表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/113

71 解放

 中は真っ暗で明かり一つ灯っていなかった。


 僕達は人型に戻ると扉を閉め、テオが「ライト」を唱えて辺りを照らした。


 明かりに照らされて映し出された建物の中は酷い有り様だった。


 建物自体は割に広いが奥の壁一面に小さな檻が縦横に積み重なっていた。


 その中には狭い檻に閉じ込められてぐったりと横になっている動物達がいた。


 所々空いている檻があるのは既に死んでしまったからなのだろうか。


 ただ単に空いているだけなのだろうか。


 クリーン魔法で清潔には保たれているが、檻に閉じ込められたままなのは明白だ。


 ただ生かすためだけに食事と水を与えられているにすぎない。


 この国の王女も飽きたからと放置するくらいならば開放してあげればいいのに、どうして手放さないんだろう。


 檻の中の動物達は明かりが点いた事に気付いたようだが、顔を上げる気力もないようだ。


 様々な種類の犬や猫、猿にうさぎもいるが、どれも獣人なのは間違いなかった。


 皆が同じ首輪を着けられているので喋る事も出来ないようだ。


「まったく…。よくもこれだけも集めたもんだな」

 

 テオは檻に近付くと扉を開けて中にうずくまっている犬を抱き上げた。


 犬は抵抗する素振りも見せずに大人しくテオに抱かれているが、抵抗するだけの体力がないのかもしれない。


「シリル。魔法陣を広げてくれ」


 僕が急いで床に魔法陣をひろげるとテオはその上に犬を下ろした。


 魔法陣がピカッと光を放つと犬に着けられた首輪がポトリと落ちた。


「…首輪が…」


 それまで何も言わなかった犬が喋れるようになった。


「人型に戻れると思うんだが出来そうか?」


 テオが犬から少し距離を取ると犬は青年へと姿を変えた。


「…ああ、やっと戻れた…」


 青年は座り込んだ状態で自分の手を見つめるとポロポロと涙を溢した。


「どうだ、立てそうか? 無理ならヒールをかけてやるぞ?」


 エリクが声をかけると青年は立ち上がろうとしたが、足に力が入らないようだ。


 エリクにヒールをかけてもらい青年はようやく自分の足で立ち上がる事が出来た。


「ありがとう。何てお礼を言っていいか…。だけど君達は誰? どうして僕を助けてくれたの?」


「僕の兄さん達を探しているんだけど、狐の獣人を見なかった?」 


 青年は僕の方を見たがすぐに首を横に振った。


「僕はここに入れられて半年になるけど狐の獣人は見ていないよ」


 青年の言葉に僕達は衝撃を受けた。


 こんな所に半年も閉じ込められていたなんて、あまりにも酷すぎる。


「この国の王女が愛玩動物を欲しがっているんだって? 君も王女の所に連れてこられたのか?」


 テオに聞かれて青年は悔しそうに頷いた。


「僕の住んでいた里がハンターに襲われて僕は連れ去られたんだ。そこでその首輪を着けられてこの国の王女の所に連れてこられた。最初は可愛がってくれていたんだけどが僕がうっかり噛みついたら物凄い剣幕で怒られてここに閉じ込められたんだ。喋れないから他の獣人達がどうしてここに入れられたかはわからないけどね」


 どうやら王女はちょっとした事でも気に入らないことは許さないらしい。


 それならば他の獣人もほんの些細な事でここに閉じ込められたのかもしれない。


「とりあえず他の人達も助けてあげないと。順番に檻から出して行こう」


 僕達は檻から一人ずつ出して魔法陣に乗せては首輪を解除していった。


 動けない獣人にはヒールをかけたり回復薬を飲ませたりしていった。


 誰も彼も皆、首輪が外れると人型に戻って涙を流していた。


 だが、ここからが問題だった。


 跳ね橋が上がったままのこの王宮からどうやって脱出するべきだろうか。


 頭を悩ませていると、カチャリと小さな音が聞こえた。


 ハッとしてそちらに目をやると音もなく扉が開いてこちらを見て驚いている騎士の顔が見えた。


 しまった!


 見つかってしまった!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ