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二〇〇九年 一〇月一七日 2

 

『市立スポーツ文化ホール』には、多くの人の姿があった。

 そのほとんどが学生だ。

 ここで行われる大会に出場する各校のバスケ部員。それぞれの学校を応援するために来た生徒たち。それらの人に混じるように悠生と真希、葵の三人は二階の観客席に座っている。

「結構人がいるんだね」

「そうだな。意外」

「あ、うちの高校だ!」

市立基橋(もとはし)高校』の文字が入ったジャージを着ている集団がちらっと見えた。あの中に拓矢もいるのだろうが、二階からでは遠くて見分けがつかなかった。基橋高校のバスケ部員だけで二〇人近くいる。さらに、他校のバスケ部員も数多くいるのだ。遠目でははっきりと分からないのも無理なかった。

「試合は何時から?」

 ふと気になった悠生が()いた。

「え~と……、昼の一時?」

「なんだ、まだ時間あるじゃん」

 現在の時刻は一二時を少し回ったところだ。詳しい試合時間を把握していなかったため、早めに到着してしまったようだ。クォーター毎に時間が決まっているため、大きく試合開始時間が変更することはないだろう。

「どっか昼飯食べにいかない?」

「え?」

「三〇分くらい離れてても大丈夫でしょ」

 悠生たちが集合した時間は一一時だった。それよりも早く家を出た悠生は当然お昼ご飯など口にしていない。すでに我慢の限界は超えていたのだ。

 すると。

 真希が「ふっふ~ん」と何やらニヤついた顔をした。

「そう思って、お弁当を作ってきたの!」

 ジャーン、と真希は大きな鞄からお手製の弁当を取り出した。

「え、本当に作ってきたの!?」

 と、驚いているのは葵だ。二人で打ち合わせでもしていたのだろうか。実際に持ってきたのは真希だけという事は、冗談半分の話だったようだが。

「当然」

 鼻高々な真希を見て、

(やけに大きな鞄だなって思ったら、そういうことか)

 と、悠生は一人別のことに納得していた。

「試合見ながら食べることになるのかなって思ったからさ。バスケの時間って長いんでしょ?」

「野球とかよりは短いけどな」

「え、そうなの?」

「そうだよ」

 スポーツについてそれほど詳しいわけではない真希は、バスケも野球と同じく二、三時間も試合を行うものだと考えていたようだ。けれど、その真希のおかげで弁当を食べることが出来た事も事実である。

「ま、ありがたいけど」

 そう言って、悠生は真希が用意していた弁当に箸を伸ばす。

「……素直に喜べばいいのに」

 ぼそっと呟いた葵の声は悠生には届かない。



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