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紅腕の白魔女  作者:
5/10

ep.5 夜の支配者

ーサテライト 巨城にてー


アーサー「もう外は暗いね。」

スカーウ「これは冷えるぞ。」

ギャラハッド「遅いよ〜!」

トリスタン「先程の試合、見事でしたよ。まさか本当にあそこまで魔法が使えるとはね。おっと、話を戻そうか。今回の任務はサテライト防衛軍からの任務です。東サテライト上空に舞う魔獣の討伐です。」

スカーウ「空を飛ぶ魔獣か?」

アーサー「見当はつくのか?」

スカーウ「飛ぶ魔獣もかなりの種類がいる。見てみないと分からない。」

ギャラハッド「今回も私が操縦か〜、戦闘には参加できそうにないね。残念〜。」

トリスタン「操縦も立派な任務だよ。」

スカーウ「本当にこんな時間に行くのか?」

アーサー「上空ならある程度の月明かりも期待できる。何とかなるだろ。」

スカーウ「お前なぁ、さっきの試合の時といい、後先考えずに行動するのをやめないか?」

アーサー「俺はみんなを信じてるぜ。」

スカーウ「...。」

トリスタン「言っても聞かないよ。」

ギャラハッド「そういうことだから、ほら乗った乗った!」

スカーウ「ギャラハッドのテンションには着いていけない。」


巨城内にある大きなガレージルームにある巨大な布の風船に繋がれた船に4人は乗り込む。

それはまるで飛行船だ。


4人が乗り込むと、ゴウンゴウンと床が上昇した。


スカーウ「サテライトの中を通って行けないのか?」

アーサー「サテライト内は基本的に飛行禁止だぜ。」

トリスタン「サテライトの天井パネルは高価かつ精密だから、事故の可能性のある飛行は禁止だよ。」


飛行船は遂に上空に出た。

周りは辺り一面サテライトの天井だ。

下に広がる真っ白い巨大なドームに月明かりに映し出された雲の影がゆっくり移動している。


スカーウ「どうして天井の上に雪が積もらないんだ?」

トリスタン「サテライトの天井パネルは4層になってるんだ。1番外側から、天井を守る防護パネル、積もる雪を溶かして内側の環境を温めるヒーターパネル、内側に天井を表示する液晶パネル、そして内側から天井を劣化から守る防護ガラスパネルだよ。」

スカーウ「飛行が禁止される理由がよく分かったよ。」

アーサー「ある程度の強度はあるけど、軽量化にこだわりすぎて魔獣からの攻撃となれば軍が動く必要があるんだよ。」

スカーウ「そもそも...」


アーサーがスカーウの口に指を当てる。


アーサー「接敵準備。」

トリスタン「照射!」

ギャラハッド「あい!」


合図と共にギャラハッドが周囲を照らすとそこには大きなワイバーンのような魔獣が3匹、飛行船の周りを旋回するように飛んでいた。


アーサー「ここまで近付かれるまで気付かなかった...!!」

スカーウ「あれはゴーストワイバーンだ。」

トリスタン「情報データベースにも載っていないよ?!」

スカーウ「サテライト外で稀に見るワイバーン種だ。その翼には細かい穴がいくつも開いていて、音もなく空から近づく。非常に獰猛で一度見つかると永遠に追ってくる。」

トリスタン「どうしてそんなに詳しいの...?こんなにも情報が無いのに...?」

スカーウ「ゴーストワイバーンに見つかった人間は生きては帰れない。それにコイツらは人目につかない夜に活動する。だからサテライト内には情報が無いんだろう。サテライト外ではこう呼ばれている。【夜の支配者】と。」

アーサー「来るぞ!!」


三体が同時に飛行船に突撃してきたがギャラハッドがタイミングよく船体を傾け2体は空ぶった。飛行船にしがみついてきた一体の背中にアーサーが飛び乗り、そのまま別の一体に飛び移った。

背中に剣を突き立てるが、固い鱗に弾かれた。

ゴーストワイバーンは体を激しく揺さぶりアーサーを振り下ろそうとした。


スカーウ「アーサー!」


スカーウは氷の塊を魔法で作りアーサーに向かって発射した。

アーサーは発射された氷の塊の上でワンステップ踏み飛行船に後退した。


ギャラハッド「無茶しないの!」

アーサー「一体を足止めできるか?」

ギャラハッド「出来るわけないじゃん!」

トリスタン「バリスタはどうでしょう?」

ギャラハッド「それだっ!」


ギャラハッドがガチャガチャとレバーをいくつかいじると船底の側面からバリスタが3つガコンッと出現した。


ギャラハッド「行くよ!」


ドドシュッ!!


発射されたバリスタは2本外れたが1本がゴーストワイバーンの羽に突き刺さった。バリスタに繋がれたワイヤーが船体とワイバーンを繋ぎ相手の移動を著しく制限した。


アーサー「よくやった!行くぞトリスタン!」

トリスタン「降りるのは気乗りしないね!」


アーサーはワイヤーの上を滑るようにワイバーンに向かい、トリスタンは持ち手の長いハンマーのような武器を引っ掛け滑り降りた。

アーサーは着くやすぐに剣をまっすぐゴーストワイバーンの首に突き立てた。


アーサー「トリスタン!」

トリスタン「【弾丸槌】ドーンスマッシュ!!」


トリスタンがハンマーを構えると、打ち付ける側とは反対の方から小規模な爆発を起こし、振るうハンマーを瞬間的に加速させた。


カーーンッ!!


ハンマーはアーサーの剣を釘打ちの容量で打ち付け、アーサーの剣を弾いたその首に突き刺した。


ギシャァアアアッ!!


スカーウ「ダメ押しだ。」


スカーウは魔力の伝導率の高いアーサーの剣に触れ、ゴーストワイバーンの首の内部にとてつもない圧力の全力の炎をお見舞した。

ゴーストワイバーンは首の内部から爆発したように、鱗や皮膚から炎をブシュッと吹き出した。

飛ぶ力を失ったようで、体がグラッと傾き下に落ちる。


スカーウ「戻るぞ!」

アーサー「いや、捕まれ!」

トリスタン「これが僕の全力、【弾丸槌 散弾】ブラストスマッシュ!」


先程のようにハンマーを振るうが、先程とは爆発の規模が違う。ハンマーに打たれたゴーストワイバーンの死骸はワイヤーに引っ張られ、振り子のようにぐるりと飛行船の下を通り空高く持ち上げられると甲板に打ち上げられた。


ドシィインッ!


アーサー「いってぇっ!」

スカーウ「凄まじい威力だ...。」

トリスタン「テイルバレルが爆発する恐れがあるのでしばらく使えませんが...。」


怒ったゴーストワイバーンの一体が飛行船に突撃してきた。

しかし今までの攻撃とは違い明らかに操縦席を狙っていた。


スカーウ「まずいっ!!」


ガギィィッ!!


左腕でゴーストワイバーンの体を抑え込む。


スカーウ「ぐっ!!」


スカーウがゴーストワイバーンの体を抑え込んでるその時、もう一体が、突撃してきたゴーストワイバーン諸共、スカーウに横から突撃してき、スカーウを飛行船から叩き落とした。


スカーウ(植物魔法、この距離は届かない!巨大な爆煙で設置の瞬間に衝撃をかき消すか、いや博打過ぎる。これは、まずいな...。)

アーサー「スカーウ!!」

???「私が行きます!!」


突如女性の声が空に響き渡ると共に、ゴーストワイバーンに似た巨大な鳥?に乗った女性がスカーウ目掛けて急降下して行った。

スカーウがサテライトのドームに直撃する直前に鳥の背中に乗せ、飛行船に舞い戻る。


アーサー「戻ってたのか!織姫!」

織姫「遅くなりました!加勢します!」


織姫と呼ばれる女性は胸元から1枚紙切れを取り出すと表面をペロッと舐め、こう囁いた。


織姫「タニオリ、お願い出来る?」


すると紙切れはパタパタと畳まれ紙飛行機になるとアーサーの元に飛んで行った。


織姫「ヤマオリ、私とこの子を飛行船へ!タニオリ!命令よ!周囲の魔物を全て死滅させるまでアーサーの周囲を旋回!支援は半径20mの人間の重力を免除!対価は私の行動の一切を制限!」


タニオリと呼ばれた紙飛行機は今度は星型に畳まれアーサーの周囲を周回し始め、アーサーはふわりと浮き始めた。

そしてヤマオリと呼ばれた大きな鳥はスカーウと織姫を飛行船に下ろすと小さな折り鶴に形を変え織姫の肩に止まった。


織姫「アーサー!」

アーサー「あぁ、助かる!」


アーサーは再び剣を引き抜くとグッと握りしめ、ゴーストワイバーンに向かって構えた。


アーサー「いつまで寝てんだよ。さっさと起きろ...【聖剣】エクスカリバーッ!!」


グッと両手で握りしめると、ハーツとは違う何かがアーサーを包み込み、刃はチリチリと殺意を見えるように見せ始めた。


アーサーの扱う武器、【聖剣】エクスカリバーはアーサー本人が発動を認識している間のみ、アーサー本人に筋力増強、魔法耐性、超感覚を付与する。


ふわりと甲板を足先で小突くと、アーサーはゴーストワイバーンの背後に高速で移動した。

そのまま片翼を切り落とし、ストンッと剣を軽く突くだけでゴーストワイバーンの心臓を突き抜いた。

くるりと回転しゴーストワイバーンを飛行船に打ち付けた。


アーサー「まず一体っ!」


すぐに飛行船よりも下にぐるっと移動し聖剣を両手で握りしめ、ゴーストワイバーンに向けた。


アーサー「【円卓ニ王冠ヲ】crown on the roundッ!!!」


剣に集まった光は光線のように射出され、それはゴーストワイバーンを撃ち抜くと、跡形もなく消し去った。それはゴーストワイバーンに最後の咆哮もさせる間もなく。


スカーウ「やはり...。」


フワッとアーサーは飛行船に戻って来た。

戻ると同時にタニオリはパタパタと紙切れに戻ると織姫の手元に戻って来た。


織姫「ありがとうタニオリ。お疲れ様。」

アーサー「助かったぜ。織姫。」

織姫「いいのよ。それよりこの子は?」

アーサー「あぁ、コイツは...」

スカーウ「スカーウだ。」

織姫「スカーウちゃんね。よろしく!私は織姫、この子は式紙のヤマオリで、さっきアーサーの近くにいた子がタニオリよ。」

スカーウ「式紙?」

織姫「この子達は紙を媒体として私の魔力で生きてるの。私の言う事はなんでも聞いてくれるの。」

スカーウ「魔法、とは少し違うな。」

織姫「魔法より術に近いかな?東の国出身だし。」

アーサー「織姫は第47サテライトから来た第2特殊機導隊のメンバーだ。」

織姫「そこも真っ白だったけどね。」

アーサー「そうだ、戻ってきたって事は?」

織姫「えぇ。収穫よ。何も無かったわ。」

スカーウ「収穫なのに何も無かった?」

トリスタン「予想通りでしたね。」

アーサー「スカーウに初めて会う前に織姫にサテライト外北部のとある集落に行ってもらってたんだ。」

織姫「ある集落が魔獣に襲われたって救難信号が来てね、救助と調査だよ。」

アーサー「詳しく教えてくれ。」

織姫「着いた時には村は壊滅していたの。村人は1人もいなかった。魔獣も。」

トリスタン「魔獣が荒らし去った可能性は?」

織姫「その可能性は無いわ。明らかに魔獣の血等の争った痕跡があったわ。でも肉片のひとつも無かったの。まるで誰かが回収したようだったわ。」

スカーウ「回収?」

アーサー「【魔導師のアトリエ】...か。」

スカーウ「8年前...私の腕を持って行った男も魔導師のアトリエを名乗っていた。」

アーサー「8年前...!」

スカーウ「俺が地下で労働を始める前だ。祖父とサテライト外で魔獣を狩って生計を立てていた。祖父はその男達に殺された。その時に腕も落とされた。気が付いた時には炭鉱に居て、落とされた腕には祖父の義手が付いていた。」

トリスタン「それがその機導かい?」

スカーウ「あぁ。お前達のような特殊な機能は無いが、硬い腕みたいな物だ。」

アーサー「どうして殺さず腕だけ?」

スカーウ「分からない。でも奴らはサンプルと呼んでいた。」

織姫「決まりね。魔導師のアトリエは魔獣や魔人の遺体を集めている。」

トリスタン「一体なんのために...。」

スカーウ「恐らくだが、奴らは魔力に耐性のある生物の肉にしか興味が無いのだと思う。」

アーサー「どういう事だ?」

スカーウ「私は魔力汚染の強いサテライト外で生活していたが魔人にはならなかった。それに魔獣や魔人の血肉は魔力の1部のような物だ。魔力を動力としている。目的は分からないが、魔力そのものではなく魔力に体制がある事に意味があるのだろう。」

アーサー「よし...一旦考えるのは辞めよう。」

スカーウ「投げやりか?」

アーサー「考えても仕方ない事は考えるだけ無駄だろ。それに、いつまでたっても出発命令が出なくてギャラハッドがイライラし始めるしな。」

ギャラハッド「イライラなんかしてないよ!いつ帰るの?!」

トリスタン「なんだろう...言動と感情が一致していないね?」

織姫「そんな事より、アーサー!この子の服装何?!」


織姫は怒鳴りながらスカーウを指さす。


アーサー「何っつったって...。」

織姫「うちの隊に入隊した子でしょ?!なんでボロボロの服着させてるの!」


スカーウの着ている服は、服と呼ぶには大変お粗末で、ほぼボロ雑巾のような物だ。


アーサー「着、着替えさせる暇無かったんだって!」

織姫「言い訳無用!」

スカーウ「い、いや俺は...」

織姫「貴方はいいのよ。私の上着羽織って。トリスタン!私の留守を任せたのはこうならないようよ!あなたが付いててどうしてこうなるの?!」

トリスタン「先程アーサーが言った通り...。」

織姫「帰ったら説教よ!」

スカーウ「俺はこのままでも構わないのだが...。」

ギャラハッド「織姫は自分が納得するまで聞かないよ〜。」


行きよりも騒がしい飛行船はサテライトに向かって舵を切った。




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