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知略戦略ゲーマーズ  作者: 桐原聖
第一章 初めての異世界で、まずは拠点作り
4/5

金髪少女、キファとの出会い

今回は八ツ橋が推理します。

※文章的に、意味の分からない部分があるかもしれませんが、ご了承下さい。

 小学生の頃のトラウマで、八ツ橋は女子が泣いている所を見るのが苦手だ。


 まず泣いている時の声を聞くだけで全身に寒気が走る。次に涙が零れている所を見ると指先の震えが止まらなくなり、泣き顔を直視すると気絶する。よって女子と口喧嘩をした時には、相手の言葉を受け流すか、敵前逃亡のどちらかを選んでいる。


 だが、今回に限ってはそのどちらも許されない。もう相手が泣いている以上言葉を受け流す事はできないし、敵前逃亡は自殺行為だ。


「どうしよう」

 もう一度繰り返す。どうやら八ツ橋のトラウマは相手が美形なほど発動するらしい。さっきから寒気と指先の震えが止まらない。


「ひっく、ぐすっ」


 少女はまだ泣いている。仕方ない。八ツ橋は立ち膝になると目線の高さを合わせた。


「ご、ごめん。別に泣かせるつもりじゃなかったんだ。そ、それにあの魔法、中々良かったよ。多分僕がくらったら一撃でやられてたなー」


 気絶覚悟で慰めてみる。もしここで少女が顔を上げたら終わりだ、と思いながらマッチ・ポンプを続ける。


「ほら泣き止んで。君、せっかく可愛いんだから泣いてたら可愛い顔が台無しだよ」


 我ながら歯の浮くようなセリフだなと思いながら、八ツ橋は震える手で少女の髪を撫でた。サラサラした髪が気持ちいい。その時、


「触らないでっ!」


 少女の声が響いた。驚いて少女の顔を見ると、涙目の少女と目があった。

 涙が浮かんだ瞳に、赤らんだ顔。涙が頬を流れ落ちる様は、一周回って一つの芸術に見えた。もしこれが都会なら、少女を慰めようとする人達で道路が溢れかえり、渋滞が起こっているレベルだ。


 八ツ橋の身体から力が抜け、そのまま仰向けに倒れこむ。少女の泣き顔を直視したせいだ

ろう。意識が遠のいていく。


 ――つくづく嫌なトラウマだな。

  薄れゆく意識の中で、八ツ橋はそう思った。




 目が覚めると、知らない天井が目に入った。背中にベッドと思われる物の感触がある。


―異世界召喚のお決まりだな。


 そう思いながら身を起こす。木の壁が目に入る。どうやらここは、世に言う『ログハウス』

という物らしい。思っていたよりも広い。小学校の体育館くらいはある。


「気が付いたんだ」


 隣から不機嫌そうな声が聞こえる。横を向くと、さっき泣かせた金髪美少女が不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。


「あ、さっきはありがと――」


 八ツ橋がお礼を言おうとするのを、少女は手で制した。


「動かないで。ちょっとでも動いたら撃つ。――どうせ弱いけど」


 その言葉に、八ツ橋の身体が固まる。いくら小さくても弱くても、この距離で火球を放たれたらさすがに避けきれない。


「ちょ、ちょっと落ち着こうか・・・」


「動かないで!」


 少女が叫んだのと同時、少女の手のひらから氷のような物が形成され、一直線に放たれた。


「わっ!」


 八ツ橋が身体を寝かせて避けるのと、氷が八ツ橋目がけて放たれるのが同時だった。氷が壁に当たって砕け散る。その時、少女が八ツ橋の下半身にのしかかる。


「わっ!」


「捕まえた。これでもう逃げられないんだから」


 少女が勝ち誇った顔で言った。羞恥心という物が無いのだろうか。


「え、えっと・・・」


「とりあえず黙って。またいじめられたら嫌だし」


 少女の手のひらが八ツ橋の眼前に突き付けられる。


「貴方にいくつか質問をするから答えなさい。いくら私が弱くてもこの距離なら当たるでしょ」


 少女の勝ち誇った声が聞こえる。どこまで自分に自信が無いのだろうか。からかってやろうかと思ったが、また泣かれたら困るのでやめておいた。


「まず一つ目。なんで許可も取らずに私の森に入って来たの?」


「何、ここって君の森なの?」


「そうよ、ここは私の森なの。人間が無断で侵入する事は許さないわ」


「そうなんだ。ごめん、僕全然知らなかったよ」


「まあいいわ。それより貴方、村の人と交流はある?」


 少女の質問に、八ツ橋は首を振る。


「ないよ。というかこの近くに村がある事すら知らなかった」


「そう。じゃあ最後の質問ね。貴方、行く当てはある?」


「全くない」


 そもそもどこに何があるかも分からない八ツ橋に、行く当てなどあるはずが無い。八ツ橋の答えに満足したのか、少女が手を放し、八ツ橋に言う。


「じゃあ、しばらくここで私と一緒に暮らして!」


 数秒の沈黙があった。







「は?」


「行く当てないんでしょ?じゃあ、少しの間だけでいいから、私と一緒にこの家で暮らして!」


 少女の眼が輝く。何がそんなに嬉しいんだろうか。

 まあ、行く当てがないのは本当だし、しばらく世話になるのも悪くない。


「分かった。いいよ」


「本当?私はキファ。よろしくね!」


 そう言うと、金髪美少女、キファは八ツ橋の上から退いた。八ツ橋は溜息を吐くと、ベッドから起き上がった。


「ごめん、突然なんだけど僕、ちょっと考え事したいから一旦外に出るね」


「分かった。えっと・・・」


「八ツ橋倉野。八ツ橋でいいよ」


 名前を言い、ログハウスの外に出る。そこは、相変わらずの森だった。


(さて・・・)


 顎に手を当て八ツ橋は考える。


(彼女の質問、一見筋が通っているように見えて、全く筋が通っていない)


 八ツ橋は彼女との会話の中で、既に矛盾点を見つけ出していた。


(まず一つ目の質問。これはまあいいとしよう。自分よりも下の種族を見下している発言、これだけ見れば至って普通だろう。これだけを見れば、だけど)


 彼女の三つの質問から、彼女の心理を紐解いていく。いや、自然に紐解いてしまう。これは八ツ橋の面倒くさい部分でもあった。


(二つ目の質問。村人との交流なんて聞いて何になる?そして最後の質問。なんで僕と一緒に暮らしたいんだ?)


「まとめると」


 口に出して呟く。


「あの金髪美少女、キファは、人間に対しては強く当たるのに、なぜか人間である僕と一緒に暮らしたくて、しかも村人の事も気にかけている、と」


 そして、結論を出す。


「明日、村にでも行ってみるか」


キファの狙い、分かったでしょうか?

 

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