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疑惑

「なるほど……確かに十数年前、三郎太という河童が訪ねてきているな。その河童が、お前の父親だと申すのか?」

「そうだ!」と時太郎は胸を張った。

 天狗は質問を重ねた。


「で、母親は?」

「人間だ。京の信太従三位の娘、時子っていうんだ」

「人間の女?」


 天狗は素っ頓狂な大声を上げた。


「お前は、ひょっとして、人間の女と河童の男の間に生まれた、とでも主張するのか?」

 時太郎が頷くと、天狗はいきなり笑い出した。


 さすがに時太郎は、むっとなった。


「何が可笑しい?」

「馬鹿なことを……人間と河童の間に子供が生まれるなど……金輪際ありえぬ!」

「なんでだ? おれは現に、ここにいるぞ!」

 天狗は哀れむような目付きになった。


「あまりに種が違いすぎる。人間と河童は似てはいるが、まったく違う種なのだ。犬と猫の間に子供が生まれないのと同じだ。お前は騙されているのだ」

「そんな……」と、時太郎は声も無く口を動かしていた。天狗の言葉は、時太郎の足下を突き崩すものだった。

「間違いない。お前の父親は人間だ。おそらく、三郎太という河童は、お前を自分の子供として育てたのだろうが、産みの親ということは断固ありえぬな。他に人間の男で、お前の父親となりうる人物に心当たりはないのか?」


 源二、という名前が時太郎の心に浮かんだ。


 三郎太が言っていた、最後まで自分と母親の時姫を守って死んだと言う男の名前である。

 しかし、そんな、まさか……。


 おれの父親は……三郎太ではないのか?

 時太郎は茫然と虚脱し、立ち尽くしていた。

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