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第三十四話 ハムスター(異世界Ver)

 トリモドキとの遭遇からしばらく経ち、ようやくトーニャが泣き止んだので僕たちは鳥探しを再開した。でも、さっきの出来事がトーニャに与えた影響は思った以上に大きかったみたいだ。


「鳥がいましたよー」

「にゃあぁぁぁ!?」


 鳥の発見を知らせるエレナの声を聞いたトーニャは、猫の鳴き声の様な悲鳴を上げてうずくまってしまった。そして、トーニャの悲鳴に反応した鳥や動物がこちらを恐れるように逃げて行く。


「トーニャ姉様、もういないから大丈夫だよ」


 ホントはいなくなっったら困るんだけど、奴との遭遇は完全にトーニャのトラウマになってしまったみたいだ。鳥を探しているのに、見つけるたびにトーニャは怖がって悲鳴を上げてしまうのだ。


「うー。ごめんさい、リオ」


 自分のせいで鳥探しが上手くいかないことを申し訳なく思っているのだろう。立ち上がったトーニャはしょんぼりした様子で僕に謝る。


「仕方ないよ。僕は見てないけど説明だけで気持ち悪かったし」

 

 正直、五歳の女の子が見るにはきつ過ぎる光景だと思う。話を聞いただけの僕も鳥を見つけたときには嫌な気持ちになってしまう。僕はこの森に何をしに来たんだろうか……?


「トーニャ様は戻った方ががいいかもしれませんね。」


 トーニャの様子を見ていたノアが呟いた。確かにその方がいいかもしれない。怖がっているトーニャをこれ以上付き合わせるのはかわいそうだし、この先も鳥を探す以上は奴と遭遇する可能性は充分にある。……やだなー。


「トーニャ姉様、ノアの言うとおりにした方がいいよ。」


 僕がノアの意見に同意すると、トーニャはシュンとした表情でうなずいた。


「それじゃ、私が送って行きましょうか―?」

「いえ、ここは私が行きます」


 エレナの提案をノアが否定し、エレナは意外そうな顔をする。


「その網を使うなら魔装の得意な貴女がリオ様と一緒にいた方がいいでしょう」

「あー、それもそうですねー。でも、ノア先輩がいないとリオ様が歩くの大変ですよー?」


 エレナの言うように、幼児の僕が普通に森を歩けていたのはノアの魔術のお陰だ。


「大丈夫です」

 

 ノアはそう言うと、僕達に背を向けて前に出た。なんとなくだが、ノアの魔力が高まっていることを感じる。


「来なさい、リリー」

 

 ノアの言葉によって魔方陣が出現した。練習している内に気付いたことだけど、魔方陣の種類は喚び出すモノによって異なる。たぶん、この魔方陣はアンを召喚したときと同格のモノだ。以前は騎士団長が馬を喚び出した魔方陣とアンの魔方陣が似ていると思ったけど、今考えると別モノの様に思えてくる。


――――――魔方陣の形や大きさは生物、無生物、魔力量、質量などによって異なり、完全に同じものは存在しない。


 また知らない筈の知識が頭に浮かんできた。アンを召喚して以来、たまにこういうことが起こるようになった。相変わらず内容に間違いはないのでかなり役に立っている。そういえば、魔方陣についてはノアの授業で聞いたことはない。今度聞いてみようかな。

 魔方陣を見ながらそんなことを考えていたが、ノアの喚び出したモノを見た途端に全て忘れ去ってしまった。

 魔方陣の上に、二メートルほどの燃えるような赤い色のハムスターが出現したのだ。元は小さくて可愛らしい姿だけど、さすがにこの大きさだと――――――


「チュー」


 可愛い。どれだけ大きくてもその愛らしさは変わらなかった。


「やー、何この子!すっごく可愛いわ!」


 今まで沈んでいたトーニャも興奮した様子でハムスターを見ている。


「この子はリリー、ヒネズミという魔獣です。リリー、私はこの場を離れるのでリオ様の命令に従いなさい」

「チュー!」


 リリーはノアの言葉に力強く頷くと僕の方を向いて体を伏せる。なんだろう?


「リオ様、ここからはリリーに乗って移動してください」

「ハムスターに乗るの!?」

「ハムスターではなくてヒネズミです」


 いや、確かに大きさ的には問題なさそうだけど。リリーを見ると「さあ、早く乗りな!」と言わんばかりに僕を見つめている。

 その視線に耐え切れず、僕はノアの手を借りておっかなびっくりにリリーの背に乗った。


「もっふもふだー」


 リリーの背中はの乗り心地は最高だった。サイズが違っても普通のハムスターと触り心地は変わらないらしく、ヒネズミという名前の通り体温も少し高いようでとても温かい。


「いいなー」


 リリーの背に全身で抱きついてその感触を堪能している僕をトーニャがうらやましそうに見ていた。


「今度乗ってみますか?」

「いいの!?」

「はい、もちろんです」

 

 ノアの言葉にトーニャは目をキラキラと輝かせている。

 

「それでは私たちは戻ります。リオ様、頑張ってくださいね。エレナ、リリー、リオ様をお願いします」


 そう言い残し、ノアとトーニャは森の出口へ向けて来た道を戻って行った。 

 

 いつも読んでくださりありがとうございます。感想や評価などもぜひお待ちしています。きっと執筆速度が早くなったりします。

 番外編の「異世界の生き物図鑑」を始めましたのでそちらもよろしくお願いします。


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