表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/113

62 次の目的地

「パストゥール王国か。さて、どんな理由をつけて訪問するべきか…」 


 ランベール樣が考え込んだのを見て慌てたのはテオとエリクだ。


「お待ちください。いくら何でもランベール樣が行かれるのはリスクが大きいと思いますが…」


「そうですよ。それこそ交換条件に不利な交易を結ばされたり、婚姻を迫られたりしたらどうするおつもりですか!」


 確かに直接王族が交渉なんてしたら、どんな無理難題をふっかけられるかわかったものではない。


「僕達が行きますよ。獣人が仲間を救いに来た、という事ならば何処にでもある話として扱われますからね。それにまだパストゥール王国に行ったかどうかも定かではありませんからね」


 奴隷商は何処の国の王女とかも口には出していないから、本当にパストゥール王国かもわからない。


 それにランベール樣は今はファビアン樣と一緒に国内を立て直すのが先決のはずだ。


 他国へ行っている暇などないに等しい。


「そうか、済まない。それではこちらも引き続き国内を探させる事にしよう」


 その後、他の獣人達にも話を聞いて回ったが、有力な情報は掴めなかった。


 王宮に戻るランベール様を見送ると、僕達は治療院を後にした。


 これからエリクの家に行ってパストゥール王国に行く為の準備をするのだ。


「何で僕の家なんだ? テオの家に行けばいいだろ?」


 ジャンヌさんと二人きりになりたいエリクが不満を洩らす。


「お前も一緒に行くからに決まってるだろ!」


「何で僕も行く前提なんだよ。テオとシリルの二人で行けばいいだろ」


 エリクの家に向かう途中で二人が喧嘩を始める。


 なんだかんだ言っても相変わらず仲が良いようで何よりだ。


 二人はしばらく押し問答をしていたが、結局エリクはテオに言われるままにまた旅に出る事が決まってしまった。


「せっかく帰って来てジャンヌと二人きりになれると思ったのに、また離れ離れになるのか…」


 がっくりと落ち込むエリクをテオが、慰める。


「まあまあ、そう落ち込むなって。今日はシリルは僕の家に泊めるからジャンヌと二人きりにさせてやるよ」 


 シスコンのテオにしては珍しい事を言うな、と思って聞いていたが、案の定その約束が守られる事はなかった。


 夕食と共に出されたお酒を飲み始めた二人はすっかり酔っ払ってしまい、テーブルに突っ伏して寝てしまったのだ。


 だらしなく寝そべる二人にジャンヌさんは呆れ顔で、早々に二人を起こす事を諦めてしまった。


「シリル。この二人は放っておいていいから向こうで一緒に寝ましょう」


 ジャンヌさんはそう言って僕を手招きする。


 僕は子狐の姿になるとジャンヌさんの腕の中に飛び込んだ。


「うふふ、可愛い。私も早く赤ちゃんが欲しいわ」


 ベッドルームに入るとジャンヌさんは僕をベッドの上に下ろして自分もベッドに入った。


「シリルには人間の姿よりもこっちのほうがいいかしら」


 そう言うとジャンヌさんは狼の姿に変身する。


 うわぁ~、でかい!


 父さん達の狐の姿よりも少し大きい狼が現れた。


 エリクに比べたら少し小さめだが、こうして子狐の姿だと更に大きく見える。


 ジャンヌさんは僕の体を包み込むように丸くなると、優しく体を舐めてくれた。


 その内に眠くなり、僕は眠りの底へと落ちていく。


 せめて夢の中だけでも父さん達や兄さん達に会いたいな。


 翌朝、ヒョイとつまみ上げられた感覚に目を開けると、目の前にエリクの顔があった。


 どうやらまた、首根っこを掴まれて持ち上げられたようだ。


「どうしてシリルがジャンヌと寝ているんだよ! 起こしてくれてもいいだろ!」


 涙目のエリクにしたり顔のテオを見比べて、どうやらこれもテオの策略だったようだと思い至った。


 シスコンの兄がいる女性とは結婚しないほうが良さそうだ。


 僕達は旅の支度を整えるとパストゥール王国を目指してエリクの家を後にした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ