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第六話 ぼくのとうさまはとてもかっこいいです

 今回はリオの父であるロベルトについての話なのですが、ロベルトの昔話とかどうでもいいという方は後書きに簡単にまとめた物を用意したのでそちらをお読みください。

 これは何故父が冒険者をやっているのか訊いた僕にノアが教えてくれた話だ。

 元々、父はボーティス家の三男だったため、優秀な長男がいたこともあり自分が後を継ぐとは考えていなかったらしい。

 そこで、父は子供の頃から憧れていた冒険者になり、同時期に冒険者になった母と出会ってパーティーを結成した。そして、父は冒険者として活躍しながら魔術師としての実力も上げていき、ついには王国全体でも数少ない上級属性魔術師になるまでに至った。その後、母とも結婚し強力な属性魔術を使う冒険者として順調に名を上げていった。

 そんなとき、父にボーティス家当主になるよう長男であるクロードから打診があった。最初、父はそれを断ったそうだ。父は兄であるクロードのことを尊敬しており、当主にも相応しいと思っていたからだ。だが、クロードは内政などに関しては優れた能力を持っているが魔術師としては父に劣っていた。

 イレイシア王国の貴族は初代が魔術師、魔装師であることが多いためか、実力主義に偏っている。通常は長男が家を継ぐことが多いが、名の通った魔術師、魔装師がいた場合は長男以外が当主になることを望まれることもある。その方が、より家名に箔がつくからだ。

 そのため、クロードは一流の魔術師である父に当主の座を譲ることにした。そして、自身は分家である代官の家に婿入りして、内政に従事することで当主になった父を支えることを決めた。その方がボーティス家の為になると考えたからだ。

 クロードの決意を聞いた父は冒険者を辞めて当主になることを決めた。だが、冒険者が父の夢であったことを知っていたクロードは冒険者を辞める必要はないと言った。

 これには、父の為ということ以外にも理由があった。現役で活躍している冒険者が当主であること、これは領民に対して良いイメージを与えると考えたのだ。冒険者はイレイシア王国では英雄譚などにもよく登場する花形の職業であったからだ。内政に関しては、大抵の領主がそうであるように危急の時以外は代官である自分がいれば事足りると父に説明した。

 尊敬する兄がそういうならと、父は当主を継ぎながらも冒険者を続けることとなった。当初は当主である父が危険な冒険者を続けることに反対する者も居たが、次第にその数も減っていった。クロードの考えたイメージアップが効果を上げたことも理由の一つではあるが、父が冒険者を続けることで予想外の副産物をもたらすことになったことが一番の理由だ。

 



 父が当主を継いでしばらくたったある日、ボーティス伯爵領支部の冒険者ギルドに領内の各地で大規模な魔獣の群れが目撃されたとの情報がもたらされた。これを危険視した冒険者ギルドは、すぐに領主である父に騎士団の派遣を要請した。当初、これを知った関係者は大きな被害は免れないと考えていた。

 しかし、父は逆に冒険者ギルドにも依頼を出して冒険者と騎士団を自ら率いて魔獣を殲滅する共同作戦を実行した。その結果、ほとんど被害を出さず、迅速に事態を解決することができたのだ。

 この話は他の領主や騎士、冒険者達の耳にも入り、大きな衝撃をもたらした。通常、冒険者ギルドと騎士団が協力して事態を解決するなどあり得ないことだったからだ。しかもそれが成功し、事態を最小限で食い止めたことも外部の者には衝撃的なことだった。

 イレイシア王国の冒険者ギルドは王国公認の組織である。各貴族の領内にその支部が存在し、独自の権限を持っているため、例えその領地を治める貴族であってもギルドに対しての命令権はない。

 本来、騎士団には自領に出現する危険な魔獣を倒す義務が存在する。しかし、冒険者ギルドの方が魔獣の情報を入手する速度が騎士団に対して圧倒的に早い。これは、普段から冒険者が依頼で様々な場所に行くことになるからだ。しかも、大抵の魔獣なら冒険者が倒してしまうので問題は起きない。

 さらに言えば、騎士団が魔獣を倒し過ぎてしまえば冒険者ギルドの依頼に影響が出てしまう恐れもある。騎士団は魔獣の討伐を最優先にするため、倒した魔獣の素材は放置する方針だからだ。そのため、ほとんどの領地では騎士団は要請を受けた場合のみ出動することになっている。

 だが、冒険者だけでは解決できない問題を騎士団が解決するということから、冒険者を見下す騎士も存在しており、それに対して普段騎士の代わりに魔獣を倒している冒険者が反発するという悪循環があった。

 そのため、冒険者ギルドと騎士団は基本的にあまり仲がよくない。むしろ悪い。そのせいで情報の伝達が遅れ、被害が拡大することも少なくはない。このことに多くの領主は頭を悩ませていた。そこに、騎士団と冒険者ギルドが協力して事態を解決したという情報が入ったのだ。

 領主たちは何故上手くいったのかを調べさせた。調査の結果、その理由はボーティス家当主の父にあることが分かった。

 現在のボーティス伯爵領支部のギルド長は父が冒険者になったばかりの頃から替わっていない。そのため、まだ駆け出しの頃から父を知っていた上、優秀な冒険者に成長したあとは直接話す機会も多く、父の人となりもよく知っていたので当主になった後の関係も良好だった。魔獣の群れを発見してからの情報伝達が早かったのは二人の間に信頼関係があったことが大きな理由だろう。

 また、自身が冒険者であった父には事態の解決が騎士団だけでは難しいと感じた時、冒険者ギルドへ依頼することは当然の発想だった。自身もまた冒険者である父は、彼らが頼りになることをよく知っていたからだ。さらに、騎士団の者も自分たちの主が冒険者であるため、冒険者に対する驕りなどは存在しなかった。父が凄腕の冒険者であり、その実力もよく知っていたため、騎士団のみでの対処が難しい以上、冒険者ギルドへの依頼に異議を唱える者は存在しなかった。

 そして、最後に冒険者たちだが、父は仕事仲間である冒険者達には人気があった。貴族で腕もよかったが偉ぶらず社交的で、領主になってからもその態度は変わらなかったからだ。元々、ボーティス家が領民に人気があったことも大きな理由だ。自分達が住むボーティス伯爵領の危機であり、仕事仲間である父からの依頼でもあったため、冒険者の士気は高かった。騎士団との協力に関しても、父が間に入り、騎士達の態度も真摯だったことから問題は起きなかった。

 共同作戦の成功後はボーティス家にて酒宴が開かれ、これまであまり接点のなかった騎士と冒険者達の仲も良くなった。自分たちの住む場所を供に戦い、守ることで仲間意識が芽生えたのだ。今では、酒場で騎士と冒険者が一緒に酒を呑んでいる姿もよく見かけられるという。

 共同作戦が成功した理由を知った領主たちは父を讃えた。冒険者に頼るなど恥だと罵る者もいたそうだが、それも僅かだけだ。共同作戦での戦果がそれほど素晴らしかったからだ。中には、父を真似て後継ぎを冒険者として修業に出した者までいたらしい。

 こういった経緯により、父は大手を振って冒険者を続けられることとなった。さらに、共同作戦以降は若い騎士を自身のパーティーメンバーに加えることも始めた。実戦経験を積ませること、まだ馴染みのない騎士と主が話す機会を設けること、騎士と冒険者の仲をこれからも良好なものにすることが目的だ。

 そして、パーティーメンバーである母が妊娠してからは活動を一時的に休止していたが、僕が少し大きくなったこともあって、最近になって活動を再開したのだった。




 冒険者になったら、結婚できた上に三男なのにボーティス家の当主になれて、仲の悪かった騎士団と冒険者ギルドも仲良くなったよ! さあ、みんなも冒険者になろう! というお話です。 

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