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21 情報収集開始

 ロジェと別れて街道をひたすら突き進んで行く。


 辺りに人影がないのを確認すると近くの茂みの中に潜り込み、狐の姿へと変わる。


 そして狐の姿のまま、街道沿いを走り出した。


 人の姿よりはやはりこちらの方が走るのは速いからだ。


 小一時間も走っているうちに次の町が見えてきた。


 そろそろ人間の姿になったほうが良さそうだ。


 人目がないのを確認してから人間の姿になって街道を歩き出す。


 町の入り口に設置された門に近付くと、門番が珍しそうに僕を見ているのがわかった。


「おや、随分と若い冒険者だな。新人かい? 一人で大丈夫なのか?」


 冒険者カードを提示するとカードを確認している門番とは別の人が話しかけてきた。


「はい。最近冒険者登録をしたばかりです。僕を鍛えてくれた人がもう一人でも大丈夫だろうって言ってくれました」


 決して無理をしているわけではないと言う事をアピールしておく。


「隣町から来たって事はロジェが鍛えてくれたのか?」


 まさかここでロジェの名前が出てくるとは思っていなかったのでちょっとドキッとしてしまう。


「はい。ロジェさんに鍛えてもらいました。…ご存知なんですか?」


 門番は納得したようにうんうんと頷いている。


「あいつが大丈夫と言ったのなら問題はないな」


「ロジェもまたあちこち行けるようになればいいんだがな。まったくもったいない」


 どうやらこの門番の人達はロジェの事を良く知っているようだ。


 そしてロジェが今、町の警備を担当していることも知っているんだろう。


「引き止めて悪かったな。ロジェが太鼓判を押したとしても無理はするなよ」


「はい、ありがとうございます。ところで冒険者ギルドは何処にありますか?」


 カードを返してもらいながら尋ねると、


「この通りを真っ直ぐに行けばすぐ左手に見えるよ」


という返事が返ってきた。


 門番に教えられたとおりに歩いていくと前方に冒険者ギルドの看板が見えてきた。


 中に入ると右手の壁に依頼書が貼ってある。


 依頼書を確認するふりをしながら、その奥にある休憩所にいる人達の声に耳を傾けた。


 耳に神経を集中させて人々の言葉を聞き分ける。


 狐の獣人のせいか、耳は良く聞こえる方だ。


 だが、目ぼしい話は聞こえて来ない。


 ちょっとがっかりしつつも、自分に出来そうな依頼書を持って受付へと向かった。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」 


 受付のお姉さんがにこやかな笑顔で出迎えてくれる。


「この依頼をだ受けたいんですが、どうしたらいいですか?」


 まだ冒険者としてのランクは低いので、植物採集くらいしか依頼を受けられない。


「こちらに書かれている植物を採集して頂いてこの書類と一緒に持ってきて頂ければいいですよ」


 本当はロジェから聞いて知っているけれど、あえて知らないふりをして尋ねると、丁寧に教えてくれた。


「ところで、この辺りで冒険者が良く利用する食堂ってありますか?」


 ここでは話せない事でも、食事をしながらなら口が軽くなる人もいるかもしれない。


 お酒が出るような店ならば尚更だろう。


「ここを出て町の中心に向かって行くと『まんぷく亭』と言うお店があります。そこが冒険者の方々には人気ですよ」


 いかにもたくさん食べるのが好きそうな人が好むような名前の店だね。


 僕は受付のお姉さんにお礼を言って冒険者ギルドを後にした。


 情報収集もあるけど、実際にお腹が空いてきたのでさっそく食事に向かう。


 町の中心に向かって歩いていると、やがていい匂いが漂ってきた。


 ぐうぅぅー。


 あまりにいい匂いなのでお腹が早く食べたいと催促してくる。


 匂いを頼りに歩いていくとやがて一軒の

お店が見えてきた。


 扉を開けて中に入ると既に8割がた、お客で埋まっている。


 冒険者のみならず一般のお客の姿も見える。


「いらっしゃいませ。お一人ですか?」


 僕の姿を目にした店員が声をかけてきたので頷くと席に案内された。


 メニュー表は無かったが、壁にお品書きが貼ってある。


 『ワイルドオークの焼肉セット』を注文して店内の人達の話に耳を傾ける。


 どこどこの森で魔獣が出た、とか、最近倒した魔獣の事とか、色んな話が飛び交っている。


 …まぁ、すぐには欲しい情報なんて出てこないよね。


 注文の品が提供されて、それをゆっくりと頬張りながらも周りの話に耳を傾ける。


 食事を食べ終える頃になって、店の扉が開き二人の客が入ってきた。


 二人は僕のすぐ横の席に座るとさっさと注文を店員に告げた。


 あれこれ迷わないところを見ると常連客のようだ。


 食事を終えて店を出ようかと思っていた頃に、隣の客から「カヴェニャック」の単語が出てきた。


 僕は浮かしかけた腰を慌てて戻して座りなおす。


 胸のドキドキを押さえながら僕は二人の会話に集中した。


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