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43 同行者

 まさか商会長の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。


「それは、取引をしている所には狐の獣人がいないって事ですか? 他にも獣人の里と取引をしている商会があるんですか?」


 僕が勢い込んで商会長に詰め寄ると、「まあまあ」とテオに押し止められた。


 焦っちゃ駄目だと頭ではわかっていても、やはり気が急いてしまうのは仕方のない事だと思う。


 それでもテオに宥められた事で少し落ち着きを取り戻せたようだ。


 商会長の発言を待っていると、考え込んでいた商会長が顔を上げて僕を見た。


「いや、すまない。取引を始めた頃は狐の獣人がいなくても、その後に住み始めた所があるかもしれない。その里に住む獣人をすべて把握しているわけではないからね」


 商会長の説明に僕は少し安堵した。


 それならば商会長がわからなくても仕方がない事だ。


 僕はふと思い出してロジェから貰った地図を取り出して商会長に見て貰う事にした。


「これはマルモンテル王国でお世話になった人から貰った地図です。冒険者の噂を頼りに作った獣人の里があるらしい場所の地図ですが、合っていますか」


 差し出された地図を商会長は興味深そうに目を通しだした。


「…ふぅむ。あながち間違ってはいないかな。…ここは多分、フェイクの場所だな。…川沿いしかないのはどうしてだ?」


 商会長は地図から目を離すと僕に聞いてくる。


「僕が川に流されたので、川沿いにある獣人の里だけを抜粋してくれたんです」


 僕の答えを聞いて商会長は満足そうに頷いた。


「なるほどな。こことここは間違いなく獣人の里があるが、ここはうちとは取引がない場所だ。こちらは多分フェイクの場所だと思うが、うちと取引がないだけかもしれない」


 商会長は地図を指し示しながら僕に説明をしてくれた。


 どこが僕がいた獣人の里かわからない以上、順番に訪れるしかないだろう。


「ありがとうございます。早速行ってみたいと思います」


 地図を仕舞いながら僕は商会長に力強く頷いた。


「おいおい、シリル。もう行っちゃうつもりかよ。もう少しゆっくりしててもいいだろう?」


 エリクががっかりしたような口調で僕を引き留めようとするが、そもそもの発端はエリクが人違いをしたことだ。


 それがなければ僕は既に次の町に行っていたはずなのだ。


 そういう思いを込めてエリクを見つめると、僕の視線の真意に気付いたエリクはついと顔を反らした。


 僕とエリクのやり取りを見ていたテオが呆れたような声を上げる。


「エリク。お前のせいでシリルは足止めをくらったんだぞ。謝罪くらいじゃ足りないな」


 テオはそう言うなりちょっと考えを巡らせるとやがてパッと顔を上げてエリクを指差した。


「よし決めた! エリク、お前はシリルについて行って一緒に旅をしろ!」


 突然テオから突きつけられた命令にエリクは飛び上がらんばかりに驚いている。


「ちょ、ちょっと待てよ、テオ。まだ王宮の後始末も終わってないのに、俺がいなくなってもいいのか?」


「むしろ、お前が居ないほうが助かる。押し付けられるシリルには申し訳ないと思うが、道案内位の役には立つだろう」


 居ないほうが助かるって、今までどれだけ迷惑を被って来たんだろう。


 テオにバッサリと切り捨てられてエリクはがっくりと落ち込んでいる。


 厄介者を押し付けられた形になる僕としては嬉しさは半分ってところかな。


 一人で旅するよりは連れ立って歩いてくれる人がいるほうが有り難い。


「僕は構いませんよ。エリク。よろしくお願いします」


 テオに了承してエリクを振り返ると、エリクは涙目で僕に軽く頷いた。


「ありがとう、商会長。それじゃこれでお暇するよ」


「なぁに。大した手間じゃありませんよ。シリル。無事に家族と会えることを祈ってるよ」


 テオと商会長が挨拶を交わして、僕達は商会を後にした。


 大通りへ出るとエリクが恨めしそうな目をテオに向ける。


「これから旅の支度を整えるから、テオはジャンヌに説明してやってくれよ」


 エリクに腕を引っ張られてテオは仕方無さそうに頷いた。


「ジャンヌに説明は必要だな。シリルもおいで。顔合わせしておいたほうがジャンヌも安心だろう」


 話の内容からするとジャンヌさんとはエリクの奥さんか恋人なんだろう。


 僕達はエリクの家へと向かって歩いて行った。


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