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紅腕の白魔女  作者:
胎動
21/22

ep.21 さぁ立つんだ少年



管理従業員「着いてこい。」


ガゴッン


巨大なエレベーターに乗り込み、どんどん地下へと降りてゆく。


ホーアム(抜け出すにはこのエレベーターを使わないとなのか...目立つから別の脱出口を探さないと。)

管理従業員「キョロキョロするな。」

ホーアム「は、はい!」

管理従業員(にしても国王は何が面白くてこんな気弱な奴を買ったんだ...?)


ビーーーッ


エレベーターが停止しブザーが鳴る。

扉がプシューーッと煙を吐き開く。


管理従業員「着いたぞ。降りろ。」

ホーアム「は、はい!」

管理従業員「いちいちうるせぇんだよ。叫ばなくても聞こえてる。」

現場監督「お疲れ様です!」

管理従業員「おうおつかれさん。スカーウを呼べ。」

現場監督「ということはソイツが新しく買った?」

管理従業員「その奴隷だ。コイツはスカーウの所に当てる。」

現場監督「お優しいんですね。」

管理従業員「こういう気弱な奴はスカーウの所じゃないとすぐダメになるからな。コイツを買った分を回収出来るようになるまではスカーウの所で稼がせる。」


現場監督が無線でスカーウを呼び、3人は坑道の奥へと歩いた。


現場監督「そう言えば、スカーウの所、下っ端居るじゃないですか?」

管理従業員「あ?言われてみれば居た気もするなぁ。」

現場監督「コップとケルの2人ですよ。アイツら自分の所の坑道の質が悪いってうるさいんですよ。」

管理従業員「ここ最近は掘れる数も減ってきてるからな。」

現場監督「割り当てる場所変えますか?」

管理従業員「スカーウは?」

現場監督「彼は何とも言ってません。」

管理従業員「なら今のままで構わん。アイツが何も言わないって事はまだ掘れる。」

現場監督「信用してるんですね。」

管理従業員「いや、アイツの勘は当たるってだけだ。」

現場監督「あ、来ました。では私はこれで。」

管理従業員「おう。」


坑道の先には3人、鉱夫が居た。


管理従業員「こいつが今日からの新しい奴隷だ。壊すなよ。」

大男「このヒョロガリがか?」


やたらガタイの良い大男はホーアムを吟味するように睨みつけ不満を零す。


管理従業員「今はコイツ以外に変わりはいない。入荷まで我慢するんだな。」

大男「チッ。おいチビ。テメェ名前は?」


大男からの突然の質問にホーアムは少し驚いてしまう。


ホーアム「ホ、ホーアムです。」

大男「声が小ぃせぇんだよ!」

ホーアム「す、すみませんっ!」

???「あまり驚かせるな。」

大男「すいませんボス...。」

ケル「僕の名前はケルだ。ボスの助手。そこのデカイのがコップだ。そしてこちらの方が...。」

スカーウ「ここの取り締まりを任されている、スカーウだ。」


スカーウはホーアムの方を見ると少し驚いた表情をした。


スカーウ「お前...いや、なんでもない。ホーアムは俺の班に入れ。」

ホーアム「は、はいっ!」(女性なのに...俺?)


スカーウはそう言うと振り返り、コップはシャベルをホーアムに渡すと、ケルと共にスカーウについて行った。


ホーアム(なんだろう...スカーウって人、初めて会ったのにどこか懐かしい。何となく自分と同じような感じがする。)


4番坑に着いた一行は、粗方の準備を終わらせホーアムに作業の一通り教え、仕事に移った。

微妙に重たいシャベルをザクザクと壁に刺し込む。

根元の方を崩し、徐々に上の方を削っていく。

あまり力を込める必要は無いが、体力を持っていくのはシャベルの方だった。

掘れど掘れどタマハガネと呼ばれる金属は出てこない。

説明によると機導兵の扱う特殊な装備『機導』の材料らしいが、ホーアムはタマハガネが出てきても石や砂と同じに見え見逃す自信しかない。


ホーアム(本当に出るのかな...その、タマハガネ?って石...。)

コップ「そっちはどうだ?!」


坑道の奥、真っ暗な闇からあの大男が現れた。


ホーアム「な、何もありませんっ!!」

ケル「叫ばなくても聞こえるよ。休憩にしようか。」


今度は反対側にケルがいの間にか現れ、さりげなく休憩を提案した。


スカーウ「お前達、集まってたんだな。」

コップ「ついさっき来たところです。」

スカーウ「配給を貰ってきた。少しだが長く休もうか。」


スカーウは水筒のような鉄筒と布に巻かれたパンを人数分、麻袋に入れて持って来ていた。


ケル「優しいですね。新人が居るからですか?」

スカーウ「関係ない。俺がお前達の分の配給を貰ってきたから時間が節約できた。それだけだ。」


スカーウは自分の分の鉄筒とパンを取り出し、通路の隅に置いてあった木箱に腰を下ろした。

鉄筒の中身はどうやらスープが入っていたようで、保温性の水筒だったらしい。


コップはホーアムにゆっくり近付き、

(ボスはこう見えて優しいお方だ。)

と耳打ちした。


ホーアム「シャベルはここに置いといていいですか?」

スカーウ「立て掛けとけ。下に置くと誰かが踏む。」


ホーアムは持っていたシャベルを通路の壁に立て掛けようと地面に突き立てると、


キイイィィィィンッ...


と坑道に響く大きな金属音が鳴った。


ケル「も、もしかして...。」

コップ「ボス!」

スカーウ「あぁ...お手柄だ。ここの下...全てタマハガネだ...!」

ホーアム「こ、こんなに大きいんですか?」

スカーウ「いや、ここまで大きいのは見た事がない。それに存在を感じなかった...まるで今、タマハガネが出来たような...ッ!!」


その時、スカーウが何かを感じ取り後ろを見つめる。


コップ「ボス...どうしました?」

スカーウ「...来るッ!魔獣だ!」

ケル「エレベーターに走...


ドゴオォォンッ!!


轟音と共に壁が崩れ落ち通路が塞がれる。


スカーウ「ケル!!」


ケルは瓦礫の下敷きになった。下半身は見えるが巨岩に上半身を潰されている。

壊れた壁から現れたのは人間の身長ほどある巨大なネズミのような魔獣だ。

魔獣は真っ先に近くにいたホーアムに襲いかかる。


スカーウ「ホーアム!逃げろ!」


ホーアムはシャベルに足をつまづかせバランスを崩した。

次の瞬間物凄い衝撃がホーアムを坑道の奥へと吹っ飛ばした。横からコップがホーアムを突き飛ばし庇ったのだ。だが、巨大なネズミはコップの背後から胴を噛みちぎり身体を2つにした。


ホーアム「う、うわぁぁっ!!」


ネズミがホーアムの方を睨みつけ、キィィィィッ!!と威嚇をする。コップの血が混じった唾液が飛んでくる。

今度こそホーアムに噛み付こうとした時、鉄の拳がネズミを吹き飛ばした。


スカーウ「反対の道を右、左、右の順に曲がれ。階段で中央ベルトコンベアに行って緊急アラートを鳴らせ。ここは任せろ。」

ホーアム「っ!すぐ助けを呼んできますっ!!」

スカーウ「新人の癖に、カッコつけるなよ...。」


ホーアムはスカーウの指示通りベルトコンベアへ向かって走り出した。やがて土煙がスカーウの後ろ姿を隠してしまった。


ホーアム(はぁ...はぁ...はぁ...!)


ズズッン...


地下の振動は鳴り止まず、一部の坑道が崩れたことをきっかけに連鎖的に坑道が崩れ始める。


ホーアム(確か...最初の分かれ道を...右...!次に左...!)


順調に坑道を進み、あと少しでベルトコンベアに到着する。


ホーアム(ここを曲が...


視界が一瞬にして白と黒で点滅した。

自信が吹っ飛ばされたと認識する前に激痛がホーアムを襲う。


ホーアム「ッづあぁぁぁぁッ!!」


巨大なネズミがホーアムを前足で押さえ付ける。

大きく口を開け、ホーアムの首にかじりつこうとした時、轟音と共に坑道が崩れた。

ガラガラと地面が落ち、巨大なネズミは危機を察知し素早く後退した。ホーアムはそのまま崩れる瓦礫と共に下へと落ちてゆく。


それからどれ程の時間が経ったかは分からない。

意識が覚醒すると同時に再び激痛が彼を襲う。


ホーアム「っ痛...。ココは...?」


あたりは真っ暗で、砂埃も既に消えていた。

遠くで水滴の滴る音が響いている。

ホーアムはゆっくり立ち上がり、手探りで壁を探す。

右足が折れているのが痛みでわかる。

片足を庇いながら、近くに落ちていたツルハシを杖代わりにどこが出口かも分からない坑道を進む。


ホーアム「スカーウさんは...大丈夫かな...。ッ痛っ!!」


ホーアムは痛みに耐えかね倒れ込む。

壁に背中を預け、真っ暗な中、顔をゴシゴシと拭う。


ホーアム「ごめんなさい、スカーウさん。」


暗闇で見えなくても分かる。

顔に吹きかけられる鼻息、凄まじい獣臭。

今、目の前にはあのネズミがいる。


ホーアム「おじさん。ごめんなさい。あなたが生かした意味は無かったよ...。」


キィィィィッ!!!


ネズミがホーアムに飛び掛ろうとした時、坑道の奥から光が刺し込む。


ホーアム「...誰...?」


その光は謎の男の持つランタンだ。

男は黒くボロボロの布を纏っており、その両腕は金属、話で聞いていた『機導』だった。


???「謝る必要は無いさ。君の生きる意味は今もこうして遂行されている。」

ホーアム「その...声...まさか...?」

???「さぁ立つんだ少年。ユキウサギのシチューでも食べに行こう。沢山お肉が入ったやつを!」


ホーアム(立てって言われても...足折れてんすよ。)

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