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High-/-Quality  作者: hime
【第3章:決戦場】
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71/106

第70話:To Be Chosen

_



インターハイ東京都支部予選

男子棒高跳びの結果は以下の通りとなった。


第1位 伍代 拝璃(羽瀬高・高3) 記録:5m10cm(2)

第2位 江國 途識(継聖学院・高2)記録:5m00cm(3)

第3位 若越 跳哉(羽瀬高・高2)記録:4m95cm

第4位 高薙 皇次(継聖学院・高2)記録:4m90cm

第5位 高薙 宙一(継聖学院・高3)記録:4m85cm

第6位 柏宮 寛汰(継聖学院・高1)記録:3m70cm



上位6名までが、次なる東京都予選大会への出場ができる為、今回出場の6名は全員都大会へ出場となった。


_



一方の男子100mのタイムレース決勝は、泊麻のライバルであった、継聖学院の都築の後輩である猪尾 穂取(いのお ほとり)や司波との戦いとなった。

結果、全体で七槻が10.63で2位、蘭奈が10.78で3位とそれぞれ都大会への切符を手にしていた。



女子100mのタイムレース決勝では、惜しくも高津が全体の10位で入賞出来なかったものの、丑枝は見事8位に入賞し、何とか都大会への切符を手にした。



そしてもう1人。

男子200mへと出場した音木は、持ち前の実力を存分に発揮し、決勝では組1着の全体では2位へと入賞。

これにより、3年生は全員都大会への出場を決める事となった。



_



こうして、支部予選を終えた羽瀬高陸上部は、次なる東京都予選大会に向けての準備を始めていた。




キーンコーンカーンコーン…♪




4限目の授業が終わり、昼休みを迎えた。

若越は教材を片付けると、昼ご飯の準備に取り掛かろうとした。

すると、前の席に座る三伯が振り返り、若越の顔を覗き込んできた。



「…なぁ、どうだった?支部予選は。」


「…あぁ?…まあ、都大会には進めたよ。…負けたけど…。」


若越は、ぶっきらぼうな態度でそう答えた。

三伯はその様子に、若越の心境を見通したかのような様子で更に質問を続けた。


「…あれか?例のマネージャー先輩の。桃さん…だっけ?

負けたって、伍代先輩にって事?」


容赦なく撃ち込まれる、絶妙に核心を突いた三伯の質問に、若越は呆れた顔で答えた。


「…まあ、それもそうだけど。あの人だけじゃないよ。」


「…ふぅん。"ライバル"って奴?」


「ま、そんなところかな。…ってか、そろそろ部室行くわ。今日の昼はミーティングも兼ねてるから。」


「…へぇ、ミーティングなんてするんだな。頑張れよ!」


そこまで交わすと、漸く若越は三伯から解放された。

"ミーティング"などという大それた言葉を使ったものの、本当はいつも通り蘭奈、紀良、高津、巴月とお昼を共にするだけであった。

ただ、今日は支部予選の反省会も含まれていた…。




_



若越が部室に辿り着くと、既に他のメンバーは揃っており、何やら蘭奈と紀良がいつも通りの掛け合いを始めていた。


「…うぉぉぉぉぉ!都大会は絶対10秒前半で優勝してみせるっ!!」


「…はいはい。分かった分かった…。さっきからそれ、何回目?」


次のステージへの闘志を燃やす蘭奈と、その様子に呆れている紀良の光景も、もうお馴染みになってきていた。


「でも何でだろね、こんなガキっぽいくせに、本番だと人が変わったかのような姿で走るよね。

…あっ、若ちゃんやっほー。」


遅れて顔を出した若越に気がついた高津が、そう言って若越を招き入れた。


「…確かに、杏珠のいう通りかもな。でもそれは、若も同じな気がするぜ?」


紀良も若越の姿を確認しながら、高津の会話を続けた。


「あーそれね、玻菜さんも言ってたかも。

若ちゃん、本番になると狼みたいに怖い顔しながら、背中に翼が生えたように軽々跳んでるように見える時あるって。」


高津は、桃木の事を思い出しながらそう言った。

その言葉に、若越は少し反応したものの、何か余計な一言を言いそうになったのでグッと口を紡いだ。

その様子に気が付いてたのは、巴月だけであった…。


「…でも、みんなそうなんだけど、やっぱり跳哉くんが1番、この1年間で進化してるかもね。」


巴月はそう言って、若越のフォローに回った。

恐る恐る、巴月は若越の顔色を伺ったが、依然若越は平静を装っている。


「…ん、そうか?みんな着実に進化してるだろ?

それに、俺と陸には過去の結果もある。

だから、先輩たちと同じか、それ以上に全国は意識してるよ。なぁ?」


若越はそう言って蘭奈の顔を見た。

蘭奈は激しい同意を、首を大きく縦に振る事で存分に表現していた。


「…全国かぁ。もう負けちゃった俺が言う台詞じゃないかもしれないけど…。

見せてくれよ、2人の全国大会での姿。

2人がどんな風に戦うのか、こんなに近くで見れるのは、めちゃくちゃありがたいからな。」



「もちろんっ!任せとけってぇんだ!」


「…ああ、必ず。」



蘭奈と若越は、それぞれ自信げな顔をしながらそう答えた。


「…ってか、めちゃくちゃ真面目な話の最中に、こんな提案するの申し訳ないんだけど…。」


すると突然、高津がそう言って会話に割り込んだ。

一同は、彼女に視線を集める。


「インターハイ終わったら、夏休みじゃない?

来年はもう、3年生になっちゃうし、今年のうちに皆んなが良ければ、思い出作りにどっか遊びに行かない?」


高津の唐突な提案に、一同は困惑した表情をしていたが、蘭奈だけは唯一すぐに目を輝かせていた。


「いいな!行こうぜ!どうする?海とか川とか、バーベキューとか??」


蘭奈は立ち上がり、興奮気味にそう言った。

すると、思い掛けずにそれに続いたのは、若越だった。


「…8月の中旬に、花火大会のお祭りがあったよな?それでも行くか?」


若越の提案に、一同は同意を示した。


「いいね!そうしましょ!そしたら、花火大会に向けてインターハイ頑張らないとね!

私も精一杯、みんなを応援する!」


巴月は弾けそうな笑顔を見せながら、そう言って皆を鼓舞した。


「…そうだな。全国出場枠に選ばれる為に、勝つしかないな。」


若越は、皆に聞こえるか聞こえないかの声で、そう呟いた。


こうして、夏の思い出を作る為の約束を果たした2年生たちは、より一層インターハイに向けて気合を入れる事となった…。




_




一方同じ頃、1年生の教室では…。




昼食を終え、浮かない顔をしながら窓の外をぼんやり眺めていたのは、弓ヶ屋であった。


「…もー、千聖ったら。今日ずっとそんな感じだけど…どうしたの?」


クラスメイトの睦小路は、頬を膨らませて不満げな表情で弓ヶ屋にそう言った。


「…はぁ…。若越さん、かっこよかったなぁ…。」


そう呟く弓ヶ屋は、完全に恋する乙女の表情であった。

薄ら白い雲が浮かぶ青空に、彼女が思い浮かべていたのは、昨日まで行われていたインターハイ支部予選での、若越の跳躍姿であった。


「…もう、またそれか…。」


睦小路も何となく、その様子には気がついていたが、もう何度聞いたか分からない弓ヶ屋の若越への思いに、最早呆れた様子であった。


「…若越さん、このまま全国大会まで行っちゃうのかな…?」


「…さぁ?どうだろうね。

都大会には緑川学園の選手たちも出てくるだろうし、南関では明伯とか日立とかの競合もいるだろうから。」


睦小路から語られる現実的なデータなど、弓ヶ屋には全く届いている様子はなかった。

弓ヶ屋は、不思議そうな顔で睦小路の話を聞いているものの、恐らく心ここに在らずであった。


「そうなんだ…でも、若越さんなら勝てる気がするなぁ…。」


両頬に手を当てながら肘をつき、目を閉じて若越の顔を思い浮かべる弓ヶ屋。

そんな弓ヶ屋に、睦小路は最早お手上げ状態であった。


「…何を根拠に…ってか、そこまで若越さんの事好きなら、告っちゃえばいいのに。」


諦めかけた睦小路は、ついつい極論を言い放ってしまった。

"告っちゃえばいいのに。"の言葉に、弓ヶ屋の顔はみるみる赤く火照ってしまった。


「ななななななっっっ!なっ!えっ?はぁっ!?

こ、こ、告るぅぅぅ???」


目を回すとはまさにこの事。と言わんばかりに、弓ヶ屋の瞳が縦横無尽に泳いだ。

慌てる弓ヶ屋の様子に、睦小路は少し焦りながら、何とか落ち着かせようと試みた。


「…ま、まあ、今すぐにってわけじゃないけど…。

あ、そうだ。」


睦小路は何かを思い出したかのように、コソコソとスマートフォンを操作し始めた。

学校内での使用は禁止されている為、睦小路はバレないように素早く画面を操作すると、あるSNSの動画を弓ヶ屋に見せた。


「…ほら、これ。8月に花火大会あるじゃん?

これ、これ誘って行ってきなよ。

…あっ、そうだ!折角なら浴衣!浴衣とかどう?

着るなら一緒に探しにいくよっ!」


その動画には、盛大な花火の様子や縁日の様子が映し出されていた。

その様子を見ながら、睦小路の方が少し盛り上がりながら、弓ヶ屋にそう説得し始めた。


「…えっ…ええええっ!!!…で、でも…若越さん…私と行ってくれるかな…。

…ってか、私、上手く話せるかな…?」


折角の睦小路の提案に、弓ヶ屋は急にシュンとして完全に自信を無くしていた。


「…何言ってんの?まだあと3ヶ月あるんだよ?

それまでに支えるように、若越さんに近づけばいいんでしょ?全く…。」



キーンコーンカーンコーン…♪



昼休みのひと時は、瞬く間に過ぎ去ってしまった。

次の授業開始5分前の予鈴が、教室に響き渡る。


「…あっ、浴衣。浴衣は今度絶対、探し行くからねっ!

あんた絶対、浴衣着たらめっちゃ可愛いからっ!」


睦小路はそう言い残すと、自分の席に戻って次の授業の準備を始めていた。


1人になり、弓ヶ屋はぼんやりと期待に胸を膨らませながら、若越との夏祭りの様子を妄想していた。


(…若越さんに…一緒に行く相手に…選んで貰えるように…か。)


弓ヶ屋は心の中でそう呟くと、授業に向けて切り替えた。




_



昼休み後の5限目の授業。

科目は、古典であった。


得意科目の授業であったが、若越の心は授業そっちのけで、次のインターハイ東京都予選大会にあった。



(…全国出場枠に、選ばれる…かぁ…。

次は都大会。田伏さんと森がいるのか…。

…次は負けない…伍代先輩と、江國に…。)



ぼんやりと見つめる黒板には、『平家物語 扇の的』の一節が書かれていた。

古典教室がその節を解説しているのを、耳を傾けて聞いてはいるものの、頭の中はインターハイの事が

大半を占めていた。



~目を見開いたれば、風少し吹き弱り、扇も射よげにぞなつたりける。~



ふと、黒板に書かれたその一節に、若越は自然と目を奪われた。

"目をかっと見開いて見ると、ありがたい事に風も少し収まり、的の扇も静まって射やすくなっていた。"という意味を、若越はすぐに理解していた。



(…ふぅん。現実も、こう簡単に風を操れたら、楽勝なんだろうなぁ…。)



若越は心の中でそう呟くと、窓の外の青空を眺めた。





そうこうしている内に、支部予選から数週間が経った。

次なる舞台、"東京都予選大会"の幕が今、開こうとしている。





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― 新着の感想 ―
何だろう 七槻部長がやたら格好良く見えるなぁಠ﹏ಠ 推し変とかするつもりはないのに なんか七槻すんげぇ格好良いんだよなぁಠ﹏ಠ 浮気じゃないんだけど また一つお父さんという壁を越えようとしている若越…
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