106 アランの話
「僕が住んでいた里も襲われて僕と弟はハンターに捕まったんだ。それから奴隷商の所に連れて行かれて、この町の領主であるペルラン伯爵に売られたんだ」
アランはポツリポツリと自分の身の上話を始めたが、ダニエルとドニは彼を信用出来ないのか厳しい表情のままだ。
「首輪を着けられて猫の姿のまま檻に閉じ込められていたんだ。そのうちにペルラン伯爵がどこからかまた猫の獣人を連れてきたけど、それは僕の弟だったんだ。弟は最初に連れて行かれた所で酷い扱いを受けていたらしく、体はボロボロで今にも死にそうな状態だったんだ」
アランの様子を見て、その獣人がアランの弟だと察したペルラン伯爵は、アランに取引を持ちかけてきたらしい。
「僕が伯爵の言う通りに働けば、弟の命を助けてやるって…。だけどそれはほんの数日分の事で、弟の命を生きながらえさせる為には何度でも伯爵の命令を聞かなければいけなくなったんだ」
アランに言う事をきかせる為に弟であるブノワを手に入れたのか、それともただの偶然なのか判断がつかないが、ブノワを助ける為にアランは必死でペルラン伯爵の言う事を聞いたそうだ。
アランがペルラン伯爵の言う事を聞く度にペルラン伯爵はブノワに薬を与えて回復させた。
だけど決してブノワの状態を完治させはしなかった。
ブノワの生殺与奪をペルラン伯爵に握られ、アランは彼の命令に従わざるを得なかったそうだ。
「それで? ペルラン伯爵はお前に何をやらせたんだ?」
厳しい表情を崩さないままのダニエルがアランに問いかける。
「隣の国で獣人をペットにしてもいいという話になっただろう。それでペルラン伯爵は隣の国に売りつける為の獣人を俺に集めて来いと言ったんだ。先日のリリアーナ様や公爵の失脚で奴隷商が軒並み検挙されたから、里を襲うのが難しくなったからね。人間には獣人が区別出来ないけど、獣人ならすぐに判別出来るから…。それに獣人同士なら油断してくれるだろうという目論見もあったんだろう」
実際に獣人の連れ去りが発生しているのだから、アランの言う事も尤もだった。
実際、あらかじめ警戒をしていなければ先程アランに声をかけられた時に油断して首輪を着けられたかもしれない。
「ここ最近、あちこちの町で獣人を集めていたのはお前だったのか?」
怒りを押し殺したかのようなドニの声にアランは申し訳無さそうに頷いた。
「ペルラン伯爵に言われて探しに行ってたんだ。この町では獣人はいなくなってしまったからね。ブノワが気掛かりだからあまり遠くの町には行きたくなかったんだ。それでつい、この町に獣人がいるのに気付いて声をかけたんだけど…」
ちょうどダニエル達とはぐれて一人でいた僕に声をかけてきたっていう事か。
すぐにダニエル達が気付いてくれたから助かったけれど、ほんの少しタイミングがずれていたら、首輪を着けられて狐の姿にされて連れ去られていただろう。
「お前の話はわかったが、だからと言ってそれが本当の事だという証拠にはならないな。弟が捕まっているという話をして俺達の同情を誘っている可能性も捨てきれないからな」
ただ声をかけてきただけではなく、首輪を僕に着けようとしていたんだからアランを信用出来ないのも仕方がない。
「俺を信用出来ないのもわかるよ。だけどこのまま俺をペルラン伯爵の元に連れて行ってもどうせ上手い事かわされるに決まってるよ」
「そうだな。だから今、俺達は応援を待っているんだよ。ペルラン伯爵はお前が獣人を探しに行った事を知っているんだろう? 二~三日は戻らなくても大丈夫だな?」
他の町に獣人を探しに行っていたのならば数日はこの町を留守にしていたはずだ。
このままここに勾留していても何の問題もないだろう。
アランもコクリと頷いた。
少々、窮屈な思いをさせてしまうがテオが戻るまでしばらくこのままでいて貰う事にしよう。




