海人、一歳児検診へ行く 鳥は飛ぶけど、魔物も飛ぶんだね
一歳児検診後に立ち寄ったショッピングセンターでの買い物を終えて
俺たちは再びタクシーに乗り込んだ。
ベビーシートに俺を座らせ、隣には母が座り、助手席には戦闘支援型家事ユニット=メイドロボのマリがいる。
買い物袋はトランクへ。
今日の買い物は備蓄用の食料と日用品、そしてご褒美のベビークッキー。
「カイくん、よく頑張ったもんね。オヤツ楽しみだね♪」
母がほっぺをつついてくる。
うん、俺にとってもこれはちょっと楽しみだ。
だって、
(前世、クッキーを食べたのって何年も前だし……)
ベビークッキーは甘さ控えめだが、それでも数少ない楽しみなんだ。
そんな俺の思いとは関係なく、車はモールの駐車場を静かに後にした。
タクシーは市街地を抜けて、静かな並木道に差し掛かった。
「……あら?」
母が窓の外を指さした。
「カルガモ……?」
前方の道路を、小さいな鳥の親子が横切っていた。
母鳥の後ろを、雛がヨチヨチと付いていく。
「かわいい!」
母がうっとりとつぶやき、車は静かに停止した。
早乙女さんがほほ笑みながら言う。
「申し訳ありません。
鳥が渡り終えるまで、少々お待ちください。」
その優しい口調に、母も微笑み返す。
「もちろんです。ふふ……かわいいですよね。」
本当に可愛いですね、と母と早乙女さんが鳥の親子を見つめながら言う。
絵本の挿絵の様なのどかな風景だ。
やがてカルガモ親子が反対側の歩道へと渡り終えた。
「それでは、発車しまーーー」
運転手が言いかけたその瞬間、すっと
その目が鋭くなった。
片手でダッシュボードの横にあるボタンを押し、もう片方でレバーを操作。
車体の天面からレーザービームの方な攻撃が放たれた。
ビッーーー!
光線が一直線に空へと走り「何か」を打ち落とす。
「危険は排除しました。
飛行型の小型魔物です。見つけ次第、即時撃墜が基本ですので」
早乙女さんが冷静に告げる。
「すごい……!ぜんぜん気が付きませんでした」
母が驚きの声を上げる。
「このタイプは速度が速いので、発見から衝突までの時間が非常に短いんです。
一級免許保持者は、車輛の武装を生かして、このタイプが攻撃範囲に入ったら即時撃墜することになっています」
「小学校でも習いますもんね。飛行魔物は動くものに反応するって。
あと、野生動物より人間を狙うって」
「ええ。ですから車は狙われやすいんですよ。
動くものを狙う習性があるので、なるべく静止して対応するのが基本です」
(”対魔タクシー”ってそういう事?魔物とたたかっちゃうの?タクシー運転手が?
小学校で魔物対策習うって、どんな世界だよーーー!!!)
……俺の中の常識がまた一つ砕け散った……
母がふと助手席のマリに視線を向ける。
「マリ、反応しなかったね?」
「はい。周囲の結界と、運転手様の迅速な対応により、
私が出動する必要は無いと判断いたしました。」
「うんうん、的確な判断で助かるわ。ありがとうね」
「いえ。ご家族の安全が最優先です。
常に状況を把握しています」
マリは丁寧な口調で答えた。
タクシーは再度動き出し、やがて我が家の前に到着した。
「本日はご利用ありがとうございました。
お荷物お持ちしましょうか?」
「いえ、マリがいるので大丈夫です。ありがとうございました。」
母が会釈し、早乙女さん微笑む。
「それではまたの機会にどうぞ。それでは失礼します。」
そういって車は静かに去って行った。
「マリ、お願いね」
「かしこまりました」
マリは重い荷物を軽々と抱え、玄関へと歩いていく。
玄関の前には、ペット型迎撃機能付きロボットが鎮座していた。
(この世界、やっぱやばくね?)
俺は母の腕に抱かれながら、静かに心の中でつっこんだ。




