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紅腕の白魔女  作者:
4/10

ep.4 見ていてくれ

はじめの合図で先に動いたのはシュラソーだ。


シュラソー「30分も要らねぇよ!!」


シュラソーは巨大な丸い円盤の付いた武器をスカーウに叩きつけた。

スカーウは左腕でガキィンッ!!と受け止めた。


スカーウ「奇妙な武器だな。」

シュラソー「舐めてっと引き裂くぜ!!」


シュラソーの右腕と繋がれたチューブが武器に動力を送ると円盤が回転を始めた。

ガリガリガリガリッと腕を削られ始め、スカーウは後退した。


スカーウ(円盤を回転させて目標を削るように切る武器か、)

シュラソー「コイツの名は【削敵盤スラッシュ・ソー】。タマハガネすらも削り裂くぜ。お前のその腕はどこまで耐えられるかな!!」


ガギィッ!ガガリッ!!


怒涛の攻撃に為す術なく、スカーウの腕は傷だらけだ。


スカーウ(普通の刃物より厄介だな、この場合は、遠距離から...。)


スカーウが距離を取ろうとするが、シュラソーは武器を投げつけ、繋がったチューブを引っ張り武器を手元に戻す。


シュラソー「オラオラオラッ!!」

スカーウ「成程、理解した。全力で戦ってもいいのか?」

アーサー「構わない。」


スカーウが右手を地面にピタッと付けると、シュラソーとスカーウの間に巨大な木の根がバキバキッと生えてきた。


シュラソー「俺には意味ねぇぜ!!」


シュラソーはすぐに木の根をバキバキバキッと削敵盤で粉々にする。

木の根を破壊される度にスカーウは新しい根を生やし続ける。


シュラソー「思ってたよりも手応えねぇなぁ!」


スカーウが地面に手を当てたが、根は生えてこない。


シュラソー(木が生えない、死角からの攻撃か、なら...!)


シュラソーはぐるりと一回転し削敵盤で辺りを攻撃したが、背後からは何も来なかった。


シュラソー(ブラフか...!)


シュラソーの身体がガクンと落ちた。

先程地面に触れた攻撃は、背後からの攻撃ではなく、シュラソーの足を地面に貼り付けるように木の根を生やしていた。


スカーウ「思ってたより、キレのない攻撃だな。」

シュラソー「テメェ、調子乗んなよ!!」


シュラソーはどんどん木の根を破壊する。


スカーウ(そろそろか...。)


スカーウが手を前に突き出した。それを見るとシュラソーはフードを深く被った。


スカーウ「粉塵爆発!!」


ゴオォォォッ!!


巨大な豪炎がガラスを破る勢いで部屋を覆った。

観客席にて試合を見ていた観客も思わずたじろぐ豪炎だ。


スカーウ「終わりか?」

シュラソー「残念だったなぁ〜。その技はもう見てんだよ。」

スカーウ「よく耐えたな。」

シュラソー「この戦闘服はお前の粉塵爆発ぐらいなら耐えるぜ!!」

スカーウ「そうじゃないとつまらないからな。」


スカーウは手を上に広げた。


スカーウ「風魔法で上に渦巻く風の流れを作る、豪炎は風による酸素供給と自らの作る上昇気流で、火力を一気に上げる...火災旋風!!」


広がるように燃えていた炎はシュラソーを中心に細く強い火柱を作った。


シュラソー(ま、マズイ...この火力は、戦闘服でも耐えられねぇ...!!)

スカーウ「参ったと言えば助けてやる。」


火柱から投げ出された武器は横の壁にあるハリボテ建物の配管に突き刺さり、水圧の高い水が吹き出した。

水は瞬く間に火災旋風を鎮火した。


シュラソー「俺は参ったって言っても助けてやんねぇよ!!」


真っ黒になったシュラソーが削敵盤をスカーウに向け突進してきたが、スカーウは指を立ててシュラソーに向けた。


スカーウ「最後に聞いてやる。参ったと言えば助けてやるぞ。」

シュラソー(まさか...!)

スカーウ「電撃魔法。」


バリリリッ!!!


シュラソー「アグッ...!!」


身体が濡れた事により強力な電撃がシュラソーに走る。

たまらず倒れ込み、すかさずアーサーが手を上げる。


アーサー「勝負あり。」

シュラソー「ま、待て!まだ終わってねぇ!」

アーサー「いえ、これ以上は無意味です。」


アーサーの視線の先には水が吹き出す排水管に手を当てるスカーウの姿があった。


アーサー「試合を続けても構いませんが、また電撃を浴びることになります。」

スカーウ「なんなら今やって見せても構わない。」

シュラソー「今試合を止めてみろ...お前らが魔人を飼ってること、軍に密告すんぞ...。」


観客席の軍人や隊員がドヨドヨし始める。

が、それは隊に魔人がいる事ではなく、この状況で負けを認めないシュラソーに動揺している。


アーサー「これ以上はお辞めになられた方が身の為かと...。」

シュラソー「るせぇ!俺に指図すんな!!」


最後の力を振り絞り、無理をして立ち上がると削敵盤でアーサーに斬りかかった。しかし、アーサーの姿はそこにはなく、一瞬で背後に回り込んだアーサーはシュラソーの首を剣の鞘で殴り気絶させた。


アーサー「抜くまでもありませんと言ったでしょう。」

スカーウ「俺の獲物だぞ。」

アーサー「さて、ご覧頂いた通りシュラソー隊長はうちの隊員に敗北しました。よって、これより第2機導軍は我々第2特殊機導隊の指揮下に置く。異論がある者は前へ出よ。」


するとおそらく軍の者が前へ出た。


ブランチ「第2機導軍2等隊員ブランチです。」

アーサー「発言を認める。」

ブランチ「先程隊長の仰った魔人を飼っているというのは?」

アーサー「それは軍の魔人に対する解像度が低いだけである。魔人というのは本来魔獣に変わる前の段階であり、身体が魔力汚染に犯され本来の人体には見られない異質な変異が起きた物を魔人という。この者は魔人のような身体変化もなく、魔獣になる様子も、意識レベルも高い。よって、この者は【魔法使い】だ。」

ブランチ「私の故郷は...魔獣に変わった村人に壊滅させられました...。当時は魔人でした。皆は大丈夫だと庇いました...。そんな魔人が、魔獣になって...村を...。その女が、魔法使いなんて...どうやって信じればいいんですか?!」

アーサー「簡単な話だ...。」


アーサーは前へ歩き出し、剣を仕舞うとブランチの肩に手を乗せた。


アーサー「見ていてくれ。俺達は持てる機導と、この魔法の力を使って、必ずこの星に安住の地を作ってみせる。」

ブランチ「私は一般兵ですが...自分があなた方に従うかどうかは、自分で決めます。」

アーサー「強制はしない。自分が正しいと思う事をするんだ。」




ーサテライト 医務室にてー


シュラソー「ってぇ...。ここは医務室か?ってお前!俺の削敵盤に触るんじゃねぇ!」

スカーウ「いや、見事な武器だと思ってな。気に触ったのなら済まない。」


シュラソーの寝そべるベッドの隣に小さな椅子を置きスカーウは彼が起きるのを待っていたようだが、どうやら暇だったらしくシュラソーの削敵盤を調べていた。


シュラソー「ま、まぁ...ちょっとぐらいなら触ってもいいぜ。」

スカーウ「こんな細いチューブから動力を供給しているのか?動力源はバックパックにでも付いているのか?」

シュラソー「ちげぇよ。腰のコネクターからハーツを吸収して、そこにチューブを刺してる。」

スカーウ「かなり綺麗に手入れされてるな。このパーツは...?まさか!」

シュラソー「気付いたか?高純度のタマハガネを使ったマグネットベアリングだ。それも特注のな!」

スカーウ「供給したハーツをモーターエンジンと電力に変換してさらに回転を滑らかにしていたのか!」

シュラソー「それに気付くったぁ、お前もなかなかわかってんじゃぁねぇか!」

アーサー「何やってんの...お前ら...。」

スカーウ「アーサーか...遅かったな。」

シュラソー「お前かよ...。俺を笑いに来たのか?」

アーサー「違う。話をしに来た。」

シュラソー「何を話すことがあるんだよ。落ちこぼれの俺と、優等生のお前とよ。」

アーサー「自分を低く評価するな。お前は落ちこぼれなんかじゃない。」

シュラソー「俺はずっとお前が嫌いだった。強くて、頭も良くて、世間体も良くて、何もかもが完璧なくせに、周りの奴らにはまるで化けの皮を被ってるみてぇによ、本当の自分を見せねぇ。そんなずる賢いところが大嫌いだった。」

アーサー「俺は、俺の立場に等しい立ち振る舞いをしてるだけだ。」

シュラソー「そういうところだよ!お前にとって俺は、他の奴らと同じで、自分のするべき立ち振る舞いを優先しなきゃいけねぇような奴なのかよ!!」

アーサー「...すまねぇ。俺は...。」

シュラソー「結局、俺とお前とじゃ、住んでる世界が違ぇんだよ。」

スカーウ「でも、歩み寄ることはできる。」


話を聞いていたスカーウが立ち上がる。


シュラソー「今更だよ、これまでの時間は帰ってこねぇよ。」

スカーウ「失った時間は大きいだろう。だが、これからを無駄にする方が、それに等しく大きいと思う。」

アーサー「すまなかった。お前にそんな思いをさせていたなんて、知らなかった。」

シュラソー「お前にとっちゃ知る価値もねぇだろうなぁ。」

アーサー「今からもっと知ろうと思う。だから、教えてくれ。もっとお前の事を。」

シュラソー「...ッチ。勝手にしやがれ。調子が狂う。」

スカーウ「今更なんだが、お前達は隊長同士の関係じゃないのか?」

シュラソー「兄弟だよ。腹違いのな。」

スカーウ「そ、そうなのか?」

アーサー「そうだ。シュラソーの母親はシュラソーが産まれてすぐに病死している。」

シュラソー「ちなみに俺が兄貴な!」

アーサー「その後シュラソーの父親と今のホート財閥のクイーン・ホートが結婚して、そこに産まれたのが俺だ。」

スカーウ「そのお前達の父親は?」

シュラソー「父親はポーン・ホート。第1機導軍隊長だ。」

スカーウ「これは見舞い品か?」

アーサー「あぁ、温室栽培のメロンだ。高いぞ。」

スカーウ「頂こう。」

シュラソー「てめぇら、会話のキャッチボールって知ってっか?」

アーサー「あぁ、そう言えばだが...第2機導軍はこれから第2特殊機導隊の指揮下に属するって話だったが、指揮下ではなく共同って事にしねぇか?」

シュラソー「んぁ?構わねぇぜ。」


メロンに夢中だったスカーウと、先程は怒りつつも便乗してキュラソーもメロンを貪っていた。


シュラソー「てめぇの事だ、最初は支配するように見せつつある程度の自由をくれてやって士気を落とさず手駒にするって魂胆だろ。」

アーサー「さすがはシュラソーだ。分かってんじゃねぇか。」

スカーウ「兄弟揃って悪い顔するな。」


仲良く団欒している最中だったが、アーサーの持っていたデバイスが突如鳴り響く。


シュラソー「嫌な予感がするな。」

アーサー「呼び出しだろうな。」


アーサーがデバイスを耳に当てると、デバイスが跳ね回る勢いでデバイスの向こう側で叫んでいる声が聞こえる。


ギャラハッド『アーサー今どこにいるの?!』

トリスタン『緊急です。』

アーサー「もうちょっと待ってくれたりしない?」

トリスタン『却下です。来て下さい。』

アーサー「って事だから、ちょっと行ってくるぜ。」

シュラソー「さっさと帰ってこいよ。」

アーサー「戻ったら飯でも行くか!行くぞスカーウ!」

スカーウ「了解だ。」

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