バック・トゥーザ・バァチャン
昔々あるところに、お爺さんとムキムキマッチョのお婆さんがいました。
二人は平和に暮らしていました。
あるとき、お婆さんが言いました。
「前方倒立回転をしたいので、補助をお願いします」
おじいさんは、蔵の荷物をどかして作った自作のトレーニングルームに、
マットをしきスタンバイしました。
「いくぞ!ジジィ!!ヤァ!!!」
お婆さんの体が宙に弧を描いて高く舞い上がり、
ナタのような鋭いカカトがおじいさんの脳天をカチ割りました。
「ぐはぁっっ!!!…貴様、はじめからこれを狙って……ぐふっ…」
「ふふ…アッハッハ…うははははははは…」
笑いながらおばあさんは蔵を出て行きました。
………。
………………。
それから十年後。
「お爺さん、今帰ったのじゃ」
「おお!お婆さんじゃないか!今までどこに行っとった?」
「実は、お爺さんを実験台に編み出した必殺技、『カカト落とし♡サンシャイン』を試したくて、
全国の道場をめぐり、武者修行の旅に出ておったんじゃ」
「なんと!?」
「はい、これお土産」
「…おばあさんや…これは…」
おばあさんの手に握られていたのは、クリアアサヒの350mlだった。
「こ、これは!?いつも缶のデザインに「New」の文字がついていて、いつ消えんなや!と思っておった、クリアアサヒじゃないか!!」
「試供品で、主婦の店で貰ったものをとっておいたのじゃ。飲むがよい」
「マジ、らっきー」
「いえーーーーーーーーい!」
「ふうーーーーーー!ちょーーいかす!」
こうして宴は、350mlのクリアアサヒ1本を二人でチビチビと飲み、三日三晩夜まで続いたとさ。
めでたし、めでたし。