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第十八話 そして魔力操作試験へ

 僕が倒れたときの状況について、父は説明を始めた。


「リオちゃんの適性が高すぎたんだよ。そのせいで魔道具が誤作動を起こして通常では考えられない様な光を放ったんだ。しかも、あの光には受験者の適性を調べるために吸い取った魔力が含まれていた。その魔力をもろに浴びたせいでリオちゃんは気絶したんだ」

「魔力を浴びると気絶するの?」

「慣れていない人はそうなることもあるんだ。しかも、リオちゃんが浴びた魔力はかなり多かったからね。むしろ、リオちゃんの魔力が暴走しなくてよかったよ」


 あの魔道具はそんな危ないものだったのか。……いや、僕の適性が高かったせいらしいから普通は起こらないのか?


「よくあることなの?」

「いや、そんなことないよ。ああ、でも過去に何回か似たようなことがあったそうだね。そのときは魔力の暴走が起こったらしい。でも、そういうときのために試験官が傍にいるからね。大けがをした人なんかは一人もいないよ」


 一応安全は考えられているらしい。僕の身体にも異常はないようで、もう普通に動いて構わないそうだ。


「僕の試験はどうなったの?」

「……召喚魔術は適性ありだよ。あれは適性が高すぎたせいで起きたことだしね。特殊魔術の適性試験は家でやろう。試験官の方も今日は屋敷に止まるからそれで大丈夫だよ」


 勝手にやっていいのかとも思ったが、あの試験官は王国から正式に派遣された人物で、その人が了承してくれたから問題はないらしい。

 適性試験の方はこれでいいが、魔力試験はどうするのだろうか。ひょっとしてもう終わってしまったのかな?


「今は魔力操作試験の最中だからね。リオちゃんも受けられるよ」


 父に聞いてみるとそんな答えが返ってきた。どうやら、そう長い時間気絶していたわけではないみたいだ。今になって時計を見てみると、僕が試験を受けた時間から一時間ほどが経っていただけだった。

 そういえば、父はこの結果についてどう思っているのだろうか? 昨日の父の心配が見事に的中した形になっている。父の方を見ると、僕の考えていることが伝わったようだ。父の方からその話を始めた。


「実はね、もっとリオちゃんに期待してもいいのかなって思ったんだ。……属性魔術の適性がなかったとき、僕は君にリオンの様な召喚魔術の才能があることを確信したよ。あんなことになっちゃったのは予想外だったけどね」


 何故か父の意見は昨日と全然違っていた。そういえば、父は僕に属性魔術の適性がないと知っても落ち着いていた気がする。


「初代……リオン・ボーティスにも属性魔術の適性は皆無だったんだ。このことを知っている人は少ないけどね。他にも、君にはリオンを思わせる要素がいくつかあるしね」


 僕に属性魔術の適性がなかったことでリオンのことを連想したのか。他の要素については心当たりはない。思い当たるのは精々名前くらいだ。

 ボーティスの当主である父はリオンについて詳しいのかもしれない。



「それにね、あのときの君は属性魔術の適性結果を知っても全く動じなかった。まるで最初から知っていたようにさえ見えたよ。僕が君の立場ならあの結果はとても受け入れられないものだ。とても立派だったよ」


 父の言うとおり、あの時の僕は冷静だった。だが、それはノアのお陰だ。ノアが心配していなかったので何か安心できる理由があるのだろうと考えただけだ。


「だからね。あの姿を見て君に期待してしまったんだ。君なら本当にリオンの様な召喚魔術師になれるんじゃないかってね。僕が不安に思っている重い期待にも君なら答えてくれるんじゃないかって、親馬鹿な僕は思ってしまったんだ」


 自嘲するように父はそう言った。正直、リオンの様になれる自信は全くない。だけど、父の心配していることについては問題ないとも思う。

 自分で言うのもなんだが、僕はプレッシャーに押しつぶされるような柔な神経はしていない。友人にも、リオは図太い神経をしていると言われてたしね。……アイツの表現はよくないな。ここは精神力が強いということにしておこう。

 だから、父には存分に期待してもらおう。その方が父の精神衛生上はいいだろう。親に心配は掛けたくない。まあ、期待に応えられるかは別だけど。

 一度、後ろに控えているノアを見た。彼女はまるで僕の考えが分かっているように頷いてくれた。ノアとは生まれたときから一緒にいる。僕の考えていることくらいすべて見透かしているのかもしれない。

 でも、そのお陰で足りなかった自信も少しはついた気がする。僕は父の目を見て言った。


「父様が期待しようと心配しようとそれに関係なく、僕はリオンを超えるよ。僕は勝手に強くなるから父様も勝手に期待していればいい。……だから、父様は心配しなくてもいいよ」


 僕の言葉に父は昨日と同じように呆然とした顔をしていたが、しばらくすると悪戯っぽく笑った。


「それなら、期待させてもらおうかな。でも、リオンを超えるのは大変だよ?」


 そう言う父に僕は力強く答えた。


「大丈夫だよ。僕の召喚魔術の適性は見たでしょ?」


 アクシデントはあったが、同時に僕の適性が非常に高いこともわかった。時間を掛ければそれなりの魔術師になれるだろう。リオン本人はいないのだから明確に比べられることはないしね。

 そう考えていた僕に父は意地悪そうに笑う。


「それならまずは魔力操作試験に合格しないとね。リオンは一発合格だったから当然リオちゃんも今年合格するよね?」


 ……明確に比べられてしまった。ひるむ僕に向かって、父はさらに続ける。


「あと、王立魔術学院も当然ストレートで卒業だよね? これは僕にもできたからリオンを超えるなら当たり前だよねー」


 父は非常に楽しそうにそう言った。……先程までの息子を心配する親はどこに行ったのだろうか。この人は二重人格か何かなのか? あー、それなら以前聞いた父が活躍する話も納得いくなー。


「父様、解離性同一性障害はれっきとした精神病だから病院に行った方がいいよ」

「かいりせ……なんだいそれ?」


 父は首を傾げている。今のは日本語だから当然だ。


「とりあえず操作試験を受けてくるよ。……僕は大器晩成型だと思うから今回受かるかどうかはわからないけどね!」


 そう言って病室から逃げようとするが、扉に手を掛けたところで父から声がかかった。


「リオちゃん、ありがとう。それから、期待しているよ」

「……うん」


 僕は病室から出た。後ろからはノアが付いてきている。


「ノア、僕はリオンを超えられると思う?」

「はい、少なくともノアはそう思います」


 僕の突然の問いにも、ノアは迷うそぶりも見せずにそう答えてくれた。


「……そっか。それじゃあ、操作試験の会場に行こうか」

「はい、リオ様」


 僕たちは魔力操作試験の会場へと向かった。

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