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50 長老の話

 僕の尻尾の数まで言い当てられて驚いていると、ロドルフさんは僕の尻尾が五本もある事に驚愕していた。


「尻尾が五本も…。ミリアンが彼等に助けられたと言っていましたが、それで納得がいきました。彼等は狐が住む獣人の里を探しているのですが、心当たりはありませんか?」


 ロドルフさんの質問に長老は自分の長い顎髭を触りながら考えを巡らせているようだった。


「…狐の獣人か…。あやつらはあまり他の獣人達とは交流はしないが、そうでないのもいるからな。儂が聞いた事があるのはこの先の上流にある獣人の里に何組かの狐の獣人の夫婦がいるという事だな」


 長老の言葉に僕は踊り出したいくらい舞い上がった。


 思わず長老の側に駆け寄ってお礼を言いたかったが、ロドルフさんと約束したとおりに黙って後ろに控えている。


「そうですか。お教えいただきありがとうございます。…ほら、君達も長老にお礼を言いなさい」


 ロドルフさんに許可を貰って僕はようやく長老にお礼を言える事が出来た。


「ありがとうございます。教えていただきとても助かりました」


 エリクも僕の横でペコリと頭を下げる。


 長老はそんな僕達に目を細めながら、満足そうに頷いている。


「なぁに、大した事じゃありゃせんよ。…それにしてもお主はなかなか変わった生まれをしているみたいじゃのう。伝説の九尾の狐も夢ではないかもしれんのう…」


 九尾の狐って、あの妖狐として有名なあれだろうか?


 この世界にもそんな存在がいるなんて驚きだ。


「もう、良いかな? そろそろ昼寝の続きに入りたいんじゃが?」


 長老に問われてロドルフさんはハッとしたように頷いた。


「もちろんでございます。お時間をいただきありがとうございました」


 長老は満足そうに頷くと、その場で獣人に変化した。


 人間の姿の代わりに椅子の上に現れたのは大きな亀だった。


 長老って亀の獣人だったんだ。


 確かに「鶴は千年亀は万年」って言うからな。


 まるでドラゴン◯ールに出て来る亀◯人みたいだったな。


 もっともあっちの頭はツルッパゲだったけどね。


 亀の姿になっていびきをかき出した長老をその場において僕達は静かに部屋を出た。


 先程の女性が僕達が部屋を出たのに気付いて玄関まで送ってくれた。


 長老の家を後にしてロドルフさんのお店に戻るとミリアンが出迎えてくれた人達には


「お帰りなさい。…その顔だと良い情報をもらったのね」


 僕が生まれた里かどうかは確定したわけではないが、少なくとも同じ狐の獣人がいる事がわかったのだ。


 きっと更に何か手がかりが掴めるかもしれない。


「ロドルフさんもありがとうございます。長老に会わせていただいたおかげです」


 お礼を言う僕にロドルフさんは、いやいや、と手を振った。


「お礼を言うのはこっちの方だ。ミリアンを助けてくれてありがとう。君にとって有益な情報を得られたようで僕もホッとしているよ」


 僕達に対してつっけんどんな態度を取っていたが、ロドルフさんなりに気にかけてくれていたようだ。


 そこへ店の奥の扉が開いて一人の女性が顔を出した。ミリアンと顔立ちが似ているのを見ると、彼女の母親だろうか。


「あら、戻ったのね。お二人共、ミリアンを助けてくれてありがとう。食事の用意が出来たから食べていらっしゃい」


 なんと、僕達に食事をご馳走してくれるらしい。


 遠慮しようとしたが、一家三人に押し切られてはかなうはずもない。


 それに用意された食事を無駄にするわけにもいかないので、有り難くいただく事にする。


 ロドルフさんは店番に追いやられて少し寂しそうだったが、ミリアン達と楽しい食事が出来て大満足だ。


「美味しい食事をありがとうございました」


 食事を終えて店先でミリアン達に別れを告げる。


「私こそ、助けてくれてありがとう。無事に家族に会えるといいね」


 ミリアンが名残惜しそうに僕の手を握ってくるが、それをロドルフさんが無理矢理引き剥がした。


「ミリアン。無闇に男に近付くんじゃない」


 そんなロドルフさんに苦笑しつつも、僕達は彼等に別れを告げて、次の里に向かった。

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