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『インパルス』~宝くじで900億円当たったから、理想の国を作ることにした~  作者: 時雲仁


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298話 プール開き

「それで結局、今井さんはまだ寝たきりなのか?」


 正巳の問いかけに、隣を歩いていたミューが頷いて答える。


「もう少しで歩けるようになるとの話ですが、全快するまではまだ掛かるみたいです」


 あれから一週間経ったが、どうやら未だに今井さんの筋肉痛(・・・)は治っていないらしかった。本人から「細胞の自己修復過程をモニタリングする」と聞いてはいたが、どうやら長引いているらしい。普通の筋肉痛であれば、長くても数日で治るものだが……。


「酷いのか?」


 正巳の問いに苦笑したマムが言った。


「マスターの場合重度(・・)の筋肉痛でして。どちらかというと"怪我"と言った方が、より正しいかと。部位によっては断裂していましたし……」


 なるほど、恐らく負荷が掛かっていた部分に、より深刻なダメージが現れたのだろう。


「治療薬は勧めなかったのか?」


 即効性のある薬品を使えば、その傷も治った筈だ。


 正巳の疑問に苦笑いをしたマムが、同意するように頷いた後で答えた。


「それが、マスター曰く"人体が元から持つ治癒過程を観察する事に意味がある"そうでして。全快したらまた同じ状態まで体を酷使させ、今度は"治療薬"で治す予定みたいです」


 きっと、条件(観察のベースとなる体)を合わせる為なのだろう。自分の身体を観察材料にするとは流石だが、あまり無茶な事はしないで欲しい。


 ため息を吐くと、後ろで楽しそうに話すサナとミューに顔を向けた。


「二人はもう練習は良いのか?」


 すると、それに頷いてサナが答える。


「大丈夫なの、いつでも"勝負"できるなの!」


 続けてミューも言う。


「はい、お兄ちゃんのお陰です!」


 どうやら、この二、三日で更に自信を付けたらしい。そんな二人に「いや、勝負はしないし俺のおかげでもないだろう」と答えると、見えて来たゲートに目を向けながら呟いた。


「さて、様子だけ確認しておくか……」


 今日はプール開きの日だ。


 指導担当のメンバーに対してこの一週間で教えて来たが、その半分ほどが泳げるようになっていた。残りの半分は、どちらかと言えばまだ教わる側(・・・・)だったが、それで良いのだ。


 基本的な事――準備運動から始まり息継ぎの仕方――さえ出来てしまえば、後は個人の習熟度の話になる。基本部分さえ身に付けば一先ず、今回の目的は達成と言って良かった。



 ◇◆



 その後、プールに集まった人々とその様子を確認して回った。


 どうやら、深くなっているコースは、その水面から二メートル弱の辺りに開閉式のゲートを閉じる事で"足場"を作っているらしかった。お陰で、比較的大人数が一度に利用できている。


 人々の中に綾香もいたが、どうやら子供達の担当をしているらしい。


 綾香に関して言えば、のみ込みが早くあっという間に泳げるようになった。きっと、体の使い方が上手いからだろう。力をそれほど使わず、長く泳ぐ方法を見つけたみたいだった。


 こちらに気付いて手を振って来るので、軽く返しておいた。


 因みに、綾香と一緒に教えたミューは、初めこそ水中での体の使い方に苦労した様子だった。しかし、それも繰り返す事で克服しサナとまでは行かないものの、普通に泳げるようになっていた。


 それで言えば、サナはチート(いかさま)級だろう。最初こそ途中の息継ぎについて聞かれたが、その後は勝手に泳いでいた記憶しかない。


 時々目を向けると、深く潜ってからのジャンプをしたり、体を半身にしたまま泳いでみたりしていたが……きっと、生まれつきの才能があったのだろう。


 見て回っている途中でミューにヘルプ依頼が来た。


 どうやら、ミューには教える才能もあるらしい。本人は謙遜していたが、きっとよく見てその人それぞれに合ったアドバイスをしているのだろう。


 ご一緒出来なくてすみませんと謝るミューに、大丈夫だと手を振ると更衣室へと向かうその後ろ姿を見送った。サナに一緒に行かなくて良いのかと聞くと、どうやらこの一週間である程度満足していたらしい。元気に「お兄ちゃんに付いて行くなの!」と返って来た。


 恐らく、付いて来れば何か面白い事があるだろうとでも、考えているのだろう。その頭を撫でながら、ふと目に入って来た光景を横目に言った。


「ほら、サナは泳ぐのが上手だから、そこの人に教えてあげたら良いんじゃないか?」


 それに首を傾げたサナは、特に悩む様子もなく答えた。


「何で泳げないのか分からないなの」


 それに反応した影が、寄って来ると言う。


「おい正巳、ガキんちょの躾はしっかりしておかないと――」


 言葉の途中だったが、後ろから肩を引かれそれに振り返っている。どうやら、先輩の練習相手はデウがしていたらしい。ため息を吐いたデウが言った。


「カズ、真面目にやらないと子供達に馬鹿にされるぞ?」


 それにぐぬぬと口を歪ませた先輩は、結局「今に見てろ」と捨て台詞を吐いて戻って行った。そう、結局一番上達しなかったのは上原先輩だったのだ。


 その後、逆流コースで訓練するアキラやサクヤ達を見つけた。


 一部、何かジャケットのような物を着ているメンバーもいたが、聞いてみると"重し"らしい。人によっては素で五キログラムあるジャケットに、十キロとかニ十キロとか追加しているらしかった。


 水泳は全身運動なので体力を使う。確かに効率的な基礎訓練にもなるのだろう。後ほど自分の分のジャケットも用意して貰おう、――そう考えながらそこを後にした。


少し短いですが、書けたので投稿します!

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