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今日はスマホで投稿です。
誤字脱字があったら教えてください!
森は静かにそこにあった。
辺りに漂う静寂は、やがて少女の軽快な足音で霧散する。
リズミカルな足音とは別に編みかごの中の収穫物が不協和音を奏でる。
そんなことも気にせず、美月は全速力で駆け抜けた。粗い麻のスカートの裾が翻っても、速度が落ちることもない。
ただ、ただ、一ヶ所を目指して。
湖のそばにたどり着くと、一呼吸置く。
自然に視線は足元に落ちた。
狂おしく鳴り止まない心音を噛み締めるように、服の胸元を握りしめる。
いる?
いない?
音にならない言葉を唇にのせる。
5・4・3・2…
「行け!!」
美月は顔を上げた。
そこにいるべき姿を探して。
果たして、そこに彼はいた。
昨日と同じように寛いだ様子で。
ほっと、肩の力が抜けたことに、美月自身、笑いがこぼれる。
どれほど、その存在を望んでいたか。
もう、止まらなかった。
かごを投げ捨て、銀のもふもふにダイブする。
ぐっ…
奇妙な音も耳に入らない。
細く柔らかい銀毛に顔を埋めて、お日様の香りを胸いっぱいに吸い込む。
わきわきと抱きついた両手でなで回す。
そんな彼女のからだが、引っ張られて、急に引き剥がされた。
人形のようにゆっくりと首をまわす。
犯人は彼ー
美月の服の襟の後ろを鋭い牙で噛んで持ち上げていた。
と、いうより、彼の口元にぶら下がったミノムシかのよう。
「強い顎だね…」
自分の立場を忘れ、つい、うっかり感心する。
呆れたのか、彼はくわえていた美月の襟を放した。横たわった彼の腹を背もたれにした形で美月はその場の草むらに座り込む。
宥めたいのか、前足の肉球を1、2度、美月の頭にのせる。
「キャァ…」
顔を真っ赤にして、美月は引き戻そうとしている前足を掴み、肉球を頬にあてる。
ムニムニとした感触が、彼女をうっとりとさせる。
銀の獣は嫌そうに鼻先に皺を寄せた。
そんな彼の人間臭い仕草を見とがめるものはだれもいなかった。
満足したのか、美月は銀のもふもふに背中を預けた。
調子外れな鼻歌を歌い始める。
「私ね、こことは違う世界から来たんだよ」
地面の草をぶちぶちとぬきながら。
できるだけ明るい口調で。
そんな美月の頬にヒヤッとしたものがぶつかる。
こそばゆい感触と一緒に。
美月の黒い瞳は溢れんばかりに見開かれたあと、ふにゃりと目尻が下がったら。
「励ましてくれるの?」
寄せられた鼻先にそっと触れる。
髭がぴくりと動く。
「私の話を聞いてくれる?」
強く鼻先を押し付けてくる。促すように感じるのは都合のよい夢だろうか。
いよいよ、過去編に突入!!