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紅腕の白魔女  作者:
16/16

ep.16 チェックメイトだ。

アーサー(いつかキング・ホートとは直接やり合うとは思っていたが、こんなにも早いとは。)


キチッ


剣を構え深く息を吐く。

浅く吸い、素早く踏み込む。

その速さを活かすためアーサーは突きを選択した。

しかしその剣先はキングに届く事は無かった。

キングの周りに充満する電撃はまるで磁石の様にアーサーの剣を止める。


キング「何度しても同じ事!」


ズドドッ!!


落雷がアーサー目掛けて降り注ぐ。


アーサー(狙うべきはあの本か!)


アーサーはくるりとステップターンで落雷をかわすとキングの本目掛けて剣を振った。


キング「諦めの悪い...っ?!」


なんとアーサーの剣がキングの本の表紙を僅かに切り裂いた。


キング「何故...っ!」


アーサーのエクスカリバーはブレイド(刃の部分)であればありとあらゆる魔力からの干渉を受けない。

またエクスカリバーの状態にもよるが、アーサー本人がエクスカリバーを呼び出している状態であり攻撃と認識している斬撃は魔力の流れを断ち切る事が出来る。


キング「百年継がれる英雄剣の名は伊達では無いな。」


キングはパラパラと本をめくり雷玉をいくつも自身の周囲に召喚する。それぞれの雷玉から細く鋭い電撃がまっすぐアーサー目掛けて直進する。


アーサー(数は多いがかわせる!)


キングを中心に円を描くように逃げる。

背後を取りキングの首に横薙ぎをしようとするが


バヂッ!!


アーサー「っ?!」


かわした電撃は再び雷玉になりそこからアーサーに攻撃をしていた。


アーサー「まずいっ、立て直さないと...」


キングから距離を取ろうとするが、足が僅かに痺れ上手く走れない。


キング「【轟雷魔法 滅雷】ケラヴノス!」


アーサーの首根っこを誰かが引っ張ったように、後ろに飛ばされ、キングの攻撃は当たらなかった。

それはスカーウの魔法だった。


スカーウ「相手の攻撃範囲が広い!むやみに動くな!いなして飛び込め!」


アーサー「あぁ!」


ラモラック「どうして...どうして任せない?!」


スカーウ「どういう意味だ。」


ラモラック「我々魔導師のアトリエは人間がこの星で住めるようにする事だ!何故邪魔をする!どうしてもがく!我々に任せれば人類を更に高みへと連れて行ける!」


スカーウ「その為に今の人類を見捨てるのか?」


ラモラック「は?」


スカーウ「正直魔導師のアトリエが本当に人類の為に動いているのかも知らない。だが俺達はお前達を信用しない。既に魔導師のアトリエに殺された人達がいる事も、魔導師のアトリエが目的の為に殺そうとしてた人達がいる事も知っている。お前達の言う人類の定義が全ての人類で無いのであればそれは人類の敵だ。俺達は全ての人類を救う。魔獣の恐怖、大寒波から人類を解放する。」


ラモラック「全ての人類...」


曇っていた瞳に、一筋の光が差し込むように、ラモラックは久しぶりにまっすぐ前を向いたような感覚がした。


スカーウ「お前が今まで何を失って、何を得てきたかには興味が無い。だが、目の前で大切な人を、故郷を失う人を選別し救うのか?」


ラモラック「ダメだ。」


スカーウ「何だ?」


ラモラック「お前の言う事に納得してしまうと、それは自分を否定する事になる。」


スカーウ「そうか。」


スカーウは立ち上がると、左腕をグッパっと動かし、ショートが治っているのを確認した。


ラモラック「何をするつもりだ。」


スカーウ「あのバカ1人に戦わせ続ける訳にはいかない。」


スカーウはその場を後にし戦線に復帰した。





キング「頼りない男にしては中々やるではないか。」


アーサー「安心して即位しな!」


キングは雷を収束させ剣のようにして振るが、スルトの時のようにエクスカリバーの前では刃が立たなかった。

しかし切り落とされた剣の先がキングに戻るように飛び、アーサーを貫こうとした時、スカーウの左腕がその電撃を吸収した。


スカーウ「遅くなった。」


アーサー「構わねぇよ。」


キング「さて、最終章と来たかな。【轟雷魔法 錬雷】キュプロクス。」


二手に別れキングを翻弄する。

対するキングはどこからでも対応できるように手中で雷を練り上げる。

アーサーの切り込みをキングは交わし体の下から上に登る雷の様に電撃を放つが、電撃は曲線を描きスカーウの左腕に吸われる。


キング「磁力か!」


スカーウ「【付与魔法 磁陣】エンチャントマグネット。」


スカーウは自身の魔法で左腕に磁力を付与していた。


キング「スルトから聞いてはいたが、臨機応変が効くな。」


スカーウは地面に風を強く吹き付け砂埃を上げる。


キング「目眩しか。いや、電撃の流れを不安定にするつもりだな。しかし無意味よ。【轟雷魔法 払雷】ブロンテス。」


霧散した雷を集め、吸収された分を取り戻す。

キングの使う魔法【電撃魔法】は筆のように電撃の流れを作って飛ばす訳ではなく、予め始点と終点を決めその間を繋ぐ。始点は自身もしくは自身の魔法で作り出した構造物、終点は自身が視認もしくは一度電撃を直撃させた物に限られる。現在キングは既にアーサーとスカーウにマーキング済みであり、砂埃による電撃の不安定化は出来ない。


キング「そこだな。【轟雷魔法 縛雷】ヘカトンケイレス。」


バリバリッ!!


キングは優先して殺すべき対象をスカーウと捉えている。

魔法による柔軟な対応、また簡単にキングの魔法を妨害される事を警戒しての判断だ。


バヂッ!!


キング「直撃か...?!」


ヘカトンケイレスが掴んだのはスカーウではなく、取り外したスカーウの左腕だった。


キング「デコイか!」


左腕に気を取られているキングの背後に現れたのはアーサーだ。


キング「小癪な!」


ズバリリッ!!


咄嗟に電撃を放ちアーサーを吹き飛ばすが、対象を直前まで視認できていなかった事、直線的な電撃ではエクスカリバーに弾かれる事を考慮し範囲の広く攻撃力が低い攻撃で振り払う。


ズドッ!


吹き飛ばされたアーサーは瓦礫の中、残った壁に打ち付けられる。しかしその手にあのエクスカリバーは無かった。


スカーウ「チェックメイトだ。」


アーサーが居たすぐ下にスカーウは潜んでいた。

エクスカリバーを構えながら。


キング「まだチェックだ。」


バヂッ!!


スカーウの剣撃はキングの雷によって止められた。

エクスカリバーの魔力干渉妨害はアーサーにのみ適用される。


スカーウ(聞いてねぇぞアーサー!)


キングの魔法増量は決して多くない。

しかし機導炉の直上にあるサテライト中心の王城には何故が高密度な魔力が大量に満ちており、この魔力を利用すれば【極雷魔法】を連続して使う事も可能である。

だがその圧倒的出力と火力に制限がない訳では無い。【極雷魔法】には発動条件がある。

電撃を指定した始点から終点まで繋ぐ攻撃魔法【轟雷魔法 滅雷】ケラヴノス、周囲に霧散する雷を収集する【轟雷魔法 払雷】ブロンテス、自身の雷を練り上げ純度を高め次の【轟雷魔法】の威力を高める【轟雷魔法 錬雷】キュプロクス、そして霧散している雷をそれぞれの場所でコントロールし相手を拘束する【轟雷魔法 縛雷】ヘカトンケイレス。それぞれの魔法を発動する事でのみ【極雷魔法】を使う事が出来る。

それぞれの魔法にはそれの上となる魔法が存在するが、


【極】を名乗る魔法はその魔法の中で最上位の魔法である。


キング「【極雷魔法 神雷】ゼウス!!」


スカーウ「【防御魔法 接地】シールドアース!」


スカーウは左腕を投げ売った事で先程のような魔力をハーツに変換し吸収する術がない。咄嗟に判断した結果、自身が伝導帯になるように魔力の流れを一直線にし、地面に雷を逃がす事だ。


スカーウ(まぁ無事では済まないだろうな。)


ズドッ


キング「?!」


???「キングの弱点は【極雷魔法】を使う時だけ。周囲を囲む雷もその時だけは無くなる。」


キングの腹に切れ込みが入る。

まるで斬撃が飛んできたように。


キング「ラモラック...貴様ッ!」


ガッ!


なんとスカーウが【極雷魔法】を溜めている腕を掴んだ。


スカーウ「打たれる前に雷を逃がしてしまえば出力も落ちる!」


キング「離せ!」


キングがスカーウを振り払うが、ひとつの疑問に気付く。

エクスカリバーがない。


キング(ヤツの剣はどこだ?!)


エクスカリバーはスカーウがキングの腕を掴む前に上に投げていた。

キングの頭上を通過したエクスカリバーは背後に立っていた血まみれのアーサーの腕に戻った。


アーサー「チェックだ!」


キング「まだだ!!」


キングは【極雷魔法】をスカーウではなく地面に向けた。

発射方向を下の機導炉に向けることで大爆発を引き起こすつもりだろう。

3人はそれを止める方法を瞬時に模索する。


ラモラック(ダメだ。アレを撃たせると人類最後の砦、このサテライトの機能が止まってしまう。絶対に撃たせない!何とかしないと、)


アーサー(自分も巻き込んでこの国を終わらせるつもりか!!)


スカーウ(俺が受けて下に逃がすならまだしも、下に打たれるとその衝撃を殺せない!まずい!)


ラモラック(どこかに電気を逃がせれば...いや違う、逃げないようにすれば!)


ラモラックは瞬時に本を開き手で魔力をこねる。

手で作り出したものをスカーウの方へと飛ばす。

スカーウはその意図を察したように受け取った物を更に混ぜる。


ラモラック(この本だと作ることまでしか出来ない、でもスカーウなら!)


スカーウ(間に合うか...いや考えるな。勘で作れ!足りない物、繋ぎは魔力でそのまま覆え!【錬成魔法】!)


出来上がったそれキングに投げる。

ほとんど魔力で作られたそれは実態がなく、魔力でできた膜のような物だ。


キング(攻撃魔法か?今更【極雷魔法】は止められん!)


しかしその魔力の膜はキングの前で爆発したように広がりキングを覆った。


キング「伸び縮みする魔力...まさか!」


スカーウ「そうだ。魔力で出来た「ゴム」だ。」


ズドッ!!!!!


キングを覆っていた魔力の膜が一気に膨張し、すぐに萎んだ。


キングの【極雷魔法】を内側で爆発させ、なおかつ電撃を内側に留めた。


キング「まだだ!もう一度っ!!」


キングが再び魔法を使おうとした時、


アーサー「チェックメイトだ!」


グサッ!


アーサーは外側から魔力の膜を破りキングの腹を突き刺すと、そのまま切り上げ、本を持っていた右腕ごと切り落とした。


ザスッ


あのキングが遂に膝を着いた。

無くなった右肩を抑え、サテライトの天井を見上げる。


キング「素晴らしい。」


アーサー「結局お前は何がしたかったんだ。」


キング「先程述べたであろう。」


アーサー「その【紅の魔術師】って奴か?ソイツは何者だ?いったい何を企んでる!」


キング「人類の進化だ。」


アーサー「人類の進化?さっきも言ってたアレか...」


キング「そこの混じり者なら分かるはずだ。」


スカーウ「俺の事か?」


キング「今この星には魔力が満ちている。どこもかしこもだ。はるか昔、この星に魔力なんて物は無かった。遠い昔、我々の先祖は電力に変わる新たなエネルギーを発見した。そのエネルギーは生命の生きる力、生体動力ハーツだ。ハーツは生き物から常に生産され続ける。その生産性からハーツが主流になるのにそう時間はかからなかった。だがハーツにも欠点はある。ハーツは消失すると同時に別のエネルギーへと変化する。それが魔力だ。やがて星に魔力が満ち、遂には魔力による突然変異、魔獣化がみられるようになった。」


アーサー「ハーツが魔力を?!って事はサテライト内に魔力が充満していた理由も?!」


スカーウ「確かに盲点だった。俺には魔力切れもオーバーハーツも無かった。」


キング「それが我ら【魔導師のアトリエ】の掲げる循環と調和だ。本来あるべくバランスをこの星に取り戻す。これ以上は私の口からは話せない。」


アーサー「なんでだよ!」


キング「そういう契約だ。では私の息の根が止まる前にリワードと行こうか。」


スカーウ「リワード?」


キング「この本を持って行きたまえ。少しは使えるはずだ。」


キングは記憶を消す魔法と呼んでいたあの本をアーサーに渡す。


キング「今なら彼女の言っていた事も理解できる...な...。」


スカーウ「彼女?おい!」


キングはそう言い残すとパキキッと音を立て結晶になった。


アーサー「キングは魔人じゃなくて人間だった。って事はこれが魔人と契約した人間の最後って事か。」


結晶にヒビが入りガラガラと崩れて行った。


ラモラック「どうやらここまでみたいだ。主人が居なくなったのでね。」


後ろに立っていたラモラックも結晶化が始まっていた。


ラモラック(今思えば自分のしていた事は間違っていたんだろうな。人類を救う、その大義を叶える方法が魔人に付き従うしか無かった。でもアーサー達は違った。自分達で模索し戦い、ここまで辿り着いた。人類を救う為の信念、そこが間違っていたんだろうな。)


スカーウ「ラモラック。俺達は必ず人類を救う。」


ラモラック「...そうか。安心して逝けるよ。」


パキキッ


マーリン「作者が「会話が読みやすいようにセリフの間を毎回改行してみましたが逆に分かりづらそうですね次から辞めますはい。」だってさ。」

アーサー「後書きだからってあんまメタいこと言わない方がいいよ。」

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