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紅腕の白魔女  作者:
13/16

ep.13 混じり者よ

ーサテライト内、第2特殊兵舎スカーウ自室にてー


ガゴォ...

相変わらず大きな音を立てながら開閉する扉を閉め、スカーウは横になる。

シャワーを浴び濡れた髪をボソボソなバスタオルで擦り、1度状況を確認していた。


スカーウ(まず俺達が第2と戦いに出た調査任務、これは何らかの目的のため無かったものとされている。理由はだいたい想像がつくが、問題はそれを実行したヤツがサテライト内に潜んでいて、そいつが誰か分からない事か。アーサーも手を打っているとは思うが、どう出たものか。)


深く物を考える事には慣れているが、連日の忙しい任務が響き不意にもゆっくりとまぶたを閉じてしまう。

ふと彼らの事を思いながら。


スカーウ(コップ、ケル。俺はちゃんと正しい事を出来ているだろうか。何も分からず行く宛を無くし拾われるように第2特殊に来たが未だにデメテルを殺したヤツに近付けていない。唯一掴んだ情報ですらまるで遠く感じる。)


スカーウは失った友の後ろ姿を思い出す。

他愛もない事で笑い背中を叩き肩を組んでいたあの頃を懐かしんでしまう。たった役2ヶ月前の事をそれは懐かしく。


スカーウ(...!)


スカーウはバッとベッドから飛び上がる。


スカーウ「そうだ...あの時感じた魔力、間違いない。」


スカーウは急いでアーサーに連絡を取り、部屋から飛び出す。


スカーウ「アーサー!緊急だ。分かったぞ。」

アーサー『何にしろ円卓まで来い。そこで話そう。』


スカーウは走り、円卓に向かった。

第2特殊兵舎の会議室前に到着した時、ちょうどアーサーと会った。


アーサー「早かったな。」

スカーウ「すぐに言うべきだと思ったからな。」


2人が部屋に入った時、そこには既にラモラックが居た。


アーサー「こんな時間までご苦労だな。」

ラモラック「情報を整理していただけですよ。ところで2人は?」

スカーウ「進展だ。アーサーあの卵を覚えているな?」

アーサー「あのデケェやつか?」


ラモラックがあの卵のホログラム映像を映し出した。


スカーウ「この卵は、この卵の中身は人間だ。」

アーサー「人間?!」

ラモラック「そ、その根拠は?」

スカーウ「俺は、この卵の魔力を知っている。」

アーサー「以前に感じた事があるのか?」

スカーウ「お前と会ったあの日、地下坑道に新人が来た。そいつは俺の管轄で働く事になったんだが、人目見ただけでわかる程そいつは普通の人間とは、いや魔獣と比べても異常なほど、魔力を帯びていた。あの時遭遇した魔人の何倍もの魔力をだ。今思えばあの時坑道で活発化していたヴァンパイアバットはあの魔力に反応していたんだろう。」

アーサー「もしかしてそいつが!」

スカーウ「あぁ。ホーアムだ。あの日以降捜索を依頼していた新人だ。あの卵から感じる魔力はホーアムと同じ魔力だ。」

アーサー「何を企んでんだ...。」

スカーウ「優先すべきは、サテライト内の魔人を炙り出すことではなく、あの卵の追跡だ。」

アーサー「いや、まずはサテライト内の魔人だ。次にいつ妨害されるか分からない。先にこっちを対処しないと。」

スカーウ「だとしてもだ。これはあくまで憶測だが、魔導師のアトリエはホーアムを魔獣に作りかえる気だ。」

アーサー「ここで上層が腐って防衛能力を失った方が払う犠牲は多くなる。」

スカーウ「違う。これはホーアム1人の命の話じゃない。分かるだろう?もし彼を救うのが手遅れになった場合、出来上がる魔獣はとてつもない化け物だ。」

アーサー「くっそ...」

ラモラック「では二手に別れるのはいかがでしょうか。」

アーサー「それもアリだが...」

ラモラック「状況判断に優れたアーサーに卵の捜索を任せ、我々がサテライト内の魔人を捜索しましょう。今晩マーリンに依頼すれば明日までには卵の場所も分かるでしょう。」

アーサー「いや、別れる必要は無さそうだ。」

ラモラック「?」

スカーウ「もういいだろ。」

アーサー「何故、サテライト外での行動に長けたスカーウじゃなく俺を卵の捜索に向かわせようとした?」

スカーウ「そもそも何故俺達が打ち合わせしたタイミングで円卓に居た?」

ラモラック「いったいなんの...」


突然モニターが起動する。


マーリン『とぼけたって無駄だよ。キミの行動は全てこちらで確認出来ている。通話を盗み聞きした事もね。アーサーをサテライト外に誘導したのは、サテライト内での戦闘を避けたかったからだね?安全に湧き続ける魔力原を失うのは痛手だろう、外でアーサーを処理したかったと見える。』

アーサー「さて、観念するんだな。」


ラモラックは下を見ると、少し頭を抱えたが、次に顔を上げた時はヘラヘラと笑っていた。


ラモラック「嫌だなぁ〜、そもそも魔人側に付くメリットなんて無いだろう?当て付けの憶測で敵扱いするのはやめて下さい。そもそも今日は始末書と報告書の整理があるので、確認等でよく通信機器を触っていて、たまたま通信を傍受してしまっただけですよ〜。」

アーサー「マーリン。」

マーリン『確かに、提出された始末書と報告書はちゃんと纏められてる物だ。』

アーサー「そうか、疑ってすまない。」


身構えてたアーサー達は警戒を解き、ラモラックの肩に手を乗せる。


ラモラック「神経質になってるんですよ。身内同士で疑い合っていてはいざと言う時に戦えませんよ。」


警戒が解け、議論は明日に解散する流れになった時、スカーウの通信端末に通知が入る。

スカーウがチラッと端末を覗くと、マーリンからラモラックが仕上げたであろう始末書と報告書のまとめ、それと円卓会議の資料だった。


スカーウ「この資料もお前が?」

ラモラック「話し合いを分かりやすくする為にデータとして円卓に登録する前にまとめたものです。良ければ目を通して下さい。」

スカーウ「少し質問がある。」

ラモラック「なんでもどうぞ。」

スカーウ「ここの『スルトの魔法』のところだが、」

ラモラック「炎を操る魔法ですね、応用や原理などを分かりやすく解説しています。」

スカーウ「俺達は円卓会議で魔人の名を一度も出していない。」


分かりやすくラモラックの表情に出た時、アーサーが掴んでいた肩を強く握りドアをぶち破って兵舎の外にぶん投げた。


スガァァッ!!


凄まじい轟音と共に警報が鳴り響く。

兵舎の外のグラウンドに叩きつけられ土煙が上がる中、ムクリと立ち上がった人影にアーサーは追い打ちをかける。


ズドッ!!


アーサー「手応えがないッ?」


なんと斬った人影はボフンッと煙になり土煙に混じって消えた。

後ろを見るとラモラックが王城目掛けて空を飛び上がっていた。右手には1冊の本が開かれており、左手に持っていた本は燃え上がり灰となっていた。


アーサー「スカーウ!お前は外から追いかけろ!俺は行く所がある!」

スカーウ「任せろ!」


スカーウは風魔法で高く飛び上がり、グラップリングフックで建物と建物を高速で移動し追いかけた。


しばらく追いかけた後、王城正面の正門に到着した。


警備兵「貴様!何者だ!」

警備兵「待て!それ以上近付くな!」


警備兵が正門の前に立ちはだかるが、ラモラックは更に新しい本を取り出すと、風を薄く細く収束させ刃のようにし打ち出した。

1人は首、もう1人は上半身と下半身でふたつにされた。

燃える本を捨てラモラックは城内に入って行く。

スカーウが到着した時には死体の山だった。


スカーウ(見た所武器での殺傷では無いな。死因が様々すぎる。あの死体は焼け焦げているが、こっちの死体は濡れている。外傷が無い、水死だ。やはり魔法か。俺以外にも魔法を使える人間が居るのか。いや、恐らくあの本だ。あの本は恐らく体内の魔力を魔法として使えるようにする変換器具のような物か。)


スっと立ち上がり城を見上げる。


スカーウ(それにしても何故ここに...)


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

考え込んでいる時に、正門が大きく音を立て開いた。


スカーウ「来いって事か。」


スカーウが正門をくぐると、そこには上に続く階段と、辺り一面の血の海、散乱する死体。

そして階段を上がるラモラックの姿が見えた。


スカーウ「待て!」

ラモラック「君達には、人類がこの後どんな運命を歩むのか想像できるか?」

スカーウ「まるで自分には出来ているような口振りだな。」

ラモラック「そうだ。終わらない冬、増え続ける魔獣、人類は絶滅の一途を辿るだろう。」

スカーウ「お前は絶滅を望むのか?」


2人はゆっくりと距離を保ちながら階段を上る。


ラモラック「詳しくは彼に聞くといい。」

スカーウ「自分が出したボロを他人に任せるのか。」

ラモラック「勘違いしないでくれ。遅かれ早かれ君達を最優先で処理するつもりだった。それが今日になっただけさ。」

スカーウ「俺達を目の敵にするって事は、既に他の軍はお前の手の内か。」

ラモラック「昼間の尾行に気付かれるのは意外だったが、彼らも同士さ。」

スカーウ「いや、上層部が魔人だと知らないだけだろ。」

ラモラック「おっと、お喋りはここまでだ。」

スカーウ「ッ?!」


何やら強大な魔力が目の前の王室に集まっていくのを感じる。


スカーウ「何をした?」

ラモラック「もう一度、だよ。」


ギィィィィ


扉を開けた先に居たのはあの男だ。


キング「よく来た。混じり者よ。」

スカーウ「キング・ホート...。」


アモはアーサーやスカーウにはタメ口。ちょっと社会が分かってない若造っぽい設定。でもマーリンやトリスタン達みたいな畏まった人達には敬語を使ってしまう。シュラソーは親しみやすい上官との関係なので敬語でも失礼を言ってしまう。軽いイジり。かわいそう。

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