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48 ミリアンの家

「あ、私ったらまだ名前を言っていませんでしたね。ミリアンって言います。ご覧のとおりウサギの獣人です」


 ミリアンの案内で彼女が住んでいるという獣人の里へと足を進めていると、彼女が自己紹介を始めた。


 ミリアンの頭には相変わらずウサギの耳がピクピクと動いているが、周囲の音を拾っているのだろう。


 僕達と一緒にいても警戒を怠らないのか、もともとそういう習性なのかはわからない。


「ミリアンか。可愛い名前だね。君にぴったりだよ。僕はエリクで、こっちはシリル。二人で旅をしているんだが、君の里には狐の獣人はいるのかな?」


 エリクが僕の分も紹介してくれたが、最初の方の「可愛い」っていう台詞は必要なのかな?


 結婚したばかりの奥さんがいるのに、よく恥ずかしげもなくそんな台詞が言えるものだと感心してしまう。


 フェミニストと言えば聞こえはいいが、単に女好きなだけかも知れないな。


 もちろん、エリクの奥さんのジャンヌさんに告げ口なんかはしないけどね。


 夫婦の間に余計な波風を立たせるだけだし、こうして付いてきてくれているエリクに申し訳ないからね。


 エリクに可愛いって言われたミリアンは何故か僕をチラッと見てくる。


 まだ僕達が信用出来ないのかな?


 彼女を安心させるためににっこりと笑って見せると何故か頬を赤く染めていた。


「え? 狐の獣人てすか? 私が住んでいる里には狐と狼の獣人はいません。見慣れていないので、さっきは余計にびっくりしちゃったたんです」 


 ミリアンの住んでいる里に着く前に狐の獣人は住んでいないと知らされてしまった。


 早めにわかって良かったと言うべきだろうか。


 がっかりしながらも足を進めて行くとやがて獣人の里の入り口が見えてきた。


 この獣人の里もやはり結界で囲まれている。


 その結界を通り抜けて門へと近付くと、門番二人がエリクと僕に槍を突き出してきた。


「お前ら、何者だ? ミリアンに何の用だ?」


 僕とエリクがたじろいで一歩後ろへと下がるとミリアンが慌てて門番を止めに入る。


「ちょっと、止めて! この人達は私を助けてくれたのよ!」


 ミリアンがとりなしてくれたおかげで門番達は槍を下ろしたが、不満そうに僕等を睨みつける。


「すみません。他所の獣人の里が襲われたからと聞いてから警戒が厳しくなっちゃって…」


 僕の住んていた里が襲われた影響がこんなところにまで現れているようだ。


 ミリアンは僕達を連れて町中を歩き、一軒の雑貨店の店の前で足を止めた。


「ここが私の家です」


 そう言って扉を開けて店の中へと入って行った。


「お父さん、ただいま。お客様を連れてきたよ」 


 ミリアンの後を追って僕達も店の中へと足を踏み入れると、一人の男性が僕達を見て固まっていた。


「ミ、ミリアン? お前、この人達に何をしたんだ?」


 ミリアンの父親はそれだけの台詞を絞り出すと素早い動きでミリアンを自分の背に庇い、僕達に対峙した。


「お金ならいくらでも差し上げますから、どうか娘だけは勘弁してください。お願いします」


 …うわぁ…


 どうやら僕達はミリアンを連れに来た人物に間違えられているようだ。


 父親の背に庇われたミリアンが慌てた口調で父親の背中をバシバシ叩いた。


「ちょっと、お父さんてば! この人達は私を助けてくれた人達なのよ! そんな失礼な事は言わないでちょうだい!」


 ミリアンに言われてミリアンの父親はようやく僕達がミリアンを連れに来たわけではないと悟ったようだ。


 ミリアンの父親は僕達に詫びながらも、どことなく警戒しているように見える。


 まあ、見知らぬ獣人が二人も現れたら警戒されるのも当然なんだろうけどね。


「突然お邪魔して申し訳ありません。僕はエリク、こっちはシリルって言います。狐が住んでいる獣人の里を探しているんですが、ご存知ないですか?」


 ミリアンの父親は少しの間考えていたが、やがて首を横に振った。


「他の獣人の里については何も聞いたことはないな。お役に立てなくて申し訳ない」


 どうやらここでも情報は得られないようだ。



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