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19話〜初日の売上②〜

「そういえば…ゴーセル、ダージル。使わなくなった鎧とかあるか?」


「なんですか?唐突に…。」


「いや…俺の取引先のやつの趣味が結構変わっていてな。良いものを安く売ってくれるやつなんだが、骨董品を集めるのが好きみたいでな。使わなくなったやつとか、小さくなったやつとかあれば、持ってきてくれ。今とはいわないが、持ってくれば、俺が買い取ってやる。」


「お金をいただけるんすか?」


「原型を保っているもの限定だが。」


「なら、今すぐ、持ってきます!まぁ、任せてください!実家この店のすぐ近くなんすよ。」


「なら、頼むとするか。急げよ。他のやつの報告を受けてる間にもってこい。」


「わかりました。じゃあ、行ってきます。」


ダージルは、階建を駆け下りていった。いくらで買い取ってやろう。


「なあ、ゴーセル。」


「なんですか?」


「新品の鎧っていくらするんだ?」


「まあ、俺達が着るような鎧は、銀貨10枚程度ですかね。騎士団長クラスになれば、金貨5枚とかの良いものをつけています。」


「なるほどな。」


なら、銀貨10枚で引き取ってやるか。ボーナスの基準は、よくわからないからな。こう見えて、俺まだ中3だし。企業経営とかよくわからん。俺の感覚で行こう。


そうこうしていると…


「店長。失礼してもよろしいでしょうか?」


「システィーナか?」


「はい。」


「いいぞ。入れ。」


「失礼します。それでは、売り上げのご報告をしてもよろしいでしょうか?」  


「ああ。始めてくれ。」


システィーナは、女性棟一階の家具コーナーか。ここも高いんだよな。デジャブを感じる展開はやめてほしい。家具の仕入れ値は、1500万だ。とは言っても、見た目は、億万長者とか映画に出てくるCEOの自宅にあるようなものばかりだ。俺の自室にも同じようなものがあるが、アルベルト様は、それを見て驚いていた。つまり、公爵でも欲しがるようなもの。一体幾らになってしまうのだろう。


「問題があるのですが、先に報告を済ませたいと思います。売上額は、

白金貨で3枚です。」


でたよ…。仕入れ値の20倍。儲けが1億3500万。この世界の基準を見直す必要があるようだ。ってことは…問題とはあれか?


「システィーナ。問題とは、店舗規模の拡大の話か?」


「そうです…。店長も考えておられたのですか?」


「いや、ゴーセルからも同じ報告があったのでな。」


「そうでしたか…。それで、どうなさいますか?」


「他の階も同様な感じか?」


「おそらく…。」


「別に規模の拡大は構わない。ここを倉庫兼屋敷に変えちまえばいいからな。ただ、新たな店舗を構える費用がいま手元にない。」


「それなら、父上に伝えれば…。」


「だめだ。いつまでも、閣下に頼ってもいられん。」


「では、どのように?」


「費用が貯れば、広げていくつもりだ。その時には新兵招集しなければならん。お前たちは、一層真剣に教練に取り組むように。近いうちに教官となってそいつらを教えてやらねばならんのだからな。」


「それはいつ頃…」


「それは、お前たちの成長次第だ。新兵に教えられるだけの実力を得た者達のフロアから規模を拡大していく。」


「お任せください。早急に力をつけます。」


「剣術は、一朝一夕で身につくものではない。そうだなぁ…1年…そうだ!1年である程度の実力をつけてみろ。」


どうして、すぐに拡大しないのかって?お金がないんだよ。当分は、ここだけでいい。規模の拡大を望む声が大きいってことは、需要が高い印だ。なら、この国のここだけでしか買えないように、ブランド化していけばいい。規模拡大しても、最高品質のものは、ここに置く。そうすれば、上客はここに来る。それに俺は、宝石店もやりたい。リターンが大きいから。


なんてことを思索していると、バタバタと階下が慌ただしくなった。ダージルのやつが戻ってきたか?


「紅蓮将軍!持ってきました!」


「ちょっと、ダージル!なんでこんなところに鎧なって持ってきたの?」


「将軍が言ったんだよ。古いやつを買い取ってくれるって。」


「そうなんですか?」


「ああ。俺の取引先のやつの趣味でな。本人は戦闘力は皆無なんだが。武器やらなんやらを飾るのが好きなんだそうだ。」


「そうなんですか…。」


「はい!将軍少し匂いますけど…。」


「ああ。ありがとよ。ほれ、約束の金だ。」


「工エエェェ(´д`)ェェエエ工!!これ…銀貨40枚入ってますよ!新品が2つ買えますよ!」


「それでもっといいやつ買え。」


「…いいんですか。本当に?」


「要らないなら返せ。」


「いえいえいえ。ありがたく頂きます。」


「いずれ、教練の時に魔獣とか討伐行くときにこんな安物だと死ぬぞ。」


「工エエェェ(´д`)ェェエエ工!!!魔物討伐ですか!?」


「店長!本気ですか?」


「…!!」


「ああ。当分先のことだけどな。お前らの卒業試験にでもするつもりた。」


「そうなると…私達も装備を一新する必要があるかもしれないわね。」


「お前らが望むなら、業物の刀を手配してやるぞ。店売りよりも安値でな。」


「店長の得物は幾ら位するのですか?」


「あぁ…。金貨20枚ぐらいかな。」


「金貨20枚!!そんなに…。」


「因みにお前らの年収よりは高いぞ。」


「そういや、僕らって金もらえるんですか?」


「ああ、月毎な。」


「大体でいいんで、幾らぐらいになりそうなんですか?」


「お前らが稼げたらな…。」


「いくらなんです…?予想でいいんで、教えてくださいよ…。」


「まぁ、ダージル含める38名の騎士は、銀貨100枚。団長の2人は、金貨2枚(銀貨200枚)にするつもりだが?」


「では…俺らは、1年で金貨12枚もらえるんですか?」


「ああ。お前らの稼ぎ次第なら追加報酬も考えよう。」


「追加報酬?」


「この国にはないのか?」


「なんですかそれ?」


「一年を通して、実績優秀なものには、追加で結構な報酬を支払う。それによっては、昇格もあり得る。団長達も今は20人弱の隊長だが、実績によっては、部下を増やしていく。王国との戦争が本格的に始まれば、お前達は最前線でそれぞれが部隊を率いることになる。彼らが求めるのは、優秀な指揮官だ。指揮官は命令だけしてればいいというものでもない。実力も伴っているからこそ、部下に慕われる優秀な指揮官である。因みに本当の実力者は、精鋭部隊として俺専属にする。近衛兵みたいなもんだ。」


「なるほど…。俺、頑張ります!」 


「ああ。そうしてくれ。じゃあ、これ貰っとくな。」


俺は、何気なくアイテムボックスへとダージルの鎧を投げ込んだ。すぐ、彼らの方へ振り向くとそこには、目を丸くして固まっている奴らが3人。


「ん?どうした?」


「店長…。魔法使えたんですか…。」


「収納魔法…。それも、鎧を入れてもびくともしない…」


「やっぱ、将軍スゲー!」


「そんなに凄いことか?魔法が使えるやつぐらいいるだろ?」


「騎士の中には殆どいません。魔法が使えるやつは魔法学院に進み、宮廷魔法師を目指しますので…。」


そうか…。女神様がこの世界では、魔法が使えるって言ってたが、使えるやつは一握りってところか…。


「まぁな。そうでもなけりゃ、陛下から精鋭部隊の教練なんてそもそも頼まれん。」


彼ら(一人は除く)は、疑念を残しながらも納得したようだった。そうこうしていると…


「店長〜。失礼してもいいです〜?」


「店長…。失礼したい。」


「ああ。入ってくれ。」


今度入ってきたのは、女性棟2,3階の代表者のエミールとガラシャだ。2人とも子爵家の次女で嫁ぐのが嫌で、騎士になったそうだ。エミールは、癒やし声を持つお姉さんタイプ。ガラシャは、物静かだが剣の実力は、この中でも群を抜いているらしい。


「報告に来た…(わ〜)。」


「ああ。頼むよ。規模拡大の件についての報告をするつもりなら、十分だ。もう聞き飽きた。」


「え…。分かった。」


「まずは、私からね〜。化粧品よ〜。売上は、売値が随分と安く感じたから勝手に上げさせてもらいました。総額で、金貨50枚です!」


無難だな…。仕入れ値が1000万で、売値が5000万か…。4000万の儲けか…。こいつの販売センスは普通ランク。団長たちには叶わないか…。


「次は、わたし…。服。私も値段は上げた。それと流行に合わせて少し趣向を変えてみた。手を加えたこと謝罪する」


「別に構わん。私には、女性の好みはわからんのでな。」


「売上はちゃんと確保した。全部で金貨300枚。」


仕入れ値が、1500万で売値が3億だから、儲けは2億8500万か…。

ガラシャは、ヤバいな…。この子は、そばにおいておきたい。何か、プレゼントしてやるか。


「そんなに…。」


「よくやった!ガラシャ。何かほしいものはないか?」


「店長と同じ武器がほしい…」


「…。少し待っていろ…。」


俺は、アイテムボックスの中にあるこの世界に来た当初から持ってる、無銘刀を100本分コピーした。


「ガラシャ…。大事にしろよ。」


「うん。ありがとう。」


「将軍ずるいっすよ。」


「私達も…というか、将軍ってなんです?」


「ダジールが、勝手に呼んでるだけだ。」


「そんなことよりも私達もほしいです〜。」


「他の奴らは、金を払えば売ってやる。それに、これはお前たちがいつも使っている剣とは勝手が違う。」


「どういうことです?」


「ガラシャ…。それ抜いてみろ。」


「うん…。刃が片方しかない…」


「そうだ。私の使うこの武器は、片刃の剣だ。お前らの剣よりも軽いが、十分に使えるようになるには時間がかかる。ただし、使いこなせるようになれば、一騎当千の武者になれるだろう。」


「…ですか?」


「あ?」


「それ、幾らですか?」


「ほしいのか?システィーナ…。」


「私が目指す剣は、神速剣です。」


「神の如き速さで迸る剣技ということか?」


「そうです。そのためにレイピアを使っているのですが、レイピアは、速さは出ても威力が出ない。しかし、店長の使う武器は、あのイルシス騎士団長にすらも優ったものです。私が望むものです。」


「イルシス殿に勝てたのは、刀の力ではない。私の流派が適していたからだ。」


「店長の流派?」


「俺の流派は、速さを重視する。そのための筋力であり、体力であり、武器の重量でもある。俺の流派は、一対多数を得意とする剣術だ。本当なら最前線で活躍するべき流派だが、俺は別に戦場での名声なんていらん。」


「私も、イルシス様に勝てるようになれますか?」


「そんなこと、俺が知るか。」


「そ…そんな。」


「それは、お前の努力次第だ。俺が直接教えるのは、1年だ。1年後には新兵が入ってくる。お前がそれまでに俺の求める実力をつければ、近衛兵としてそばに残す。そうなったら、それからも教えてやる。できなければ、それまでだ。」


「わかりました。やってみせます。では、それを売ってください。自主的に振ってきます。」


「ゴーセル。新品の剣はいくらするんだ?」


「ピンキリですよ。安いものは銀貨1枚から。高いものは金貨10枚超えのまで。因みにさっきガラシャにあげたものは、いくらのものなんです?」


「わからん。」


「へ?」


「俺が打ったものだから、価格なんて決めてない。」


「店長が?」


「国いたときにな。」


「今は打たないんですか?」


「そんな暇がない。お前たちが独り立ちして、新兵達の教練もお前らで十分になれば考えるが、それは当分来ないだろう?」



「それはそうですが…。大体でいいんで、いくら位です?」


「まあ、金貨5,6枚の価値はあるだろうな。」


「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」


明確なことなんて言えないけど、実家にあったやつが名刀だった。うちには何故か名のある刀が多く貯蔵されていた。母方の祖父が刀匠だったこともあるのだろうが…。家族の自室にはそれぞれ名刀が飾られていた。

因みに俺は、"立割真守"だった。知っている人のほうが少ないだろう。仙台藩の初代藩主で独眼竜で知られる伊達政宗の重臣。片倉小十郎が小田原参陣を直訴したことで、伊達家の命運が決まった。そのことに対して、政宗は、忠誠心の厚い小十郎に向けてこの刀を送ったという。そんな名刀がどうして俺の部屋にあったのかは、わからない。父さんが濁した感じで教えてくれたときは、大橋家は、どこかの家の分家だったらしい。本家は、有名な戦国大名だったとか…。それには及ばないけど、この刀も中々のものだと感じていた。 


「金貨4枚なら持ってます…。」


「いいぞ。それで。」


「!?いいんですか?ありがとうございます。」


「ああ。そもそも、売る予定がなかったからな。買ってくれるなら大歓迎だ。ガラシャもさっさと体力試験突破しろよ。そうすれば、お前にあった剣術を教えてやる。」


「うん。今日中に合格してみせる。」


「それで?報告がまだなやつは…、男性棟2階の酒フロアか…。」


「あいつ等まさか…飲んでるんじゃ…。」


「もし酔ってたら、クビだ。」


「金を払っていてもですか?」


「当たり前だ。まだ、仕事中だ。仕事中の飲酒は厳禁だ。お前たちも覚えておけ。」


それから30分間、なんの音沙汰もなかった。


「ゴーセル、ダージルついてこい。場合によっては、ゴーセル。閣下に伝令に走ってくれるか?」


「わかりました。」


総資産


10億7770万円⇒15億5130万円


次回、誰かクビになるのだろうか。なるかもしれない。40人の名前なんて覚えられない。

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