この世界に別れを告げろ
文章が短くて申し訳ございません。できるだけ早く投稿できるように努力します。
裁判は午後2時に終わったはずなのに、八ツ橋が家に帰れたのは夜中の2時を過ぎてからだった。今後の政治についての会議を行っていたらこんな時間になってしまったのである。
「あー、今日も疲れた」
家に着き一息ついた八ツ橋は、チラリと玄関の方を見た。鍵がかけてあるのを確認するとソファに寝転がった。自然に溜息が出て来る。
「今日も疲れたな・・・」
退屈そうに呟くと、八ツ橋は立ち上がり、部屋の電気を消そうとした。その時――
突然、八ツ橋の前に、長身の男が現れた。
山高帽に燕尾服を着こみ、目にはサングラスをかけている。一見するとヤクザに見える風貌だ。
「何の用?ていうか、君だれ?」
八ツ橋は驚きをポーカーフェイスで隠しながら聞いた。どんな状況が起こっても基本彼は驚かないようにしている。驚くという事は心理戦において致命的だからだ。
「君が、八ツ橋倉野くんかい?」
「そうだけど」
「突然だが、君に聞きたい事がある」
ヤクザのような男は、唐突に言った。
「無視とは酷いなあ。まあいいや、質問って何?」
八ツ橋は額に汗を浮かべながら慎重に質問した。いきなり目の前に現れる人間がまともなわけがない。そう感じたのだ。
「では君に質問だ。――――君にとって、この世界は面白いか?」
「・・・・・」
男の質問に、八ツ橋の顔から不敵な笑みが消え、何かをこらえているような顔になる。
―――思えば、辛い事の連続だった。
公立の中学校という面もあったのだろうが、八ツ橋の学校は生徒が『馬鹿』だった。
――人の話に合わせてへらへらと笑い、自分の意見を持たない人形達。
――自分達と同じように笑う人形のみを受け入れ、自分達とは違う者を『異物』として排除する教室。
――少しでも踏み込み過ぎれば即アウト。相手の顔色をひたすらに窺って毎日を過ごす。
それが、八ツ橋の通っている学校の現状だった。
そしてそんな中、八ツ橋はすぐに『異物』扱いされた。相手の心理に踏み込み過ぎたのだ。
幸い、八ツ橋はいじめこそ受けなかったが、周りからは常に疎まれていた。教師や親からも見限られ、孤独の一年間を送った。
八ツ橋に味方は居ない。そして、作るつもりも無い。
「退屈だね、こんな世界。心を掌握するまでもない」
八ツ橋はきっぱりと言い切った。その顔には、いつも通りのへらへらとした作り笑いがあった。
「そうか。やはりな」
「何が?」
「いや、何でも無い。こちらの話だ。――時に八ツ橋くん。君は、〝共存世界〟という物に興味はないかい?」
「何、それ?」
「様々な種族が集う世界だ。まあ一言でいえば〝異世界〟かな」
「そこに行って、何があるの?」
「それぞれの種族がそれぞれの志を持っている。ひょっとすると、君でも掌握できない種族が居るかもしれないよ?」
八ツ橋の目が輝いた。
「それ、本当?」
「ああ、本当だ」
「凄く興味がある」
「そうか。それは良かった。・・・では君にはすぐにでも行ってもらおうか」
言うと男は山高帽を脱ぎ、中からステッキを取り出した。
「では八ツ橋くん、健闘を祈る。無事に全種族を掌握したまえ」
「ああ。この世界は僕には脆弱すぎた。この世界に居るのは一分一秒でも耐えられないからね。さっさとやってくれ」
「ふふ。・・・では、行ってこい!」
男がステッキで八ツ橋を叩くと、八ツ橋の身体が消失した。
今回はここまでです。まだまだ文章力が低いので優しくアドバイスを戴けたら嬉しいです。