表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

ファイト・ウィズ・ファット・スキッパー

 ジョン・スミスは、ブリーフィングルームまで、迷いに迷った。ブルネット級の航宙艦は始めてだった。決して、冷凍睡眠の影響で見当識障害になったのではない。

 ルームナンバー3-2。

 部屋は、<フレキシブルビッチ>の迎撃用搭載機タービュランスのクルー用のブリーフィングルームだった。

 部屋に入ると

 タービュランスのコックピットシートがそのまま、ブリーフィングルームのシートに使われている。

 軍隊によくある、ミッション時緊張感を取り去る取り組みだろうが、マッチョ感が半端じゃなくて、こういうのは、好きになれない。

 3D表示の多機能ボードの前には、先程の情報将校。階級は、、、、とよく見ようとしているうちに促されて、コックピットシートに座った。まさか、インジェクションシートではあるまい。

 その情報将校に近いところに、この航宙艦<フレキシブルビッチ>の艦長。テッド・クチタ中佐。年のころは、50代ギリギリ手前か、肩幅広く胸板は厚いがそのぶん腹も出ている。全体として、ビア樽みたいな印象を受ける。自分の摂取カロリーをコントロールできないものに、艦をコントロールする能力はないということか。この船で、広域統合軍人としてのキャリアが終わりそうな人物だ。

「エージェント・スミス、君は元、軍人か」

 艦長が、フロー2Dタブを見ながら尋ねた。情報将校が勢い良く喋ると思っていただけに虚を突かれた。、

「どの名義の記録をお読みですか、艦長」

「一つしか貰っておらん。エージェント、ジョン・スミスのだ」

「元広域統合軍、空間機動歩兵、第67特殊師団所属、師団名の通称は<デス・ブリンガー> 特別功労報奨受賞一回、カルパッツアー賞、受賞二回、元大尉。ただし、降格が三回。そして、一等兵で不名誉除隊とあるが」

 ジョン・スミスは不敵な笑みも見せず黙っていた。

「我々も君の任務の一翼を担う、君について知っておく必要がある。質問してもいいかな」

「どんな権限をお持ちです?おそらく、任務の性格上、答えられる範囲で、元同じ軍隊に所属し軍人同士ということで、許可しましょう」

 エージェント、スミスは言ってのけた。

 <フレキシブル・ビッチ>艦長の表情が変わった。

「君を軌道上まで運ぶのは、我々の重要な任務だ」

「軌道上まででしょう、降りるのは、私一人だ。それとも援護射撃をしてもらえますかイオン砲で二三発でも」

「私は、艦長として、この艦の129人のクルーの命の責任を担っている、無駄にクルーの命を危険に晒すことは出来ない」

「無駄にね、じゃあ、この会話も質問も無駄ですな」

 艦長の表情が更に険しくなった。

「キセノン機関のエージェントはみな、君の様なのかね、元一等兵の不名誉除隊め、年金ももらえず、そのためエージェントとして契約しておるのか」

「どうやら、これ以上、お互いの感情がこじれると、任務と私の命に支障をきたしそうなので、質問をどうぞ、答えられる範囲で答えますので」

「<デス・ブリンガー>というと、ロンバル戦役での虐殺が噂になっとるが、君の参加したのかね、スミス元一等兵」

 艦長の出っ張った、腹が”2Dフロータブに引っかかっていた。

 スミスは、少しも考えず、答えた。

「参加しましたよ、女も、子供も、見境なく殺しましたよ、艦長が担っておられる崇高な任務と同じでしたからね」

「軍の面汚しのベビー・キラーめ」艦長は、小さくつぶやいた。

「女も子供もカフス弾をもって笑いながら、近寄って来ましたからね、艦長も私の立場なら同じことをしたと思いますよ」

「私が知っている限り、あんなもんは、戦争と呼ばん、虐殺だ」

「それが戦争ですよ。最後ですよ、次はなんですか、お互い不快な時間になりそうですから早く終わらせましょう」

「不名誉除隊の理由はなんだ?痛い質問じゃないのかね」

「いや、軍にとって、不名誉なだけで、私にとっては、名誉ですが、それに軍そのものに辟易してましたからね。これでも、人の心を持った人なので」

 間があった。

「クソを丁重に処理しただけです」

「自分の年金受給資格と引き替えにか」

「クソは、年金どころか命も失いましたよ。人によって、価値観と必然はそれぞれで違います」

 艦長には、この男を規則を尊重しない、サイコパスまではいかないまでも、ソシオパス(社会不適応者)と受けとった。すくなくとも、広域統合軍からは、三回も降格されて年金も受け取れず裏口から蹴り出されている。

 情報将校が咳払いをした。

「エージェント、スミスの降下に際し、注意事項を説明します、、、、」

 情報将校は、冷静に職務を遂行していた。こういう男が、軍では生き残る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ