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23話

「イールイ〜。取りに来たぞ…。」


「また来たのか…。何度来ても一緒だ。これ以上面倒ごとはゴメンだ。」


「そう言うなよ、イールイ。廃棄物処理を頼んでいるだけだろう?」


「頼んでいる?ふん!押し付けているだけだろう?一度でもまともな金額を支払ったことがあるか?あんた達は、格安で俺に押し付けているだけだ。」


何か揉めているようだ。俺は、ゆっくり、こっそりと近づいていった。


「ここに戦車や燃料、弾薬等が出されているということは、引き取り手が見つかったということだろう?」 


「それがどうした!?」


「私達にも会わせてくれ」


「彼に何をするつもりだ!」


「お前の父親から話は聞いている。お前たちの家系が何でも不思議な力で異世界とやらに通じていると。その男もその世界の住人なのだろう?」


「だから、それがどうしたと言っている」


「我らを…アメリカをその世界に導いてほしいのだ。」


「それは無理な注文ってもんだ。」


俺が突然、会話に参加したことで、全員が驚愕した。驚いたのは、それだけではない。彼らを最も驚愕させたのは、俺の刀が漆黒の炎に包まれていることだった。無論、これは血統スキルの一つである武器召喚で生み出したものだ。俺以外が持つことのできない武器だ。


「君が異世界から来ている人間かね?」


「だったら…どうした?」


俺は刀を右手でしっかりと握り、彼らの周りを円のように歩いた。いつでも切りかかれるように。そして左手は、鞘をしっかりと握っている。


「先程の話を聞いていたのかね?」


「ああ。お前らを向こうに連れていくという話だろう?」


「そうだ!やってくれるだろう。」


「どうして俺がそんなことをやらないとならない。」


俺は、アイテムボックスにイールイが準備してくれた商品をすべてしまった。彼らには、戦車や弾薬が消えたように見えたことだろう。


「な…何を。」


「俺は、物なら何でも持ち運べる。映像でも物でも金で買い取ってくれんなら取引するのも別に構わん。だが、人は連れていけない。それが、神との契約だ。」


「神…だと?」


「ああ。俺は、向こうの世界では神の使徒に当たる。あんた等が誰だかは知らんが、俺に命令できんのは、神だけだ。」


「人を連れていけないとはどういうことだ。」


「知らんね。あの方がそうおっしゃったのだ。世界を行き来することができるのは、俺だけだと。」


「方法があるのではないか?」


俺は、試しに最も近くにいたイールイの肩を掴み、アイテムボックスを開こうとしたが、スキルが反応しなかった。させないということだろう。ありがたい事だ。うまくこの状況に使わせてもらおう。


「どうした?グレン。」


「いや、試しにお前で挑戦してみたが駄目だった。」


「?」


「俺の能力では、人間は運べないと言うことだ。」


「なら、向こうの政治、経済、文化、人種。君が調べられる全てを我々に教えろ。」


「あ?」


「今後、何かが起こるかもしれん。それに備えるのだ。そのための情報源として、我らに協力してくれ。」


「なんで俺が?」


「金での取引なら構わんと言ったろう?」


「確かに言った。なら、一度の報告で100億支払ってもらおう。些細なことでも、重要なことでもな。」


「な…!100億だと!?」


「どのくらいで国家財政が崩壊するか見ものだな。先に言っておくが、これ以上高くなることはあっても、安くなることはない。これが俺を雇う条件だ。それとあんたらのような他人を利用することしか脳のない糞どもと取引する気はない。俺は、イールイ以外とは一切の取引は行わない。」


「餓鬼が…」


「調子に乗るなよ。糞ども!ここで斬り殺してやってもいいんだぞ…」


俺の刀は俺の怒りとともに燃え上がった。炎が俺に悪影響を及ぼすことはないため、俺自身が燃え盛っているように見えるはずだ。


「我らを殺せば、どうなるのかわかっているのか?」


「虫けらを殺してなんだというのだ。」


俺は、刀をひとふりした。奴らの足元に一筋の炎線が生まれた。


「ひぃ…」


「こいつ等は…ここで!!」


俺が、刀を両手で握り、全力で振りおろそうとした時


『ドン!!』


全員が音の方を振り向いた。そこには、スーツを身にまとった中年の男が立っていた。こいつ等とは違う。どこか風格を漂わせる。


「誰だ!?」


「うちの馬鹿共が失礼した。最後まで話を聞かずに突っ走ってしまったのだ。」


俺たちの方へ歩きながら、その男はそう言った。礼儀正しい身のこなしとは裏腹に俺に向けた殺気を俺は見逃さなかった。俺は、刀を構え直すと一気に間合いを詰め、そいつの喉仏へ刀を突きつけた。


「どういう了見だ?謝罪をしに来た人間が対象に向けて殺気を飛ばすとは、死にたいのか?」


「いや…申し訳ない。君が警護が必要かどうか試させてもらった。不快に思われたのなら謝罪する。」


「警護?」


「ああ。こいつ等は、勝手に動いてしまったが、君の存在を我々アメリカが重要視していることは事実だ。」


「んで?あんたは誰だ?」


「貴様!失礼だぞ、」


さっきまでビビっていたやつが、この男の登場で調子に乗ったようだ。威張りちらしていた先程のような雰囲気を醸し出したので…


「それ以上一言でも言ってみろ。胴体とその空っぽな頭を切り離してやる。」


「うげぇ!」


「彼は、私と喋っている。貴様らはさっさと帰れ。」


「し…しかし!」


「社会的に抹殺してやろうか?」


「いえ!失礼致します!」


糞どもは、逃げるようにその場から走り去っていった。


「悪かったな、イールイ。うちのバカ共が面倒をかけた。」


「謝罪ならグレンにしてくれ。直接的な被害を受けるのは彼だ。」


「申しわけない。」



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