長、アルファード-フォン-ルシウスだ。アルベルトと同じく公爵である。先ほども言ったように剣術をイルシル殿から教わったのだ。」


「なるほど。畏まりました。では、参りましょうか?」

僕たちは、それから王城の庭で決闘を行うこととなった。使う得物は、僕はいつもどおり、逆刃刀。アルファード公爵は、素振り用の木の棒を持った。なめられてるな。


知らないぞ、国王と他の貴族がいる前で負けても。そのうえ彼は、楔帷子も何もつけてない。知らないぞ。骨折とかしても。


「アルベルト様!バベルをお願いしますね。」


「ああ、構わん。どのみち寝てるのでな…。」


バベルはアルベルト公爵の足元で爆睡をかましている。何気にすごいメンタルしてるよなこいつ。


「さぁ、こい!少年。」


「では行きますよ。【封眼法:白世界】」


本気で行こう。一応、大橋流の極意の一つ使ってみるか。まぁ、近いやつで言えば、写輪眼?全然あんなにかっこよくないけど。うちのは、一瞬だけ視界を奪う能力。別に目から炎が出たりとかじゃない。自分より力量が劣っている相手に対して、一瞬だけ怯ませることで視界を奪う極意。


因みに親父が本気でやったとき、俺は半日目が見えなくなった。


イルシル殿に極意が通じたのだからこの人にも通じるはず!


「な!?なんだ?目が見えん。」


よかった…。上手く行ったようだ。


僕はその隙間に彼の手から棒をはたき落とした。刀で頭とか叩くと最悪死んじゃうから。それでも、勢いよく叩いたから流血しちゃってるけど。


「痛!何が起きた。目が見えなくなっているうちに…。得物がなくなっておる。」


すると近くにいた騎士が近寄ってきた。


「団長そのままで。回復魔法をかけます。【ヒール】」


おお!初めてこの世界で魔法を見た!でも、回復速度遅いなぁ。まあ、想像の中のものは、想像でしかないってことか!


「キャーン!!」


公爵にあずけていたはずのバベルが僕に飛びついてきた。俺の足元に来ると、そのまま寝息をかき出した。こいつ、いつか調教の必要がありそうだ。


「流石流石!グレン殿、手間を取らせたな。このアルファードは、昔から武闘派で自分で戦わんと相手の力量を認めようとせんのだ。まぁ、それで少しは懲りたであろう。ただ、先ほどの技は何なのだ?儂らには何も変わらなかったが。」


「意識を向けた相手にしか効果のない私が扱う剣技の一つです。相手の視界を一瞬奪うものです。まあ、実戦ではあまり役に立ちません。その前に少し隙ができるので。」


「確かにそうかもしれんが…試合では無敵だな。そうでもありません。私の父親には全く効きませんでしたし、あの人は目が見えずとも耳を頼りに私の剣を避けてしまいましたし。上には上がいるというものです。」


「強者だけが言えることよな。それにしても、面倒をかけて済まなんだ。」


「私は構いませんよ。」


「クク(笑)少年にこうまで言われてしまっては、面目が立たないな。アルファード!」


「煩い!アルベルト。彼は何者なのだ?ここまで強い者に会ったのは、イルシス殿以来だ。」


「言っただろ。まぁ、彼はそもそも武人ではないがな。彼は我らに新たな武器をもたらした。その武器が浸透すれば、お前のように剣を用いる騎士という存在自体が消えるかもしれん。それほどの武器だ。」


公爵同士が話していると、離れたところで見ていた国王一行が近づいてきた。


「アルベルトよ。先程から申しておったな、彼がもたらした新たな武器とは、何なのだ。」


「彼がもたらした、武器とは、銃です。皆の分かりやすい言い方で言うなれば、ピストルのことだ。」


「ピストル?それならば、元々あるではないか。これのことであろう?」


陛下は懐からピストルを取り出した。


「陛下失礼ですが、彼がもたらしたのは、遥かに高性能なものなのです。因みにこれが私が貰った拳銃なるものだ。」


「これは…なんと珍妙な。」


「もしや…いちいち弾を込めずとも連続で撃てるのか?」


「アルベルト!ズルイぞ!我より先に手に入れるとは。グレンとやら、私の分はないのか?」


「陛下には、先程の刀があるではありませんか。」


「だ…だが、そっちの銃というのも捨てがたいのだ。そもそもわしは剣術はからっきしなのはそなたらも知っているだろう。」


なんだろうか…。家臣であるはずのアルベルト公爵に遊ばれている一国の王。というか、精神年齢的に見れば親子?む?さっきから他の貴族たちもコッチをチラチラと見ている気がする。


「我らもそれがほしい。アルベルト殿!どうか彼に頼んではくれぬか?」


「アルベルト殿!」


「アルベルト!」


「どうしましょうかね…。グレン殿?用意はできるか?在庫は?」


「まあ、用意自体はできますが、先程の決闘にも勝ちましたし、無償というわけには参りません。安いもので金貨1枚。高いものは、限度はございません。どうなさいますか?」


おっと、毎度見るこの呆然とした顔。この世界に来てから何回見たことか。この感じだとまた、安いということなのだろうか。


「買う!買うぞ!金貨数枚で手に入るのならば安いものだ。」


なんか盛り上がってる。別にいいけども。ならば、買ってくるとするか。おっと…。さっきから3時間ぐらいしか経過してないけど。まぁ、行くか!『闇市場』!


「とんでもないときに来たもんだな!」


イールイが今までに見たことが無いような慌て方をしている。何かあったのだろうか。嫌な予想が的中したか?


いや、その可能性は高そうだ。外からサバゲーで散々聞いた銃撃戦の音が聞こえる。というか、これ…実弾の音じゃね?


「この前追い出した娘が、逆恨みでもして仕掛けてきたか?」


「…!まぁ、そうだ。だから、今は渡せんぞ。使うからな。」


「数は?何人いる?装備は?」


「数は10人、こっちは俺一人。ただ向こうの装備は、拳銃だけだな。一応防弾チョッキは着込んでいるようだが、安物だな。」


なんだ…。10人しかいなくて、拳銃だけならなんにも問題ない。サバゲーの世界大会で個人戦で優勝経験のある僕からすれば、簡単すぎる。まぁ、あのときは刀ではなかったけど。それでも相手はプロだったわけだから、現在の状況とさほど変わんない。


「俺がやる。その代わり、終わったら格安で銃を何丁か売ってくれな。」


「無茶言うな!刀だけでやる気か!?」


この前、何気なくこの窓口から向こう側に出てたけど、そもそも出れるのだろうか。…普通に出れたな。この店の敷地内なら出れるのか?


「少ししたら見に来るといい。まあ、元娘は、生かしておいてやるよ。」


呆然とした彼を置き去りにして、奥へと進んだ。初めてこっちに来た。扉を開けようとしたとき、その漂う雰囲気から気づいた。あぁ、この先にいるな全員。素人か。固まって動いてたら機敏な動きできないだろうに。

俺は、息を整えると姿勢を低く構えた。左親指を鍔に当てて少し鞘から抜いた。さてと…行くか!


扉を右肩で打ち破るとその場で一閃。一人目を殺った。それに気づく前に近くにいた2人の首を切り落とした。

そこでようやく、コイツラは自分たちが狙われてることに気づいたようだった。銃を構えたやつに一気に距離を縮め胴への一閃。これで4人倒した。残すは、6人逃さないようにしないと…。


とりあえず、逃げようとしてるやつをさっきカウンターにおいてあったナイフを投げて、終了。そこからは、彼らの銃撃を避けながら少しずつやっていった。一つ言うことがあるなら、手加減はしないけど、苦しませない殺し方をする。切られたとも気づかないようにするためだ。声を上げさせる前に息を絶えさせる。勿論これも、親父の教育の賜物。まじでうちの家系はどうなってんだか。


残すは、イールイの元娘だけになったとき、その場は敵の血によって海のように染まっていた。すすり泣く声が聞こえる。イールイに謝る声が聞こえる。そこを覗こうとすると、こちらへ向かって撃ってきた。面倒臭い。殺るのか、謝るのかどっちかにしろよ。


俺は、少し出ている彼女の左膝を狙って離れた位置から刀で突いた。


「痛い!!痛い痛い〜!!!パパーーー!!助けてよ!!」


こいつは居たがってのたうち回っている。これ以上撃たれても面倒なので足で銃を握っている手を押さえて、奪い取る。


こんなことしといて今更、助けてってどの口がいってんだ。でも、なんか虐めてるみたいで、やり辛いな。そう思っていると、俺が来た方向とは、反対側からイールイが誰かを伴ってきた。


「ん?イールイか。ようやく来たか。って…」


「お久しぶりですな。グレン殿。うちの孫がご迷惑おかけしました。」


「ケインさん…。イールイ?どういうことだ」


「親父は、地元警察とコネがある。銃や弾薬での取引があるからな。こいつは、警察に引き渡すことにした。」


絶縁したとはいえ、娘には残酷になりきれないってことか。まぁ、俺としては、そのほうが気が楽だからいいけど。


「そうか…。ならあとは任せる。娘ならあそこで泣いてるよ。膝だけ突いたから。血止めだけしてやってな。イールイ、取引あるから俺は、奥で待ってるぞ。終わったら来てくれ。」


「ああ。ありがとう。」


僕は、カウンターの前にあるソファに腰を下ろした。どっと来た疲労から俺はそのまま眠った。

「グレン殿。起きてくれ…。」


「終わったか?」


「ああ。娘は、警察に引き渡した。ありがとう。娘をこの手にかけるのは、流石に気が引けていたのだ。それで?何がいるんだ?」


「ベレッタM9を5丁。デザートイーグルを1丁。キャボット ダマスカスを1丁頼む。できればそれぞれを豪華な箱に入れてくれると助かる。貴族に売るからな。」


「なるほど。それなら在庫があったな。それぞれに弾倉は、5つずつでいいか?」


「ああ。で?いくらだ?」


「弾薬代と最初の6丁に関しては、今回のお礼だ。どれも箱に入れておく。キャボット ダマスカスだけ支払ってくれ。4,5000ドル(450万:金貨4枚&銀貨50枚)だ。」


「分かった。ほら。」


「よしっ…ちょっと待ってろ。」


彼は奥に向かうと腕に箱をいくつか乗せて戻ってきた。


「これで…全部だな。ありがとう。今後ともよろしく頼むよ。」


「ああ。店、キレイにしろよ?これ(50万:銀貨50枚)でさ。」


「いや!これはもらえない。おい!待てって!」


彼の声を背に僕は戻った。あ!!返り血やばいかも。ん?何もついてない。やはり、向こうとこちらでは、何もなかったことにしてくれるのか。ありがとう。女神様!


「皆様!在庫を確認いたしました。」

現在の総資産…9,500万円

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