表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/113

109 焦り

「お前の両親かもしれないとわかった以上、早く助けに行きたい気持ちはわかるが、無闇に飛び込むと助けられるものも助けられなくなるぞ」


 テオに再度釘を刺されて思わず俯いてしまう。


「まぁまぁ、テオ、落ち着いて。シリルも。…いきなり屋敷に押しかけたところで相手にされないと思うけどね」 


 ドニの言う通り、僕がペルラン伯爵の屋敷を訪ねたところで、会って貰えるはずもないだろう。


 この町の住民ならばともかく、単なる旅人がおいそれと領主に会えるはずもない。


 でも、だからと言って手をこまねいて見ている事は出来ない。


 それならば…。


「アラン、僕をペルラン伯爵の屋敷に連れて行ってくれないか? 新しく獣人を捕まえた事にしてさ」


 いきなり呼びかけられてアランは目をパチクリと見開いた。


「シリル? お前、自分が何を言っているのかわかっているのか?」


 テオが僕を止めようとするが、一度口から出た言葉は二度とは取り戻せない。


 それにここでじっとしているよりは多少危険でも、囚われている仲間と合流したほうがマシだ。


 皆は口々に僕を押し留めようと説得してくるが、もうここでじっとなんかしていたくない。


「シリルにその覚悟があるんなら行かせてやってもいいんじゃないか」


 突然、部屋の扉がガチャリと開かれ、そう言いながら入ってきた人物を見て僕は驚いた。


 そこに現れたのは王都にいるはずのランベール樣だった。


「ランベール樣? どうしてここに?」


 慌ててひざまずこうとする僕を制して、ランベール様が部屋に入ってきた。


「誰かにペルラン伯爵の屋敷に潜入してもらいたいと思っていたんだ。シリルがやってくれるならそれに越した事はない」


 いつものように護衛騎士を従えているが、その服装は貴族服ではなく、平民が着ているような物だった。


 それでもどことなく気品を感じさせるのは、やはり生まれ持ったものなのだろう。


「ランベール樣。随分とお早い到着ですね。もうしばらくは時間がかかると思ってました」


 テオが驚いていないところを見ると、事前に打ち合わせてあったのだろう。


「騎士を率いて来るのはまだるっこしいから、一足先にここに着いた」


 楽しげに語るランベール樣を護衛騎士がジト目で見ている。


 恐らく皆の静止を振り切って単独で来たのに違いない。


「ランベール樣。シリルをペルラン伯爵の屋敷に潜入させると言うのは本気ですか?」


「ああ、そうだ。正面きって訪ねたところでしらを切るに決まっているからな。シリルに潜入してもらってそこで騒ぎを起こし、その混乱の中に突入すれば、ペルラン伯爵も言い逃れは出来ないだろう」


 ランベール樣はダニエルの側にいるアランに目を留めた。


「お前がペルランの所に獣人を連れて行った者か? 何でも弟が人質に取られているらしいな」 


 ランベール樣に声をかけられ、アランはコクリと頷いた。


「ペルランの屋敷から獣人を無事に開放出来たらお前の罪は帳消しにしてやる。だが、失敗した時はお前の命をもって償ってもらうからな。弟を救いたければ協力しろ」


 アランは椅子から下りるとランベール樣に向かってひざまずいた。


「弟は俺が命令をこなすためだけに生かされています。弟を助け出して十分な治療を受けさせてやってください。お願いします」


 ランベール樣はブルブルと肩を震わせながらひざまずいているアランを助け起こすと、その肩をポンと叩いた。


「心配せずとも無事に救出出来たらちゃんと治療を受けさせてやる」


 ランベール様が請け負うとアランはハラハラとなみだを零した。


 僕はランベール樣と打ち合わせると首輪を着けて狐の姿になった。


「アラン。シリルを連れてペルランの屋敷に行け! 決してやつに悟られるなよ」


 アランはコクリと頷くと僕を抱き上げて宿を出てペルラン伯爵の屋敷に向かった。


 さあ!


 絶対に皆を助け出すぞ!

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ