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ゲンロンSF創作講座 便乗小説#01「セヴンティ」プロット&アピール

作者: 沖田 征吾

●プロット●


「2050年、1月1日は私の誕生日で、70歳、1980年生れの、セヴンティ。『除夜の鐘アプリ』は人間味がないけど、外出は禁止されて、どうにも窮屈な世の中だ。物を持たないシンプルな暮らし。ARを使えば、豆腐のようなのパックフードもおせち料理に見えて、悪くない。お友達は、botとさほど変わらない、旧世代の人工知能くらい。就寝時間を知らせるアラームがうるさくなってきた。やれやれ、私は勤労女性だ」

 70歳の浅樹まなみは、シニア人材センターの勤労高齢者。松濤の高層ビルで、一日中仮想世界に繋がる若者たちへ食事を与え、身体を拭き、様々な世話をする。休日には、高齢者や移民の集まるショッピングモールへと出かけ、過去の平成文化とファッションを楽しんでいる。

 ある日、怪我をしたまなみは、移民二世のリハビリ医、クラヴィスに会う。彼は移民の地位向上を願い、日本の若者たちを相手にテロを計画していた。VRリハビリの催眠プログラムにより、まなみはクラヴィスに同調していく。彼女はやがて、逆に彼をコントロールしはじめ、彼を脅迫し、セックスを強要する。70歳での初体験だった。

 空疎にみえた二人の計画は、スマホと既存SNSのサービス終了の決定で、急速に高齢者層の協力者を獲得していく。「洗脳」に使うのは、古き良きソーシャルゲーム。強い理想と目的意識によりテロへ導くのではなく、逆にテロを日常のルーチンの段階にまで引き下げる。神、天皇、共産主義……至高の存在を必要としないが、絶対的な行動。その中心には空虚しかなく、実行者はなぜ自分がそれを行ったのかも説明出来ない。

 ただ、まなみだけは17歳の少女のように、クラヴィスに恋をして、自爆を決意していた。だからこそ、彼女自身は失敗するだろう。テロは起きたが、生き延びたまなみ。彼女は拘置所の中でも、これまでの生活となんら変化を感じないのだった。


●アピール●


 「おばあさんのエッセイ風の語り」で進んでくSFってのは読んだことがないので、まずはそこのオリジナリティをお楽しみ下さい。右翼青年のテロを描いた大江健三郎の「セヴンティーン」を下敷きに、田中康夫の『33年後のなんとなく、クリスタル』も参照に、いわば「70年後のなんとなく、クリスタル」がテロと合流しちゃった、というお話。梗概に書いてしまったけど、「至高の存在・理想・目的を必要としないテロ」言い換えると「日常のルーチンと同等まで引き下げられたテロ」という新段階。コミュニケーションが下手なまま歳とっちゃって、孤独と虚無感のスパイラルで、人生がマヒ状態になってしまったロストジェネレーションたちが、ガチャで爆死した勢いでついつい自爆テロしちゃう……という寂しくも滑稽な墜落話を、たぶんきっと説得力たっぷりに描きます。

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