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『インパルス』~宝くじで900億円当たったから、理想の国を作ることにした~  作者: 時雲仁


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57話 黒い人脈

正巳の二日目(後編)


サブタイトルのもう一つの候補は、

『夜景の見えるレストラン』でした。

 昼食を終えた後、マムから報告を受ける為に一人部屋に戻っていた。


「それで、何が分かった?」

「はい、パパ。人の繋がりと、その力関係、資金源と資金のプール先が分かりました」


 想像していた以上の成果だ。


「流石だな、話を聞こうか」


「はいパパ! 先ず"NPO法人にちじょう"に関してです。結果から言うと、鈴屋引いては岡本の資金洗浄に使われている団体でした。それに、鈴屋に関して言えば、いわゆる"経済ヤクザ"で、その金脈は、裏社会のみでなく政財界へと通じています」


 ……鈴屋さん、真っ黒じゃないですか。


「それと、チャリティイベントでは、収益を少なく報告し、金銭の分配をしていたようです。これには、他にも幾つかの団体が関わっていました」


 チャリティイベントでの不正か……。


「また、その関わっていた団体を調べたところ幾つかの孤児院がありました」

「おい、まさか――」


「はい、恐らくパパの想像している通りです」

「聞こう」


「幾つかの孤児院は、孤児の販売や提供をしています」

「近いのか?」


 距離の話だが……。


「次の"出荷"まであと2週間ほどです」

「……場所は何処だ?」


 出荷(・・)ね。


「場所は日本全国に点在していますが、一番大きな拠点は関東園内にあります」


 そんなに存在するのか。


「そうか分かった」

「パパ?」


 俺がやることは決まっている。


「少し用事が出来たな……」

「パパ、マムは何をすれば良いですか?」


「そうだな……。助け出す際のサポートと、情報網の監視及び、必要に応じての妨害を頼む」


 これは、マム以外には不可能だろう。


「はいパパ!」


 マムの返事を聞いた俺は、一つ頷いて部屋を出た。



 ◇◆



 部屋を出た俺は、ホテルのカウンターに来ていた。


「やあ、ちょっと良いかな?」


 カウンターにはホテルマンの女性が居る。


 もう何度も話をしているので、慣れて来た。


「はい、何なりと」


 女性の返事を聞いてから、口を開く。


「それじゃあ、明日の昼頃……今と同じくらいの時間までに、車……なるべく人が沢山入る車が良いけど、30人くらいが乗れるのが理想かな。それが、2台いや、3台」


「承知しました」


 ……何も聞かないんだな。


「それと、運転手も3人頼みたい」

「承知しました。他には何かご要望はございますか?」


 女性が、普段と変わらぬ微笑みを向けて来る。


 しかし、流石に『ある孤児院の子供達が売られて行きそうだから、奪ってくるのを手伝え』なんて、頼むわけには行かないだろう。だからこそ――


「一週間くらい"行っては帰って"を繰り返す事になると思う。その際に人も増えるから部屋を沢山、20室くらい貸して欲しい」


 そう言うと、女性は一瞬考える姿勢を取った。


 ……初めて見る反応だ。


 流石に怪しすぎるかな?と思っていたが、予想に反して、返って来た言葉は、いつも通りだった。


「承知しました。良き様に(・・・・)準備いたします」


「ああ、頼んだ。それと今日の夜なんだが……」


 若干引っ掛かりを感じたが、もう一つの依頼をして部屋へと戻った。



 ◇◆



 部屋に戻ると、サナが飛びついて来た。


「おにいちゃ! そとに行くときは、さなもいっしょなの!」


 何か美味しいものを食べに行ったと思ったのかな?そう思って、サナの顔を見つめたら、サナが目じりに涙を蓄えていた。


「悪かった。次からはサナも連れて行くよ」


「ほんとに?」

「ああ、ほんとに」


「いつでも?」

「ああ、いつでも」


「どこでも?」

「ああ、そうだな」


「おいてかない?」

「ああ、もちろん」


 諭すように、深くは考えず(・・・・・・)に答えた。


 ……後々、困った事になるとも知らず。



 ◇◆



 その後、サナの相手をしていら、他の子供達も入って来て、結局みんなで遊んだ。


 なにで、って?


 このホテルでは、複数人で遊べるおもちゃを買う事が出来るのだ。


 一時間くらいは、人生を双六に模したボードゲームをした。その次は、海賊の入った樽に剣を順番に刺して行き、剣を刺して、飛び出た人が負けのゲームを。その次は……。


 そんな風にしている内に、すっかり夜になっていた。


「さて皆……明日の朝、ここに居る15人を空港へと連れて行く事になる。だから、今日の夕食は最後に皆で食べる夕食だ」


 俺が言った言葉を、ミンが訳してくれる。


「それで、だ。今日は、夕食を特別な場所で食べる」


 俺がそう言うと、サナが飛びついて来る。


「とくべつなの~?」


 しかし、大半の子供は、意味が分からずに”?”を浮かべている。


「ミン?」

「あ、はい!」


 我に返ったミンが、子供達に説明をしている。


「……と言う事だ、どうかな」


 一瞬の間があって、子供達がわぁ!っとはしゃぎ始めた。


 はじめは体調の悪そうな子供もいたが、大分回復しているみたいだ。これなら、故郷に戻っても大丈夫だろう。それに、マムには最低限の食事が取れるように、根回しをして貰っている。


「さて、”ドレスコード”が有るから、皆で着替えに行くぞ!」


「どれすこーどなの?」

「そんなに良いレストランに……」

「よいのデスか?」


 サナ、ミン、テンが其々反応を返す。


「良いんだよ。ほら、さあ行こうか!」


 意味が分かっていない子供達も、俺が『オー!』っと、手を挙げると、まねして『お~!』と言って、着いて来た。



 ◇◆



 その後、予め(・・)頼んでいたスーツやドレスに着替えた正巳達は、最上階のレストランへと来ていた。最上階のレストランは、一面ガラス張りとなっている。


 そして、ここは海が近いのと、工業地帯が近いのもあって、夜景がとても綺麗に見える。


「お兄さん、ありがとうございます。皆での思い出になります……」


 テンと手を繋いでいるミンが、静かに言う。


 実は、中に入る前に『ここは、利用する際に、手を繋いではいるのが決まりなんだ』と言っておいた。当然そんな決まりなど無いが。


「良いんだ。それに、ほら、皆の顔を見ると……満足だろ?」


 そう言って、ガラス張りになった窓に、張り付いている子供達を見回した。


「はい」


 ミンも気に入ったみたいだ。


 しばらく、最上階からの夜景を楽しんでいたが、サナが手を引く。


「おにいちゃ、おなかぐ~ってしてるの」


 ……そうだよな。


「それじゃあ、座ろうか。今日は皆が好きな物しか出てこないぞ」


 予め頼んでおいた中に、『子供達がより沢山食べていたもの』をレストランで出して欲しい。と、お願いしていた。


「かにのサラダなの!」

「ああ、皆に好評だったからな」


「お兄さん、ハンバーグ美味しいです!」

「ああ、そうだな」


「コレ、マイニチアキナイと」

「鳥の丸焼きだな」


「おにいちゃ、”はんばーがー”?」

「ふふっ、最後に出て来るさ」


 こんな感じに最後の夕食の時間は過ぎて行った。ただ、この場所に今井さんが居ないのが、残念でならないが、落ち着いたら一緒に遊びに行けば良いだろう。



 ◇◆



 一通りの食べ終わった後、部屋に戻って来ると、子供達はおもちゃで遊び始めた。


 中でも、海賊の樽に剣を刺して行くゲームが人気らしかった。


 あの、いつ飛び出すか分からないハラハラドキドキが、たまらないのだろう。


 向こうに行く時に、プレゼントしよう。


 そんな風に思って、寝室へと戻った。


 少しして、俺が居ない事に気が付いたサナが、部屋に入って来た。


「あのね、きょうはたのしかったなの!」

「そっか、何が一番楽しかった?」


「えっとね、キラキラしてるのと……はんばーぐ!」

「ああ美味しかったな」


 恐らくサナが言っているのはハンバーガーなのだろうが、どちらも大して変わらないだろう。何方も同じ"お肉"だ。


 その後、サナが話している内に、スヤスヤと寝息を立て始めたので、ベッドから距離を取って、マムに話しかけた。


「マム?」

「はい、パパ! ……別に羨んではいません……直にマムだって」


「そうだな。それで、今井さんは居るかな?」

「マスターは今ホテルに帰る途中ですが、今は少し危険な――いえ、戦闘力の差を考えると、ミジンコが跳ねている位なものですが。もう少ししたら”電話”出来るかと思います」


 何やら危ない目に合っているらしいが、マムの話す内容を考えるに、問題なさそうだ。


「それじゃあ待ってるか」

「はいパパ! それでですねマムは思ったのです。パパには――」


 その後、今井さんから連絡が来るまで、マムの”計画”を聞く事になった。


正巳は明日、孤児院から子供達を奪還する訳ですが……


一先ず次話は、今井視点となります。


出来る限り毎日投稿をして行きますので、よろしくお願いします。

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