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紅腕の白魔女  作者:
9/9

ep.9 俺は隠れない

小刻みな振動と、一定のリズムで大きく体は揺れる。

ゆっくりと意識を取り戻していく中、エンジンの轟音を徐々に認識し始める。


スカーウ「...っう。」

アーサー「起きたか。」

ギャラハッド「良かったぁ!!」

スカーウ「すまない。俺とした事が...。」

アーサー「いや、未知の敵相手によく時間を稼いだ。それにお前は多くの仲間を助けた。悪いことなんて1つもねぇよ。」


スカーウが飛行機の中をぐるりと見回すと、出発時には息苦しいほど居た軍人の姿が4人しかいない。


ギャラハッド「私が降下した時には...もう...。」

スカーウ「予想以上に魔獣が多かった...。アレと出くわす前に、撤退に徹するべきだった。」

アーサー「俺の指示が間違っていた。」

スカーウ「いや...それで良かった。」

???「んだとっ!!」


ガッ!


話を聞いていた隣の軍人がスカーウの胸ぐらを掴んだ。


スカーウ「アーサーの指示は間違っていなかった。撤回するつもりは無い。」

???「だからって、俺の仲間が死んで良かったってのか?!」

スカーウ「仲間の死を肯定するとでも思っているのか?あの時俺達がアレと戦わなきゃ、俺達は永遠に敵の全貌を知ることは出来なかった。」

???「は?」

スカーウ「俺達は今まで通り、湧いて出てくるだけの魔獣を相手にして、今まで通りこれからも限られた繁栄を繋いでいくのか?」

???「...俺の仲間は...!」

スカーウ「お前の仲間を生かすために二の足を踏むつもりは無い。」

???「...。」

スカーウ「これではっきりした。俺達が相手をしている魔獣には指揮を執る存在がいる。その存在は魔法を使い、巨大な卵を運んでいた。この情報は大きな戦力となり得る。」

???「てめぇ...!」


軍人がスカーウに殴りかかろうとした時、スカーウは左腕で顔を隠そうとしたが、もうその腕は無い。


???「...?!」

スカーウ「殴らないのか?俺の腕など、失った仲間と比べれば安い物だろ。」

???「...すまなかった。」

スカーウ「...こちらも悪かった。少し焦っていたんだ。」

アーサー「話は済んだか?」

スカーウ「あぁ。」

アーサー「んじゃ、現状を整理するぞ。現在我々はサテライトに帰還中であり、今回の任務はもちろん失敗だ。原因としては突如現れた魔獣の群れとの接敵だ。異論は無いな?」

???「あぁ。」

スカーウ「続けろ。」

アーサー「俺はサテライトに到着次第、調査報告を本部に届ける必要があるんだが、そこで、第2機導軍には全滅した、という事にして欲しい。」

???「はぁ?!」

アーサー「そこの隅で話を聞いてるお前らは?」


1人は寝ているが、もう2人はボーッとして話を聞いていない。


アーサー「まぁ、仕方ねぇか。」

???「なんで全滅した事に?」

アーサー「いや、これは勘だ。」

スカーウ「何のだ?」

アーサー「嫌な予感がしているらしい。」

スカーウ「お前じゃなくてか?」

アーサー「あぁ。エクスカリバーがな。それで、第2機導軍にはしばらくその身を隠して欲しい。」

???「隠すったって、その後は?」

アーサー「事が終わるまで待っててくれ。」

スカーウ「読みを教えろ。」

アーサー「恐らく、サテライト内部に魔人がいる。」

スカーウ「あの男の仲間...か。」

アーサー「じゃねぇとあの卵の説明が付かねぇからな。」

???「サテライトの中に魔人なんて居ねぇに決まってんだろ?」

アーサー「はぁ...。」

???「んだよそのため息は?!」

アーサー「考えてみろ。卵の出現方向はサテライト側だし、最初の魔獣の反応だってデマだった。」

スカーウ「何者かがレーダーに細工したんだろう。」

アーサー「レーダーをイジって盤面を撹乱、そこに魔人を使って殲滅、元々第2機導軍を始末する為の作戦だったんだよ。」

???「いや、でも、何のために?」

アーサー「...シュラソーだ。」

スカーウ「何故シュラソーが?」

アーサー「シュラソーを殺せば第2機導軍の頭が消える。そうなれば、必然的に俺が代役になるしかない。俺は国の為に軍で戦うような性格じゃねぇからな。代わりにシュラソーがやってくれてんだよ。」

スカーウ「なら、奴らの目的は第2特殊の解体か。」

アーサー「そういうこった。国は直接俺達に解体を指示できない。代わりに第2機導軍の隊長として俺を使えば、第2特殊の隊長は消えて、間接的に潰せる。よく考えた手だぜ。」

???「そんな事の為に...!!」

アーサー「どうした?」

???「そんな身内争いの為に、俺の仲間は死んだのか?!お前が!さっさと第2特殊なんて潰していれば!!俺の仲間が死ぬ事は無かったんだろ?!」

アーサー「そうだ。」

???「てめぇッ!!」

アーサー「でもな、俺達が居なければ、人類はすぐに滅ぶ。」

???「は?」

アーサー「いい加減気付いたらどうだ。なぜサテライトに潜む魔人がそんなに回りくどいことをしてまで第2特殊を消そうとするのか。魔人にとっての脅威が俺達だからだ。俺達さえ消してしまえば、魔人はすぐにでもサテライトを壊滅させられる。それに、ここまで軍政を動かせる程内部に魔人が入り込んでいるのに、未だに軍の為と命を投げ出すのか?」

???「うっ...。」

アーサー「まぁいい。俺達に従うも従わないもお前の自由だ。第2機導軍は壊滅状態、俺達に着いてきてもこなくても、解体は不可避だ。」

???「...ない。」

スカーウ「?」

???「いらない!俺は隠れない!俺を第2特殊に入れろ!」

アーサー「そうか...。そうだ...名前を聞いてなかったな。」

アモ「アモだ!」

アーサー「よろしくな、アモ。他の奴らは...」

アーサーは他の第2機導軍に目をやったが、俯きながらブツブツ言っていたり、辞表を書いている者もいた。

アーサー「はぁ...。まずは、シュラソーに報告しねぇとな。」

スカーウ「...。」


静まった機内に突如通信の無線が入る。


ギャラハッド「アーサー!サテライトから無線だよ〜!」

アーサー「機内スピーカーに繋げ。」

ギャラハッド「了解〜!」

ラモラック『ザザッーこちらラモラック。調査任務の結果はどうだ?』

アーサー「作戦は...失敗だ。」

『お前が居たのに失敗?』

アーサー「詳しく話すよ。」


アーサーはサテライト外で起きた事を全て詳しく話し、サテライト内部に魔人がいる可能性、国の上層部が信用出来ない事、第2機導軍は全滅した事にする案を伝えた。


ラモラック『どうして第2機導軍の全滅を偽装する必要が?』

アーサー「別に。ただこのまま帰ってもまた今回みたいに目的の為に利用されて捨てられるのが気に食わねぇだけだ。」

ラモラック『それで、第2特殊に所属させれば今回のような上層部の陰謀の被害にはあわないと。』

アーサー「そういう事だ。」

ラモラック『して、どこに匿うつもりだい?』

アーサー「...。」

ラモラック『アーサー?』

アーサー「第2特殊の兵舎で匿う。」

ラモラック『そうか。上には調査は失敗、事の経緯と第2機導軍の全滅を報告する。シュラソーには後でアーサーから直接話を聞くように言っておく。気を付けて帰投しろ。』

アーサー「ありがとう。」


ブツッと無線は音を立てて切れた。


アーサー「よし、暫くは別行動だ!」


























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