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18冒険者ギルド

「シリル。この先、旅に出るのなら人間として生活する事に慣れたほうがいいぞ」


 ロジェに言われてそれもそうだな、と納得した。


 川をさかのぼって行くのにはムリがあるから街道を通る事になる。


 当然、他の町に入る事もあるだろう。


 その場合、人間の冒険者として登録をしておけば、スムーズに出入りが出来るはずだ。 


 僕はもう一度人型になると、ロジェと同じ大きさになった。


 この世界での成人は15歳だから、このくらいの大きさで十分だろう。


 ふと辺りを見回すとリーズと目があった。


 今まで見上げていたリーズの体が今は見下さなければならないなんてちょっと不思議な気分だ。


 リーズも同じ思いなのか、僕がじっと見つめるとふいと顔を反らしてしまった。


 人型になった僕はロジェの手ほどきを受けながら魔法の練習をした。


「ファイアボールで敵を倒すのもいいが、大きさに注意しないとさっきのアルミラージみたいに黒焦げになってしまうぞ」


 あれはリーズを傷付けられたからついカッとなってしまったんだよね。 


 万が一、他に火を燃え移らせないためにもファイアボールはあまり使わない方がいいな。


 火魔法の代わりに攻撃に使えると言えば水か風か雷魔法ぐらいかな。


 雷魔法も場合によっては火事を引き起こしそうだから却下だな。


 風魔法でかまいたちを起こして斬りつけるか、水魔法から派生した氷魔法を使うかな。


 風魔法を繰り出して前方にある木の枝を切り落としてみせた。


「うわっ、凄い。シリル」


 リーズが僕の魔法を褒めてくれて、ロジェも満足そうに頷いている。


「これなら問題はないな。今日は早目に戻って冒険者ギルドへ向かうとしよう」


 森を出て街道を町に向かって歩き出すが、何故かリーズはロジェにピッタリとくっついて歩いている。


 距離を取られることを不思議に思いつつも歩いていると、やがて町の門に到着した。


「何だ、ロジェ。今日はやけに早いじゃないか。…ん? こいつは誰だ?」


 門番が見慣れない僕を警戒するようにロジェに問いかける。


「ああ、知り合いの息子だよ。冒険者ギルドでの登録を頼まれたんだ。俺と一緒の方が登録がスムーズに行くんじゃないかって頼まれたんだよ」


 ロジェの説明に門番は納得したように僕を通してくれた。


「お前と一緒なら説明も省けるだろうからな。よし、通っていいぞ」


 門を抜けて町の中に入ると、そのまま冒険者ギルドへと連れて行かれる。


 こんなふうに町の中を歩き回るのは初めてなので、ついキョロキョロしてしまう。


 僕が住んていた町よりも大きくてにぎやかだな。


 門から割りと近い所に冒険者ギルドはあった。


 ロジェと並んでリーズが建物の中に入り、その後に僕が続く。


 ギルドの奥にカウンターがあって、受付の人らしいお姉さんが二人いた。


「いらっしゃいませ。ロジェさん、今日はどうされました?」


 顔馴染みらしいお姉さんが僕達を見て声を掛けてきた。


「この子の冒険者登録を頼む。友人の息子なんだ」


 ロジェに引っ張られてカウンターの前に立たされる。


 お姉さんは紙を一枚、筆記用具と共に僕の前に差し出した。


「こちらにお名前をお願いします。魔法の属性はわかるものを書かれるだけでいいですよ」


 僕は紙を覗き込んたが、何故か書かれている文字が読めた。いわゆる異世界補正っていうやつかな。


 名前と年齢を記入して、魔法の属性は「火、水、風」とだけ書いた。


 僕が記入している間にお姉さんは一旦奥へ引っ込んで一枚のカードを持って来た。


「ありがとうございます。それではこちらのカードに血を一滴、垂らしてください」


 カードと一緒に小型ナイフが差し出され、僕はナイフの先で指先を突くと、血を一滴カードに染み込ませた。


 カードと申込み用紙が同時に光った。


 どうやら無事に登録されたようだ。


「ありがとうございます。指先にポーションをかけますね」


 お姉さんは僕の傷口にポーションを一滴垂らしてくれた。


 ナイフの傷が跡形もなく消えてしまう。


「それではこちらがシリルさんのカードになります。冒険者についての説明はロジェさんにお願いしますね」


 受付のお姉さんにとっても僕がロジェと一緒なのはラッキーだったようだ。


 あっと言う間に登録が終わり、僕達はパメラが待っている家へと向かう。


 真っ先に玄関を開けて家に入ったのはリーズだった。


「母さん、ただいま」


「お帰り。随分早かったのね」


 リーズを出迎えたパメラがロジェの後ろから入って行った僕に目を留めた。


「あら? お客様?」


 僕はちょっと照れた笑いを浮かべる。


「僕、シリルだよ。ただいま、パメラ」


 ガシャーン!


 驚きのあまりにパメラは持っていたお皿を落として閉まった。


 そんなに驚かれるのも無理はないよね。


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