11話〜開戦〜
なんか、目が覚めた。寝てから2時間と少しくらい経ったのかな。嫌な予感がして、身支度を整えた。まるで、親父に寝起きを襲われるときのようだ。そういえば、イールイのとこに、お酒取りに行かないと。
血統スキル発動!『闇市場』!
「おお〜!良いところに。グレン殿!酒と武器類の受け取りですか?」
「そうですけど、どうしたの?」
「米軍の奴らに粗悪な手榴弾を大量に押し付けられたんですよ。威力には今ひとつだが、銃のない世界なら十分では?」
「そうかもしれませんが、どのくらいあるんですか?」
「500個ですよ。M26とM61が250個ずつです。処理しとけって格安で預けられたんです。貰ってくれません?今回は金はいりません。軍から貰ってるんでね。そうそう、他のものと一緒に外にあるんで。」
「渡す気満々じゃないか。まぁ、いいけど。」
「どうも。ありがとさんです。」
外に出た僕は、酒、武器類と手榴弾を別々にしまった。家具を出したことでスッキリしていたが、また片頭痛がしだした。
「いや〜。助かりました。なにかほしいものあります?」
「なら、バレットM82を。」
「…マジで言ってます?」
「戦争になれば長距離狙撃は、最大の武器になるからね。」
「戦車とかなら…それは無理か。」
「石油っていう文化ないから。電気を国内に導入するにも結構な時間がかかるって予想してるし。まぁ、魔法もある世界だし、魔法石とかなんかあるかもな。在庫はどのくらいある?」
「3丁なら、倉庫にある。弾薬は、300発だけだが、十分だろう。だが、そもそも撃てるのか?」
「ああ。頼む。これでも知り合いの軍人に海外で撃たせてもらったとき、約800mの狙撃には成功したんだぜ?僕も商人だけだとつまらないんでね。名のある軍人にでもなってやろうかと思ってね。」
「商人の上で軍人もやるか…。少し…待っててくれ。取ってこよう。」
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「これがバレットだ。人に打つなよ。肉塊にしたいなら別に止めんが。」
「わかってる。」
「3丁で5万ドルだ。弾薬の分も入っている。」
「ありがとよ。じゃあな。」
「グレン!」
「む?」
「感想聞かせてくれよ?」
「お前、やっぱり撃たせる気満々じゃねぇか。じゃあな。」
俺はもとの世界に戻ると、3階に武器を並べた。これで、2階に酒を陳列すれば、店を始められる。流れが出来上がったら他のものも陳列していかないと…
扉の外に複数の足音が聞こえる…
俺は、腰の刀に手をかけた。外に誰かいる?こんな夜中に?俺は、扉に向けて殺気を向けた。入ってきた瞬間に斬り伏せてやる。右手が刀に触れる瞬間…
「グレン殿。そこにいらっしゃるようですな。殺気を引っ込めていただけるか?公爵様含め、騎士たちも腰を抜かしておる。」
外から聞こえた声は、イルシスさんのものだった。
「イルシスさんですか?」
「ああ。」
俺は、刀から手を離し、扉を開けた。そこには、腕組みをして佇みため息を吐くイルシスさんと、腰を抜かしている公爵家一行がいた。
「こんなに夜更けに何の用です?」
「逆に聞きたい。どうしてこんな夜更けに起きていたんだ?それも臨戦態勢で」
「なんか違和感を感じまして。」
「やはり…か。王城まで来ていただけるか?詳しくはそこで陛下から聞いてほしい。無論、私もアルベルト様も同行する。他の貴族たちも召集がかけられている。」
嫌な予感がして向こうに行ったが、これはバレット買ったのもあながち間違いじゃなかったのかもしれない。こんな時間に重臣を集めるということは、ついに始まるのか。
俺がこの世界に来てから最初の戦争が。大国である王国とこの国の総力を上げた戦いが。なら、ここにあるやつも一度しまったほうが良いかもしれない。使うかもしれん。いや、それよりも、もう一度向こうに行くほうが現実的か。血統スキル発動!『闇市場』。
「どうした?忘れ物か?」
「大国との戦争が始まる。先の手榴弾とバレットM82が活躍する舞台ができたってわけだ。」
「ほう。で、どのくらいの戦力差なんだ?」
「王国と公国の戦力差は、10倍以上だ。」
「それは…やばいな。」
「武器の追加を頼む。こうなっては、余裕をかましてるわけにはいかない。m60を用意してくれ。大至急だ」
「わかった。少し待ってろ。」
イールイが、倉庫へと向かっていった。最悪だ!たとえAk-47が揃っているといっても形勢が圧倒的に不利なことに違いはない。今更、兵の質は変えられない。ならば、数で押すしかない。それこそ、銃の出番だ。バレットで指揮官をぶっ飛ばして、M60、M2、手榴弾で殲滅するか…
「10丁在庫あるが、どうする?1丁につき弾薬10セット付で1万ドル。何丁にしとく?」
「何、選択肢あるの?全部持ってきているってことは、結局は全部買えってことじゃないの?」
「おう!俺のことわかってきたみたいじゃねぇか。そうだ、全部買うならスコープをサービスでつけてやる。」
「卑怯な野郎だな。」
「こんくらいじゃねぇとこんな商売できねぇよ。あんたも今後商売するならそれくらいは当たり前のように出来るようになれよ?」
「へいへい。まあ、購入するよ。ほら、10万ドル。こんな簡単に10万ドルをポンポン出してる自分が恐ろしいわ。」
「まぁ、商人らしくなってきたってことだ。俺だって、100万、1000万の取引だってやってんだ。」
「俺ね、まだ16なのよ。」
「それは同情する。ほら、商品だ。感想聞かせてくれよ。いや、これも持ってけ。」
「これ、録画用のカメラか?」
「そう。知り合いの映画監督に頼まれたのよ。中世の映像がほしいって。」
「銃使った戦争だからそうはならないと思うけど。」
「町並みとか綺麗なやつをお願い。礼はするからさ。」
「まぁ、いいけど。」
「ありがとよ〜。じゃあ、頑張ってな。」
「ああ。」
僕は、彼に別れを告げると、もとの世界へ戻った。店の前には既に馬車が止められている。しかし、どう見てもいつもより装備がしっかりしている。それに腰にも最近なら逆刃刀を帯びているのに、今日は剣だ。それから、僕と公爵を乗せた馬車は、王城へと走り出した。
「すまないな。こんな夜更けに。ただ、君を呼ばなければならない事態になっているのだ。」
「ついに、王国が攻めてきたんですか?」
「!!」
「明らかに騎士たちの雰囲気がいつもと違って緊張感が拭いきれていないですし。閣下も平時の装束ではありません。それに焦りと冷や汗が隠しきれていませんよ。そうなると考えられるのは開戦であると考えたまでです。」
「君は、本当…。先程の殺気もそうだったが。君の仰るその通り、王国が進軍中であるとの情報が入った。既に騎士団やアークを装備した新装軍も所定の位置に到着し、準備ができつつある。それでも、心配は拭えない。」
「そこまでに戦力の差があるんですか?」
「ああ。奴らは、平民も兵として従軍させているようだ。こちらの兵力は、5万弱。にも関わらず、奴らの兵力は100万にも及ぶ。」
おっと…。やばいな。使わないつもりだったが、機関銃の使用はやむを得んか。それならば、陛下に直々に伝えたほうが良いようだ。
僕たちを乗せた馬車は、王城へと到着した。そこには、王城は近衛騎士団が防御を固めていた。と言っても、数は、2000人程度。残りは、城壁と城門付近に固めている感じか?
「陛下!アルベルトであります!グレン殿を連れてまいりましたぞ。」
僕たちが騎士たちに案内されてついた先には、これも見慣れない装束に見を包んだ。貴族たちが揃っていた。顔は殆ど知っている。奥の赤髪の青年だけ知らない。
「よく来た。グレン。夜中に呼んですまない。寝ていただろうに。」
「いえ、陛下。グレン殿は、起きていましたよ。それと、彼は王国との戦争に関して感づいていたようです。」
「陛下…。そちらの方はどなたですか?」
「む?ああ、この者のことか。わしの息子だ。わが国の王太子のカーラーン-フォン-マーリンという。一応、連れてきたのだ。ほれ、挨拶せんか。」
「カーラーンだ。君、中々やるみたいだね。なのに君は、戦争に参加しないのか?」
なんだこの人?上から目線気に入らねぇな。
「僕は、商人です。物を売るのが、私の仕事。戦闘は本職ではありません。」
「だが、イルシスにもアルファードにも勝ったんだろう?それもたったの一撃で。」
「自衛のために腕を磨いていただけのこと。お二人に勝ったとしても、私が商人であることには変わりません。」
「何が言いたい…?」
「別に。私には皆様のようにこの国の為に戦う義務がないだけのこと。」
「何…義務といったか。この状況でよくそんなことが言えるな。」
王太子は、こちらを振り向くと鞘から抜いていない剣で俺に殴りかかってきた。そっちがその気なら俺だって…。俺が刀に手をかけるのと陛下の声はほぼ同時だった。
「待て!」
止めたのは、陛下だった。
「なんですか。陛下…いや、父上。こんな少年の言葉に耳を貸すおつもりですか?」
「私は、商人である彼を呼んだのだ。彼に戦わせるわけがなかろう。それは我らの仕事だ。彼には頼みがあって呼んだのだ」
その場にいた人間の視線が僕へと注がれた。
「頼みとはなんです?」
「この状況で何かを起死回生の策はないか?なにか儂らの知らぬ新兵器などは」
「まぁ…ありますが。」
「聞かせてくれ。君の策を。」
「まず、爆弾を敵の先陣に対して投げ込みます。」
「爆弾?それはなんだ。」
「炎と衝撃によって敵を死傷させる武器の一つです。。」
「なるほど。」
「これによる攻撃と新装軍による一斉射撃。予備の弾薬が20万強あります。これによって、敵に打撃を与えることができます。私の予想ならそこで敵も逃げ出すはずですが、もしそれでもなお攻めてくるようなら、新たな武器によって前方の敵を壊滅に追い込みます。」
「新たな武器とは?」
「こちらで、ブローニングといいます。陛下がお持ちのイーグルと同程度の威力と考えていただければ。それを連続で雨あられのごとく敵に撃ち放ちます。これが私の手元に10丁あります。これの同時射撃。それと僕の私物による射撃によってこちらへ向かってくる敵を殲滅します。」
あれ…?なんか皆唖然としてる。
「私は、こいつの案に乗りますよ。」
王太子がいった。さっきまで、面倒臭いやつだと思ってたけど、ただ馬鹿なだけ?そうなら、僕も嫌いじゃない。友達としては無理だけど。暑苦しいから。
「王太子の言うとおりだ。彼の案で行こう。部隊の再編成を急げ。グレン。武器、弾薬の提供を。アルベルト!金を払ってやれ。」
「畏まりました!グレン殿。隣の部屋に行こうか…。」
僕とアルベルト公爵は部屋をでて、廊下をまっすぐ進み、別の部屋に入った。
「ここは、私の部屋だ。さてと、お金の話をしようか。」
俺はその場で手榴弾を1つ見せた。
「はい。爆弾についてですが、これは、手で投げるものであり、手榴弾と呼ばれております。こちらのピンを引き抜いた後、敵に投げつけることで爆発します。なるべく遠くに投げてください。これは、一個銀貨1枚。500個で金貨5枚。」
「金貨5枚か。後でまとめて渡そう。」
「次にアークの弾薬になります。こちらは8000セット(25万発)で、金貨80枚。」
「24万発か。頼もしい数だな。それで金貨85枚か。」
「次にブローニングです。こちらは、重いので、複数人で動かしてください。反動も大きいので、一人では扱わないようにしてください。1丁につき弾倉10セット。1セットに
付き300発。それが、10セット。こちらは、高額になりますよ。金貨100枚になります。」
俺はそう言うと、全ての物をその場に出した。
「なるほど。分かった。ここにあるものは、こちらで運ばせる。それと、収納スキル使えたのだな。」
「これがないと商人として厳しいですからね。」
「それはそうだな。総額で、金貨185枚か。
この状況でこれほどの武器を提供してくれたのだ。気持ちも載せて金貨300枚渡しておこう。」
「ありがとうございます。」
「これから君はどうする?」
「城で一番高いとこはどこですか?」
「高いところ?この部屋を出てすぐ左の階段を登っていけば、テラスに出る。そこがおそらく一番高いだろう。」
「では、私はそこでこの戦争に参加するとしましょう。」
「どうやって?」
「敵の司令官、もしくは階級の高い者たちを狙撃します。」
「そんなことができるのか?」
「戦闘が始まってからのお楽しみにしといてください。」
総資産1億2200万円⇒4億400万円
あれれ、おかしいぞ…。減る前より増えてる気がする。
次回、戦争が始まるよ。民兵だって容赦しないよ。敵は殺さないと尖兵を作っちゃうからね。




