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1000文字小説

結果と原因

作者: 池田瑛

恋人が、交通事故に遭った。容態は良くない。集中治療室の前に椅子に座っている俺の前を、看護師が気まずそうな顔をして通り過ぎた。


 どうして、こんな事になった?


 俺が彼女と別れる前、珈琲をもう一杯飲んでいれば、彼女はあのとき、車が突っ込んできた場所なんかに居なかっただろう。いや、もうちょっと早く話を切り上げていればよかったのか?


 俺が悪いのか? 


 会おうと、デートに誘った俺が悪いのか?


 事故現場の検証では、運転手は、飛び出してきた子供を避ける為に、右にハンドルを切ったらしい。そして、次に対向車線を走ってきた車を避けるために思いっきり左にハンドルを切った…… 、そして、歩道に乗り上げたらしい。運転速度に違反はなかったというのが、検証結果だ。


 運転手が悪いのか?

 

 飛び出した子供が悪いのか?


 その子供に対する親の教育が悪い、つまり、その子供の親が悪いのか?


 対向車線を走ってきた車の運転手が悪いのか?


 時速60キロで走る鉄の塊なんて危険な代物を製造している車メーカーが悪いのか?


 そもそも、なんで彼女は非番の日に仕事になんか行かなければならなかったんだ? そうだ。同僚が風邪を引いて、代わりに出社しなければならないと言っていたんだ。


 風邪を引いた、その同僚が悪いのか?


 それとも、その同僚に風邪をうつした奴が悪いのか?


 それはいったい誰なんだ? 


 最近、インフルエンザが流行っていたからか?


 そういえば、薬局でマスクの品切れが続いていた。需要を予想できなかったマスクの生産業者が悪いのか?


 インフルエンザウイルスが悪いのか?


 俺の思考は、結果と原因の間をぐるぐると廻る。この結果と原因を結びつける糸を探す。


 集中治療を示す、赤いランプは点灯したままだ。

読んでくださりありがとうございます。

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