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レベルという概念がある この世界で  作者: 魚の目症候群
3/7

ギルド白銀亭

女の子のスカートの中には夢が詰まっている。昔誰かからそんな事を聞いた。



ーーバチバチィッ‼︎



華奢な身体でミトラはフワリと舞う。まるでチンピラ達の放つ雷のマギアが、彼女を避けているようだ。


ミトラが音も無く、石畳の地面に着地すると……



ーーコトン……。



彼女のスカートの中から、手のひらサイズの丸く灰色をした球体がこぼれ落ちた。

女の子のスカートの中、その夢の正体。と言うには、少しチープ過ぎやしないだろうか?



ーーパシッ!



ミトラがスカートの中の夢をチンピラ達に向けて蹴り飛ばす。



「あん? これは……」



ーードォォォォオン‼︎


次の瞬間、スカートの中の夢は爆音と共に破裂する。チンピラ達に直撃しなかったようで、彼らは尻餅をついてキョトンとしていた。


俺もまさかスカートの中に小型爆弾を仕込ませるロリータがいようとは思うまい。いや、思ってたまるか。



「こいつ、爆弾もってやがるぞ! やっちまえぇぇぇぇ!」


「あらあらぁ? 地べたのボールボムばっかり気にしているとぉん、頭上注意よぉん」


「あぁ⁈」



………………頭上?


必然。ミトラ以外のその場にいた全員が空を仰ぐ。空には雨のように、無数の影が散りばめられていた。


雨? こんなに快晴なのに? 雨にしては……少し…………いや、かなり大きい。



「下はボールボム、上には槍の雨よぉん!」



凄まじい音と共に、大小、デザインも様々な槍が石畳に突き刺さる。

まあ、不思議。石畳を貫くなんて、なんと鋭い切れ味なのでしょう。……ってか…………



「えぇぇぇぇぇぇ‼︎ 俺も危ねえぇぇぇぇぇぇ‼︎」


「この女やべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」



暗器使い。様々な武器を扱い、一体どこにそれらを隠し持っていたのかわからないが、チンピラ達を遥かに圧倒している。

ってか、俺も危ない。



「さてさてぇ、あまり上ばかり気にしていると、横からの攻撃に注意なのぉ!」


「は?」



ミトラの容赦ない、巨大なハンマーでの横殴りが、チンピラ達をまとめてなぎ払う。

多方向からの時間差波状攻撃、戦うロリータ女性一人に蹂躙されるチンピラと俺。


気が付けば、チンピラ達は倒れ、当面の危機を脱する事が出来た。



「さてぇ、こんな感じでよろしいかしらぁん?」



ドヤ顔で、そしてキメ顔で俺に回答を求めるミトラ。

あんたの攻撃で、俺まで危なかったなんて言えば何をされるかわからない。



「ああ、助かったよ。俺の名前は九重 ソウタ。ありがとうミトラ」


「あら〜、ここら辺じゃあ聞かない名前ねぇ〜。まあいいわぁ〜。はい、これ! 今回の護衛依頼の料金よぉ〜」


「…………料金?」



ミトラから渡された粗末なクズ紙には、殴り書きで様々な料金オプションが書き込まれている。


・護衛依頼基本プラン 50000D

・別途武器メンテナンス料 3000D

・護衛対象無傷 特別手当て 10000D


小計 63000D



「当たり前よぉん! 私は『白銀亭』のリーダーよぉ? 私を短時間でも使役するなら、それなりの対価が必要なのぉ!」



いや、貨幣単位の『ディール』とは何だ?


63000D とは高いのだろうか。そして、そもそも、この不思議な場所にたどり着いたのは、つい先ほどだ。お金など持っているはずもない。



「ごめん、ミトラ。この国にはさっきついたばかりなんだ……。この国の護衛依頼料金がこんなに高いとは知らなかったんだよ。今は持ち合わせが無いんだ……」


「まぁ〜……。そうだったのねぇ……。だったら仕方ないわぁん」



ミトラは少しだけ考えて、残念そうな表情で口を開いた。


……よし、何とかなった。『異世界初心者ですから

、大目に見てください作戦』成功である。許しを乞うには同情で気を引くに限りますなぁ!



「それじゃあ、あなたには借金分、少し過酷な労働で、アルバイトでもしてもらおうかしらぁん?」



…………どうやら同情でミトラの気を引く事は難しいらしい。

しかし、ミトラから見て過酷な労働というのは、かなりヤバいのではないだろうか?

臓器を売れとか言われないだろうか?


…………ヤバい。恐怖心でおしっこ漏れそう。



「ミトラ、アルバイトっていうのは一体……?」


「んふふ、着けばわかるわぁん! さぁ、一緒にいらっしゃぁい」



グイグイとミトラに手を引かれ、街中を進んで行く。

街は様々な人々の、溢れんばかりの活気で満ちていた。

少し路地道は危険かもしれないが、なかなかよい街じゃないか。

大通りはお祭りのように沢山の露店が並んでいる。まるで元いた世界のお祭りのようだ。



「なあ、ミトラ。さっきのチンピラ達が使っていた『雷のマギア』っていうのは何だ?」


「……? 変ねぇ? 世界共通でマギアは認識されていると思うのだけどぉ? 何処の国にいたかは知らないけれど、あなたのいた国でも当然……。まぁいいわぁん。マギアっていうのはこの世界に生まれた瞬間、精霊達から受ける加護の事よぉ。昔、習わなかったのぉん?」


「ああ、少し複雑な事情でね。教育を受けられなかったんだ。何も知らなくてごめんな」


「いいのよぉん! 私こそ詮索して悪かったわぁん! 着いたわぁ、ここが私の、私達のギルド。『白銀亭』よぉん」



ミトラに連れて来られた場所、それは西部劇に出てくるような、少し荒廃感のある石と木製の建物だった。

白銀亭。なにかの会社のようなものだろうか。そして、俺はここに連れ込まれ、何をさせられるのか。

正直、めちゃくちゃ怖い。



「おー? それだれなのー? こんにちわです」



扉を開けると、そこには少しだけ暗い室内。

窓から差す光に当てられて、不思議な雰囲気の少女が佇んでいた。彼女はこちらを見て、目をキラキラと輝かせている。



「あ、ども」


「彼は九重 ソウタちゃんよ。訳あってアルバイトをしてもらうわぁん。こっちの子は02ちゃんよぉ」


「なるほどなのです。02とかいて、おーつー、なのですー。ふしゅー!」


「あ、うん。よろしく02。……ふ、ふしゅー」



02は、こんなに幼い見た目だが、一体ミトラとどんな関係なのだろうか?

俺と同じように借金を背負わされてアルバイトをしているのだろうか。いや、それにしてはテーブルに腰掛け、だらんとしている。何というか自由な少女だ。



「あら、今日は02ちゃんしかいないのねぇ? 他の人達わぁん?」


「みんなは、ぼうけんしゃぎるどに、おしごとをさがしにいきましたです。ふしゅー。02はおるすばんなのですね」


「あらあら、そうなのねぇん。じゃあ、お留守番は私が代わるわぁん。02ちゃんは、ソウタちゃんと、夕食の買い出しに行ってもらえるかしらぁん?」


「ふしゅー。おーけーなのですー!」


「ソウタちゃんは、荷物持ちをお願いねぇ? これもアルバイトに含まれるわぁん。今日の夕食はあなたに作ってもらうから材料を買ってきてねぇん? 任せたわぁん」


「ああ、わかったよ。」


「それじゃあ、ソウタどの、いくのですー! ふしゅー!」



俺と02は、ミトラからお金を受け取ると、夕食の買い出しに行くため、ギルド白銀亭の扉を開いた。

アルバイトの内容が、雑務的な内容で、少しだけ安心している。


02は嬉しそうにパタパタと、近場を駆け回っていた。

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