表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『インパルス』~宝くじで900億円当たったから、理想の国を作ることにした~  作者: 時雲仁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/383

61話 今井の依頼

今井の二日目(後編③)

 インスタントラーメンを食べ終わった僕は、正巳君と電話をしていた。


「そうなんだ、男達に囲まれてね。でも、ザイ君が片っ端から倒して行ったんだ!」


 昨日岡本部長に襲われた話は、結局できなかった。


 少し、無理やりでは有るが、ザイの活躍をややテンション高く話す事で、誤魔化していた。


「今井さんが無事でよかったです。それにしても、その”ザイ”と言う護衛強いんですね」


 正巳君が、考え込むようにしている。


「そうなんだ。もう、100人いても大丈夫!って位に強かったよ」

「なるほど?」


 正巳君が更に考え込んでしまった。


 そんな正巳君を見ていると、不意に横から少女が現れた。


「君は……」


 トラックに乗っている時に話をした少女だった。


 最初はぎこちなかったが、共通して盛り上がる話題が有った為、直ぐに打ち解けたのだ。その話題と言うのは、目の前で考え込んでいる男が少なからず関係しているいるので、ここでは話せないが……。


「ミンだったね」

「はい、その……直接お礼をしたかったんですが……」


 ミンが、申し訳なさそうにしている。


「なに、良いんだよ。それに、帰って来るんだろう?」

「はい、皆を故郷に送り届けたら。それに……」


 ミンは、言葉を途中で切ると少し恥ずかしそうにモジモジし始める。


「大丈夫。あいつは、言葉の禄に通じないような国で、コマせるほど器用じゃないさ」


 そう言って笑いかけると、ミンも顔を綻ばせる。


「そうですね。その、お姉さんも苦労しそうですね……」


 ミンがそう言いながら、チラッと視線を動かす。


 その先にいるのは勿論――


「ははは……そうだね、お互い頑張らないとだね」

「はい……」


 二人で空笑いをしていると、ミンの少し後ろで座っていた正巳が、不思議そうな顔で口を開く。


「何か楽しい事でも?」


「いや、何でもないさ。ただ、未来の事を話してたんだ」


 そう言いながら一つ苦笑して、ミンにウィンクする。


 聡いミンの事だ、僕の言わんとしている事が通じたのだろう。


 軽くお辞儀すると画面から外れた。


 恐らくこの後、テンと二人で夜を過ごす事だろう。


「……必ず無事に帰れますよ、全員ね」


 そう言って、正巳君が優しい表情を浮かべている。


 その表情をみて、不覚にも胸がキュッとなる。


 これが、(ハート)を掴まれる、と言う事なのだろう。


「……う、うん」


 顔が赤らんで来るのを感じたので、話題を変えた。


「さて、僕は明日の夕方こっちを出るから、そっちに着くのは明後日の朝方になりそうなんだ」


 明日は、日中に外に出ないでくれと、ザイから暗に言われている。


 恐らく、”残党狩り”に関係しているのだろうが、任せて問題ないだろう。


 ともかく、僕は明日出発して、明後日の朝着く。

 そして、頼んでいた機材も明日か明後日に届く。


 これで、ようやくやりたい事に着手できる。


 届いた機材で、準備を整えながら、必要な技術はマムが吸収してくる。

 それでようやく目的が叶う。


 明後日帰るのが楽しみだ。

 そう思っていると、正巳君が答えた。


「明後日の朝ですね、分かりました。実はその事で話がありまして」


 そう言うと、正巳君が表情を引き締める。


 余り良い予感はしないが、続きを促した。


「なんだい?」

「はい、マムに調べて貰った黒い人脈関連で……」


 ◇


 正巳君から聞いた話は、想像以上に大きな話だった。


 日本各地に孤児を奴隷として売る施設が有る。

 明日その施設を襲撃し、子供達を奪還する。


 事実関係自体は、僕の両親が週刊誌で報じようとした内容が証明された形だ。


 今回問題なのは、子供達を奪還しに行くという事。

 そして、その奪還作戦を正巳君が一人でやろうとしている事だ。


「無謀だと思うけど、正巳君は止めないんだろう?」

「はい、見逃す事は出来ないので……」


 それだったら……


「分かった!でも、必ず戻って来てね!」


 送り出すしか出来ない。


「はい、必ず生きて戻ってきます」

「うん、絶対だよ」


 生きて戻って来る。これは決して大げさな言葉ではない。


 事実、僕の両親以外でも、闇を暴こうとしたジャーナリストが何人も行方不明になっている。


 年間の行方不明者数は現時点で8万人強。


 しかも、これは捜索願が出された数においてだ。


 知られていない分を入れると、一年間にどれ位の人が消えているか分からない。


 その中の一人に、僕らが入ったとしても、何ら可笑しくは無いのだ。


 だからこそ……”必ず戻って来てね”と言ったのだ。


 ◇


 その後は、正巳君が子供達と、レストランで食事した話を聞いた。


 マムが、きっちりと映像で残しておいてくれたので、一緒に食べられはしなかったが、同じ場所にいるかのような、疑似体験が出来た。


「さて、そろそろ寝ないといけないんじゃ、ないかい?」


 時刻を見ると、もう直ぐで0時を迎える。


「……そうですね、あ、そう言えばニュースでやってましたけど、シンガポール(そっち)で、随分と羽振りの良いイベントが発表されたんですね……賞金100億円のハックコンテストとか?今井さんも参加してみたらどうですか?」


 正巳君がいつもと同じ表情で、そう言ってくる。


「そ、そそそうだねぇ~気が向いたら、見てみようかな!」

「……?」


 正巳君が、顎に手を持って行く動作をする……正巳君が考える時に取る、癖の様なものだ。


「さ、さて~そろそろ寝るかな! 明日は、早いしね! それじゃあ、おやすみ!」


「あ、お休みなさい……」


 正巳の、呆気に取られたような顔を最後に、映像が切れる。


「別に悪い事をしたんじゃ無いんだけどね。流石に賞金100億円は、やりすぎたかなぁ……まあ、考えても仕方ないし、やる事をやっておこうかな!」


 一人、呟いていたが、直ぐに気を取り直して、呼び鈴を鳴らした。


 正巳君が、少しでも安全に帰って来る為に出来る事は全てやるのだ。


 そう心に決めて、改めてホテルに着いた時の事を思い出していた。


「ザイ君も強かったんだし、他のホテルマン(ひとたち)も強いはず……」


 そう言いながら、依頼内容をまとめるのだった。


 ①.正巳君が実施する救出作戦(奪還)を最大限補助する事

 ②.正巳君が生きて帰って来れるように護衛する事

 ③.正巳君が明後日には帰ってくる事


 ①と②はともかく、③は難しいかも知れない。


 しかし、なるべく早く正巳君と合いたい。頼んでみるのは只だ(依頼料はかかるけど)それで、無理だと言われたら、修正すればよい。


 まとめた内容に満足した今井は、駆け付けたザイに、依頼を出したのだった。


 ◇


 無事に依頼が受理された。


 依頼を聞いた時にザイが、喜色を浮かべた気がした。


 ただ、一瞬の事だったので気のせいだったかも知れない。


 一先ず、”依頼が受理された”その安堵からか、布団に倒れこむようにして眠りに着いた。


明日も投稿予定です。

よろしくお願いしますm(_ _)/

――――――――――――――――

ブクマ、評価、感想等頂けると、

涙が流れるほど嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ