101 会議1
ランベール樣からの手紙って僕が読んでもいいのかな?
そう思いながら受け取ると、既に開封してある封筒から中身を取り出した。
そこには先日カジミールからもらった魔法陣で首輪を解除出来た獣人がいた事についての礼が書かれていた。
どうやらアーリン兄さん以外にもあの首輪を着けられていた獣人がいたようだ。
僕達だけでなく、ジョスや他のレジスタンスの仲間が獣人の開放に動いているから当然だろう。
テオにもまた獣人の開放を頼みたいので、準備が出来次第連絡して欲しいと書いてあった。
「明日以降ならば伺えると返事を出しておいたから、そのうちに呼び出しがあるだろう。エリクがあの通り使い物にならないからよろしくな」
ニコリと微笑まれて僕は返事の代わりにため息をついたが、ある意味有り難い事ではある。
テオと一緒にあちこちに出掛ければ何処かで父さんと母さんに会えるかもしれないしね。
テオと話をしているうちにおじさんも仕事から帰って来たらしく、おばさんの「ご飯よー」と呼ぶ声で食卓に向かった。
「何か手伝いましょうか?」
僕の申し出におばさんはパッと笑顔を向ける。
「そう? 助かるわ。このお皿を出してくれる?」
お皿を持ってテーブルに向かうと既に座っているおじさんと目があった。
「シリルか。もう一人のお兄さんも見つかったらしいな。今度はいつまでここにいるんだ?」
今まで通りの表情を見せているが、時折口元がニヤけたように見えるのは、ジャンヌさんに子供が生まれるからに違いない。
「まだわかりません。ランベール樣から呼び出しがあるかもしれないので」
「また何処かに出かけるのか? シリルじゃなくてエリクが行けばいいのにな。…だが、身重のジャンヌを放ったらかして出かけられるのも困るし…」
おじさんは苦々しそうな顔をしながら悩んでる。
ちょっとしたジレンマだね。
そんな父親の相手をする気もないらしくテオは黙々と食事を平らげている。
それでも和気あいあいとした食事の時間を過ごして僕はあてがわれた部屋へと戻った。
テオの家族と過ごすのは楽しいけれど、同時に以前の生活を思い出してすごく悲しくなる。
兄さん達は見つかったのに、父さんと母さんがいないなんて…。
どうか次に向かった町で父さん達に会えますように…。
そんな事を願いながら僕は眠りについた。
テオの家に来て三日目にランベール樣からの手紙が届いて僕とテオは王宮へと向かった。
前回と同じ所に呼び出されて向かうと、そこにはランベール樣と一緒にジョス達のグループも招かれていた。
「シリルだっけ? 久しぶりだな。君のおかげて首輪の解除が出来て助かったよ。エリクがあの通りだからよろしく頼む」
ジョスがケラケラ笑いながら話しかけてくる。
僕は笑顔で返すと空いている席に着いた。
「皆、揃ったな。それでは始めようか」
ランベール樣の言葉に皆ピリッとして背筋を伸ばす。
何やら難しい顔をしているようだが、何かあったのだろうか?
「先日、奴隷商を摘発したことで獣人の里が襲われるという事はなくなったはずなのだが、それとは別の問題が発生した」
ランベール樣の話に部屋の中にざわりとした空気が流れる。
「どうやら旅をしている獣人が攫われているらしい」
その言葉に僕はハッとしてランベール樣の次の言葉を待った。
「旅人だからすぐには発覚しなかったのだが、どうもおかしいと宿屋から連絡があった。宿泊するために前金を払って宿を取ったのに外出したまま帰って来ないということがあったそうだ。気付かないうちに出入りしたのかと思っていたが、ベットを使った形跡がないし中には部屋に荷物を残したまま消えていた旅人もいたらしい」
ランベール樣は一旦言葉を区切ると部屋の中にいる皆を見回した。
「調べた結果、消えた旅人はすべて獣人だという事がわかった」
それを聞いて僕の頭の中に恐ろしい考えがよぎった。
まさか、僕の父さんと母さんがその中に入っているのではないかと…。




