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ちょっと、長くなってしまいました・・・(反省)

森はそこにあった。

侵入者を拒むことなく、かといって受け入れるわけではなく・・・

ただ、そこにあった。


少女は森の入口で立ち止まる。

ファムタール大陸では珍しい黒髪が風に誘われ、ゆっくりと舞い上がる。

空を舞う鳥の鳴き声が彼女の注意を引いた。

「今日も良く働いた」

大きな伸びをしたあと、少女は収穫物が入った編みかごを拾い上げ、森の中へと足を進める。

「ファムジーヤのご加護を」

慣例の挨拶を口に乗せて。


少女の小さな足音はあっという間に草の中に吸い込まれていく。

とても重労働後とは思えない軽やかな足取り。

やや西に傾いた太陽が、柔らかな日差しを少女の華奢な体を包み込む。

いつもとは違う身軽さに、ついつい、鼻歌まで飛び出す。

「今日のラッキーアイテムは不細工な編みかご?なんてね」

不慣れな手つきで編み上げたばかりのかごの中では手伝いの駄賃としてもらった芋が、

ころころと左右に転がる。

「これでキノコが採れれば、おいしいスープができるんだけど」

匂いたつスープを思い浮かべて、思わず口元がだらしなくにやける。

「だめ、だめ」

大きく頭を横に振って、再び足を進める。


彼女にはお気に入りの場所があった。

女神の加護があるといわれる聖なる泉のほとりにある、大きな大木。

森のかなり奥に存在するため、村人たちは寄り付きもしない場所。

その場所で今は遠い場所になったふるさとへ思いを寄せるのが、彼女の日課だった。

そう、大木の根元で、あのもふもふの動物のように寝そべって・・・

「もふもふ・・・え?」

少女の瞳は極限まで見開かれた。

いつもの彼女の定位置にいるのは・・・

「と、とら??」

大きさは少女の二周りはあろうか。

まるで月明かりを受けたかのような、銀色の毛並みが風に揺られて、光を反射する。

吸い込まれるように、少女は足を進めた。

銀色の獣は交差した前足にあごを乗せたまま、目を閉じている。

彼女の動きに合わせて、耳がぴくぴくと動いてるのが、唯一生きていることを感じさせる。


あと少し。

手を伸ばせば、鼻先に触れることができる。

そんな距離まで少女が近づいたとき、銀の獣はゆっくりとまぶたを上げた。

銀色のまつげの下より現れたのは、金色の瞳。

その瞳には凶暴さはなく、理知の光が湛えられていた。

目をそらすことはできなかった。

怯えのせいではない。

その瞳のあまりの美しさに、そして、寂しさに少女は魅入られてしまった。

「触ってもいい?」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。

銀の獣が人間の言葉を解することを疑う様子もなく。

少女の言葉を理解したのか、銀の獣はゆっくりと目蓋を下ろす。

まるで、好きにしろとでも言うように。


華奢な右手がゆっくりと毛並みに沿って頭から首へと下ろされていく。

何度、行き来しただろうか。

「うーっ・・・」

突然、奇声を発したかと思うと、少女は勢いよく獣の首元にかじりついた。

「気持ちいい!かわいい!もって帰りたい!!」

首元に頬ずりしながら、早口にまくし立てる。

その勢いに押されたのか、うっそりと獣は顔を上げた。

「ごめんなさい!」

と、謝罪しながらも獣の首から両手を放さなかった。

「おとなしくするから、もう少しここにいて」

太陽の香りがする銀糸のような毛質を確かめるように、頬ずりを続ける。

「気持ちいい・・」

少女の行為に獣ものどを鳴らす。

「気持ちいい?」

首に回していた腕を解くと、猫を喜ばすように、のど元をなで上げる。

「どこから来たの?一人?」

気持ちよいのか、目を細めて、もっとなでろとのどを少女に突き出す。

「わたし、大村美月おおむらみづきって言うの。美月よ」

美月は気持ちよさそうな銀の獣へ自分の名前を告げた。

「珍しい名前でしょう。まるであなたみたいな銀色の美しい月が浮かんだ夜に生まれたの。だから美月・・・」

なでる手を止め、美月は宙に視線を向けた。

ここにない遠くを見つめて。

「グルル・・・」

 手元が留守になった美月を呼び戻すように、低音が響き渡る。

「あ、ごめんなさい。せっかく触らせてもらっているのにね」

満面の笑みを浮かべると、美月は銀の獣を触りまくることに精を出しはじめた。






主人公の名前がやっと最後に・・・すみません(汗)

勢いでやってしまった感満載です。

誤字脱字が合った場合はやさしくご指摘ください(笑)けっこう小心者なので。

しばらくはもふもふフェチの独壇場になる予定です。

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