お願い
天狗が息を呑んだ。
「大天狗さま! うーむ……! 確かに、こういった難問には、大天狗さまの裁定が必要かもしれんな!」
時太郎が興味津々で訊ねる。
「大天狗さまって?」
「我ら天狗一族の長である。なにしろ、百年以上も生きておられ、我らを常に導いて下さる、偉い天狗さまなのだ!」
時太郎は、河童淵の長老さまのようなものかと理解した。それなら判る。
天狗は翔一に話しかけた。
「翔一! お前、大天狗さまのご予定は判るか? 今週の行動予定は記憶装置に入っているはずだな?」
「少々お待ちを」と返事をすると、翔一は再び文字打出鍵盤に向かい合った。素早く打鍵を打つと、すぐに紙が吐き出される。
眼鏡を直して、翔一は紙片の文面を読んで、振り返った。
「大天狗さまは今日一日、天儀台におられるようです」
「天儀台か……よし、二人とも、わしに従いてまいれ!」
背中を見せる天狗に向かって、翔一は慌てて声を掛けた。
「あのう……わたしも一緒に連れて行ってくださいませんか?」
「ん?」と天狗は翔一を見て、怪訝そうに眉を上げた。
「なぜじゃ? おぬし、大天狗さまに何か用があるのか?」
翔一は顔を俯け、もじもじとしている。
「はい……ちょっとお願いしたいことがありますので……」
「ふうん」と天狗は頷く。
「まあ、いいだろう、しかし、あまりしゃしゃり出るでないぞ! 判っておるな?」
翔一は頭を下げた。
天狗は時太郎とお花に命令した。
「さあ、行くぞ! 従いてこい!」




