出会い
社怪人様、トリアグル様のアイディアを使用させていただきました。
ご意見(?)ありがとうございました。
ご意見、感想等これからもよろしくお願いします。
今話は短めですが、明日から一週間程更新が困難なため投下しました。
新章のプロローグとでも思っていただければと思います。
突然の光に包まれた俺が次に見た光景は、久しぶりの人間だった。
銀色の長い髪を揺らし、紫色の瞳をこちらに向ける若い娘。
かなりの美人で目の保養に良さそうだが、その表情はあまり好意的とは言えないだろう。
…いや、現在の俺は箱に擬態中であり、ただの箱に好意的に微笑みかけるのもどうかと思うが。
目の前の美人さんを一通り観察した俺は、周囲の把握に移る。
木造のログハウスみたいな小屋のようだ。
近くに暖炉があって、パチパチと心地よい音を立てながら炎が踊っている。
調度品はあまり置いていないようだ。
目に入るのは簡素な椅子と机のみで、大量の書籍か資料らしき紙片が纏められていた。
床は……
よくわからん模様が一面に描かれている。
複雑怪奇な模様は、俺の足元…いや、ミミックの俺に足なんて無いけど比喩表現的な意味で…と、目の前の娘の立つ足元を中心に広がっているような気がする。
だから何だと言われたらそれだけだが。
ふむ、考察の結果を纏めるとだ。
…何この状況?
「…そんな………」
突然娘が独り言を呟いた。
なんね?
「失敗…?詠唱を間違えた?陣に狂いがあった?……いや、詠唱は完璧だったし、陣の狂い程度ではそこまで影響は出ないはず…」
無視すんなや。
「…へ?」
ん?
「箱が喋った?…ふぅ、疲れが溜まってきたかな。」
ただの箱じゃないぞー
状況がわからないなりに触手をフリフリして自己アピール。
「また?…え、本当に喋って…?」
え?聞こえてんの?
「聞こえてるって……聞こえてる、けど。」
ヒャッホーイ!
「!?」
ようやく話が通じる相手を見つけたようだ。
相変わらず俺こと箱からは一切音が出ていないことから念話とかそんな感じだと思われるが、そんなの関係ねぇ!今度は意識して言葉を送ってみる。
-どーも、ミミックです。よろしく~-
「!?…あ、えっとナスターシャ・セインです。よろしくお願いします?」
-はいよろしく。んで?現状を説明してくれると助かるんだけどな?-
「あ、はい!わかりました!」
そして、長い長い説明が始まった。
/////
-え~、つまり話をまとめると……すんごい強いモンスターが君と親しい村のそばに住み着いて?
村人が束になってもかなわないし、君にも倒せない、外部の助けも期待できず、最終手段として強そうな何かを召喚しようとしたら箱がでてきてまぁびっくり。これがホントのビックリ箱…ってごめんごめん、そんなに睨まんといて~-
「…私にとっては生死を賭けた真面目な話なんです。」
-う~ん…俺はミミックにしてはそこそこ強い方だと自負しているが、俺では力になれんかね?-
一応、協力を申し出るがナスターシャは申し訳なさそうに笑った。
「貴方の気持ちはありがたいですが…ミミックといえばランクDのモンスター。残念ながら奴にはとても……」
-そうかい。ってかDランクなのか、俺。ちなみに敵さんはどんな感じなのさ?-
「……Aランクの強敵です。」
俺より3個も上のランクかよ。…そもそもランクって何さ?
よし、聞いてみよ。
「あ、ランクっていうのは冒険者ギルドが発表しているモンスターの強さ、厄介さの格付けです。……奴、ホワイト・レッサードラゴンは上から2番目のAランクに当たります。」
あれ?
-待て待て、ホワイト・レッサードラゴンって言ったか?-
「…ええ、白い鱗を纏ったドラゴンです。レッサードラゴンは純粋なドラゴンにこそ劣りますが、それでも竜の眷族。…生半可な相手では無いですから。」
あの白蛇がそんなに高い位なのか。
-それなら力になれると思うんだが…-
「え?いや、無理していただかなくても…」
-無理……いや、召喚される前の俺の主食ってホワイト・レッサードラゴンだったんだけど-
「は?」
-うん。-
「え?ミミックですよね?」
-そうだぞ。正確にはミミックロードだけど-
「だって、まさか…」
-とりあえず連れて行ってくれないか?別に君にも損は無いだろ?-
「それは…そうですが。」
戸惑った顔で認める彼女。
-はい決定。それじゃあ運搬頼む。-
「わ、わかりまし…運搬?」
…未だに足は遅いんだよなぁ。
「…そういえば貴方もミミック、モンスターでしたね。」
-?今さら?-
「いえ、普通に会話していたけどよく考えたら凄い事なんじゃないかと。」
-そこはほら、君が召喚したからとか?-
「普通のミミックにはそもそも会話が成立するほどの知能はありませんよ……」