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紅腕の白魔女  作者:
10/11

ep.10 すなわち魔導だ

サテライトに到着後、アーサーとは1度別れた。ギャラハッドは諸々の手続きなども含め第2機導軍の生き残りとアモを連れ第2特殊の兵舎受付へ向かった。

スカーウは一人で兵舎へ帰り、先にシャワーを浴び横になった。

スカーウが睡魔に負ける事は滅多に無いが、今回は疲れていたのか気が付けばあたりはもう真っ暗だった。

ゆっくり起き上がり髪をかき上げようとしたが、その左腕はもう無い。


スカーウ「...クッソ...!」


ドンッ


力強くベッドを殴ると、骨組みを伝って部屋全体に鈍い音が響いた。


ーそれから数分後ー


ゴウンッ

スカーウの部屋の扉は重たい音を立てて開いた。


ペリノア「おっ、あん時の嬢ちゃんじゃねぇか!」

スカーウ「...ペリノアか。」

ペリノア「なんだ、まだ生きてんなら顔くらい見せろ!」

スカーウ「死に損なっただけだ。」

ペリノア「...。」


ペリノアは暫く黙った後、何かを閃いたように笑顔になりスカーウの首根っこを掴みどこかに連れていった。



ーサテライト 王室にてー


アーサー「ただいま帰還しました。」

キング「よくぞ戻った。して、その他の者は?」

アーサー「私以外は調査任務の疲れを癒す為、すぐに療養休暇を与えています。」

キング「そうでは無い。犠牲の話をしている。」


アーサーは事前に偽った調査結果の内容を軍を通して王室上層部に伝えていた。もちろんキングがそれを知らない筈がない。要するに、嫌がらせの質問である。


アーサー「...。」

キング「どうした?」

アーサー「事前にお伝えした通り、第2機導軍は全滅致しました。」

キング「そうか。彼らはとても良い人材だった。それぞれに家族があり、守るべきものの為に戦ったのだ。それを頼りない男に任せたせいで、な。」

アーサー「調査内容は既に提出しています。我々は明日からも任務がありますのでこれで。」

キング「待たれよ。」

アーサー「他に何か御用でも?」

キング「明日 "も" 防衛任務を任せたい。」

アーサー「...了解しました。詳しい内容は軍上層を通して。」



ー第2機導軍 兵舎にてー


シュラソー「まさかお前から来るなんてな。アーサー。」

アーサー「話がある。」

シュラソー「まぁ中入れよ。立ち話は好きじゃねぇだろ?」

アーサー「茶でも入れるよ。」


2人は隊長室へと入っていった。

隊長室のグラウンド側の壁はガラス張りで第3機導軍の訓練兵の掛け声がうっすらと聞こえる。

サテライトの天井によって作られた夕日が部屋に差し込む。


シュラソー「襲われたんだろ?」

アーサー「あぁ。」

シュラソー「詳しい内容も書類を読んださ。」

アーサー「あぁ。」

シュラソー「...別に怒っちゃいねぇよ。お前が付いていて結果がコレなら誰が指揮を取ったって変わんねぇ。」

アーサー「あぁ。」

シュラソー「...。」


少しの間、沈黙が続いた。

その間もグラウンドを走る第3機導軍の掛け声は続き、夕日によって作られた2人の影は背を伸ばし、マグカップに注いだコーヒーが氷を溶かしカランッと涼しい音を立てた。


シュラソー「はぁ〜辛気臭ぇのは辞めだ辞め!てめぇいつか俺に言った事、忘れてんじゃねぇだろうなぁ!」

アーサー「...。」

シュラソー「俺達はもう隠し事はナシだ。」

アーサー「...そうか。」


コーヒーをグイッと飲み干し、アーサーは顔を上げて話し始めた。

最初から最後まで、調査任務での出来事を自身の推測を挟み、全て。


シュラソー「待て待て、って事は上の連中の誰かが俺を殺そうとしたって事か?!」

アーサー「多分お前を殺すのはついでだ。」

シュラソー「ひでぇ表現だな。」

アーサー「奴らの目的は3つ。1、卵の搬出。2、スカーウの収穫。3、シュラソーの殺害による俺の引き抜き、間接的な第2特殊の解体。最初にスカーウに目的は卵の搬出だって言っていたらしいが、卵に注目を集めてそれ以外を隠す為の答えだろう。」

シュラソー「スカーウの収穫はどういう意味だ?」

アーサー「これは分からない。ただ、俺達と戦ったスルトって魔人が、スカーウにそう言ってたらしい。


もう少し慣らしたいところだが、もう収穫してしまおう。


ってな。」

シュラソー「慣らしたいってところが引っかかるよなぁ。」

アーサー「どっちにしろ、暫くはスカーウに大人しくしといて貰うしかないな。」

シュラソー「しっかし...これからどうすっかなぁ〜...。」

(俺が第2機導軍を辞めれば、敵の作戦に乗っちまうし、

俺1人しかいねぇから第2機導軍は成り立たねぇよなぁ。)

アーサー「なぁ...こういうのはどうだ?」

シュラソー「んぉ?」



ー第2特殊機導隊兵舎 開発部にてー


ペリノア「おう!戻ったぞ!」

開発部スタッフ「部長!どこ行ってたんですか?!」

ペリノア「少しサボってたらコイツに会ってよぉ。」

開発部スタッフ「サボりって言っちゃってんじゃん...っていうか、あの魔人じゃ、!」

スカーウ「魔人じゃねぇ。魔法使いだ。ペリノア、どうして俺をここに?」

ペリノア「お、そうだった!コイツらにあの腕を見せてやってくれ!今の時期は人が集まってるからちょうどいいだろ?」

開発部スタッフ「あの部長ですら理解が出来なかった機導ですか?」

スカーウ「その腕なんだが、壊した。」

ペリノア「は?」

開発部スタッフ「あ?」

スカーウ「だから、もう無い。」


スカーウが腕を上げるが、そこには骨に直接編み込まれたボルトや配線などの切れ端が残っているだけだった。


ペリノア「ガハハハッ!よくあの腕を壊したな!」

開発部スタッフ「何してんだ!せめて資料を残してから壊せ!!」

スカーウ「まさか壊れるとは思わなかった。」

ペリノア「今まで壊れたことは?」

スカーウ「今回が初めてだ。不調すらもなかったんだが…」

ペリノア「ガタが来たとは違うもんだな。何かいつもと違う事でもやったか?」

スカーウ「そう言えば、この腕が壊される瞬間、腕に魔力を流された。内側から焼けるように熱くなって、それで爆発するように腕が分解された。」

???『その話、詳しく聞かせて貰おうか。』

スカーウ「?!」

ペリノア「この声は!」


舎内放送で響いた声の主は、設計図モニターをジャックし、声の周波数を表示させた。


???『噂には聞いてると思うけど、私はマーリンだ。訳あって君達の前で挨拶を出来ないことをここに詫びよう。』

スカーウ「お前がマーリンか。」

マーリン『作用だ。して、まずそちらの疑問は以下で終了かな?』


スカーウは怪訝な顔でペリノアに耳打ちをする。


スカーウ(なぁペリノア...マーリンと会った事あるのか?)

ペリノア(ないぜ。でも、マーリンが現れる時は決まって電子機器の画面をジャックして、自分の声の周波数を表示すんだよ。アーサーは「あの周波数が顔でしょ。」なんてひでぇ事言ってたぜ。)


マーリン『さて、疑問がないなら話を続けよう。』

スカーウ「あ、あぁ。」(多分聞かれてたな。アーサー、後で殴られろ。)

マーリン『まず君の腕についてだ。』

スカーウ「この機導だった物か?」

マーリン『単刀直入に言おう。君のそれは機導じゃない。』

スカーウ「?!」

マーリン『本来機導とは、生命の生きる上で生への執着心、行きたいと思う正しい心、すなわち【生体エネルギー・ハーツ】を動力とする。我々はそれを体のプラグに接続した機導に送り扱う。だが、君のソレ(腕)は違う。その腕はスルトに魔力を逆流され破壊された。機導はハーツを動力とする為魔力の干渉を受けないが君の腕は魔力に強い影響を受けた。それは機導ではなく、魔力で動く機導、すなわち魔導だ。』



実はシュラソーは、すごく心配していました。もちろん自分の隊を"知らない間に"任せた上での全滅なので怒りや悔しさはありましたが、アーサーを想う上で、アーサーのメンタル面の心配が勝ったそうです。

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