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14 クリーン魔法

 翌朝、目を覚ますとロジェとリーズは既に身支度を終えて出かけようとしているところだった。


「シリルのお寝坊さん。やっと起きたね。それじゃ、母さん、行ってきます」


 リーズは僕の頭を軽く撫でるとロジェと一緒に出て行った。


 ロジェは町のギルドへ、リーズは学校だ。


 いつものように僕はパメラと一緒にお留守番である。


「シリル。ご飯を食べるんでしょう? こっちへいらっしゃい」


 パメラに呼ばれて僕は大きく伸びをすると寝床から這い出してテーブルについた。


 僕が食事を頬張っている間にパメラはリーズ達が使った食器をクリーン魔法で綺麗にしていった。


 それを見ながらふと思いついた事があった。


「ねぇ、パメラ。僕にもそのクリーン魔法が使えたら、その分成長するのかな?」


 パメラはピタッと動きを止めて、手元の食器と僕を交互に見やった。


「…そうね。成長するかどうかはわからないけれど、やってみる価値はあるわね。まずはその食事を終わらせなさい」


「はぁい」


 僕は急いで残りの食事をかきこんだ。


 いつまでも狐の姿で食事をするんじゃなくて、人の姿で食事をしたいと思っているんだよね。


 前世を覚えているから余計にそう思うのかもしれないけれど、やはりちゃんとカトラリーを使って食事がしたい。


 僕が食べ終わったお皿をパメラはシンクの中に運んで、僕を抱きかかえてその横に立たせた。


「シリル、いい? 食器を洗い流して乾かすイメージで綺麗にするのよ。やってご覧なさい」


 パメラに言われて僕は前世でやった皿洗いをイメージしてみた。


 バシャッと水がお皿にかかって辺りに飛び散る。


 案の定。僕とパメラにも水がかかった。


「シリル。それじゃ水が多すぎるわ。もっと少なくしないと」


 パメラが笑いながら僕に飛び散った水を乾かしてくれた。


 失敗、失敗。


 少なめの水で皿を洗って乾燥させると、今度は上手くいったようだ。


 汚れが取れて元の綺麗なお皿になった。


「上手いじゃないの。この調子でお部屋の掃除も出来るかしら?」


 パメラは綺麗になったお皿を片付けながら、僕を振り返った。


 部屋の床を見ると確かにところどころに小さなゴミが落ちているし、僕の体から抜けたと思われる毛も落ちていた。


 この世界には掃除機なんて物は無いだろうからね。


 ゴミをほうきで集めるようにイメージしたほうがいいのかな。


 部屋の中だからあまり強い風を起こすわけにはいかないので、小さな風をほうきに見立ててゴミを一箇所に集めていく。


 集まったゴミをゴミ箱に捨てると掃除は完了した。


「凄いじゃないの、シリル。やっぱり狐の獣人だから魔法の扱いが上手なのかしらね」

 

 パメラに褒められて嬉しかったけれど、残念ながら僕の尻尾には変化はなかった。


 これくらいの魔法じゃ、成長するのには足りないみたいだ。


「焦っちゃ駄目よ、シリル。一つ一つ確実に積み上げていかないとふとしたことで崩れてしまうわよ」


 パメラの忠告に僕はハッとした。


 確かにそうだ。


 何事も土台がしっかりしていないと崩壊してしまうのは当たり前の事だよね。


 パメラは寝室の掃除をしてくると言って部屋を出て行った。


 一人になった僕は【ライト】の魔法を唱えて灯りを点けたり消したりして遊んでいた。


 そのうちに眠くなり、ウトウトしていると何処からか聞こえてきた「キャーッ」という悲鳴が僕の眠りを破った。


 ガバっと身を起こして辺りを見回したが、部屋の中にパメラの姿はなかった。


 今の悲鳴はパメラの声だったような…。


「パメラ、何処?」


 呼びかけても返事は返ってこない。


 探しに行こうとしてドアノブに手が届かない事に気が付いた。


 狐の姿でも人間の姿でもドアを開ける事は出来ない。


 どうしよう。


 だが、迷っている暇はない。


 パメラを助けに行かないと。


 僕は必死にドアノブを睨んでドアを開けようとした。


 カチャッ!


 ドアが開いた!


 僕はドアの隙間に身を滑り込ませると、パメラを探しに行った。


 寝室は確かこっちだったか?


 廊下をかけて寝室に向かうと、ドアが開いていた。


「パメラ! どうしたの?」


 勢いよく寝室に飛び込んだ僕の目に床に座り込んだパメラの姿が映った。


 振り返ったパメラが僕を見て驚きの表情で僕を指差した。


「シリル! 尻尾が!」


 パメラの言葉に僕は自分の尻尾を確かめた。


 そこには3本の尻尾が揺れていた。


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