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103 ペルランの町

 王都を出て一晩野営をした後、ペルランの町に着いた。


 町自体はどこにでもある普通の町並みが広がっている、それなりに活気のある場所だった。


 だが、この町の何処かに獣人達が集められている場所があるはずだ。


 それとも既にギェルマン王国に連れて行かれてしまっただろうか?


 町の中を散策しながら、辺りの匂いや物音に神経を尖らせるが、これといった収穫はない。


「道に迷ったフリをして裏町に入り込んでみよう。どうせ表立った行動はしないだろうからな」


 テオと一緒に表通りから路地を抜けて裏通りへと足を進める。


 華やかな表通りとは一転して寂れたような通りが続いている。


 今にも崩れそうな家があったり、ツギハギだらけの服を着た子供がいたりと、かなり貧困が進んでいるようだ。


「この町を治めている貴族がいるはずだが、あまりにも貧しすぎないか?」


 衛生も行き届いていないらしく、嫌な匂いが辺りに漂っている。


 鼻が効き過ぎる分、この悪臭には耐えられない。


 何処の町にもスラム街はあるが、ここまで酷いのは初めてだ。


「こんなに匂いが酷いと獣人の匂いなんて嗅ぎ分けられないな」


 これ以上の捜索は諦めて一旦宿を探すことにした。


 ダニエル達がいつ頃合流するのかわからないので、とりあえず三日ほど滞在することにした。


 部屋に入るとすぐにベッドに直行した。


「あー、疲れた」 


 ベッドに仰向けになって寝転がると、テオが呆れたような視線を向ける。


「おいおい、たった一晩しか野宿をしてないのに疲れてるはずがないだろうが」


 それはそうなんだけど、やっぱり外で寝るよりはこうしてベッドに寝るほうがいいよね。


 そういうテオだってベッドに寝転がっているんだから、人の事は言えないはずなんだけどね。


 しばらくベッドでゴロゴロした後で、僕達は食事をするために外に出た。


 通りはそれなりに人が歩いていたが、そんな人達とすれ違っているうちに、妙な事に気が付いた。


 何処の町でも何人かは獣人とすれ違うのだが、この町では誰一人として獣人が見当たらなかった。


「ねぇ、テオ。さっきから全然獣人と出会わないんだけど…」


「いや、シリル。この町に入ってから獣人なんて誰とも会ってないぞ」


 テオの返事に僕はゾッとした。


 獣人をペットにして良いと言った隣国のギェルマン王国ならともかく、この国ではそれなりに獣人がいるはずだ。


 それなのにこの町に獣人がいないと言うことはすぐ隣がギェルマン王国だからだろうか。


 ギェルマン王国に獣人がいない以上、獣人をペットとして飼いたい人は何処かから調達するしかない。


 そうなるとやはり近い町から、となるから、それを察して獣人がこの町から消えてしまったのだろうか?


 そうなると他の国でもギェルマン王国に隣接している町から獣人が消えている事になる。


 そうなるとますます獣人を攫ってギェルマン王国に売りつけようと考える輩がいることは想像に固くない。


 幸い人間しかいないのなら僕達が獣人だとはわからないだろうから、攫われたりはしないだろう。


 ペルランの町に着いて二日後にようやくダニエル達が合流してきた。


「待たせて済まなかったな」


 同じ宿に部屋を取った二人が僕達の部屋に押しかけてきた。


 ベッドに腰掛けてちょっとした会議を行う。


「それで、どうだった? 獣人が集められているような場所はあったか?」


 ダニエルに聞かれたが、僕とテオは揃って首を振った。


「いや、それらしき場所は特定できていない。それどころかこの町には獣人が見当たらないんだ」


 テオが苦々しく告げるとダニエルは「やはり」と頷いた。


「ランベール樣も仰っていた。ギェルマン王国が隣にあるから獣人はいないかもしれないってね。…それから、シリルにちょっとこれを見てもらいたいんだが…」


 やけに歯切れの悪いダニエルを訝しく思いながら、僕は差し出された物を見て驚いた。


 いや、正確にはその服の匂いに驚いたのだ。


「…どうして、これが?」


 その服からは母さんの匂いがした。


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