面接
「はぁぃ、っと!あたしは【信楽クロエ】。面接官だよー」
「は、はじめまして。山田サナエです。ほ、本日は宜しくお願い致します。え、えっと」
「あはは、落ち着きなよー。堅苦しいのはやめてやめて?下手に取り繕われるとやりにくいからさー」
「あ、ハイ。で、ここは?どこですか?」
「え?事務所だけど?」
えっと、ダンジョンに案内されて何処からともなく現れた扉を入ると何処ぞの大きな倉庫?みたいな場所。その中に休憩室みたいなフロアがありました。意味不です。
兎に角、面接なので言われる前に履歴書を渡す。
「ありがとね。えっと……どれどれ?」
これ、流れ的に「自己紹介を」とか「自己分析」とか言われちゃうのかな。あ、いやそれは……あるかも。
「んー、と。正社員で働いてるんだねー。」
「は、はい。そうです」
「アルバイトで募集してるんだけど、その会社さんは副業OKなの?」
「規則にも許可されてるので、問題ございません。あ、あと、仕事はカレンダー通りです!」
「おぉ!じゃ、土日祝のどっちかに入ってくれる感じかな。うん、いいね!」
あ、流れ的に評価高い……のかな?
って、普通に面接してるけどさっきドクターがいたんだけど。いなかったことにされてません?
「あたしらは懸賞金稼ぎとかじゃないからさ。そこは気にしなくていいんだよー」
「さ、さいですか」
「うん!人殺して徳はないよ。善悪問わずに、な」
あ、死んでないんだ。
「じゃ、と。質問良いかな?あ、答えられない場合は「答えたくない」でいいからね。けど、答えてくれると嬉しいかな」
「は、はい!」
「では…………」
ああ、どんな質問だろうか。
貴女の夢は?したいことは?いや、自己PRと志望動機か。聞かれて困るプライベートな質問は止めてほしいかなぁ。
「山田さん。貴女の苦手タイプはいますか?」
「に、苦手なタイプ……ですか」
「そそ。あ、具体的なエピソードとかいらないから、簡潔にねー」
に、苦手なタイプかぁ。
「か、感情的な方、です……かね」
「感情的かー。確かに、感情的に物事を判断するのは不味いからねー。おっけー、ありがとー!じゃ、次の質問は」
つ、次はなんなのだろう。
ご、ごくりんこっ!
「サービス業界でよくあると思うけど、お客様は神様です。これ、どう思いますか?」
「クソですね」
「だよねー」
ハッ!思わず即答してしまった。
……あー、もういいや!なるようになれ!
「因みにお客様の中にも神様はいるけど、何でも許される訳じゃないからねー。前に「ワシは客だ!客は神様だろう!」って言ってた人が、偶々居合わせた神様がぶちギレてたね。「神を愚弄するか!」って。まあ摘まみ出したからいいけどね」
「え?」
「あ、だけど客を蔑ろにしろとか失礼な態度オッケーってな訳じゃないから。そこは勘違いしないでね?最低限のマナーと礼儀はしてもらわないと、それはそれで困るから」
「は、はい」
「うん、良い返事だ」
質問は続いていく。
けれど、クロエさんが求める答えは基本簡潔的だ。具体的なエピソードとかは聞く意味はないとのこと。意外だったのは、自己PRとか志望動機とかはなかった。あったのは、私にとって得意不得意なこと。そして、既に植え付けられている様な価値観に対しての質問がメイン。さっきの「お客様は神様です」という様な感じ。
最初に言った奴、まじで許さん………じゃなくて、お客様は神様です。は別に問題はない。ただ、お客様は神様です。という言葉を客ならば何をしても良いと勘違いした奴らのせい。言うだけならまだ許せる、か。
「………ん、よし。面接は以上だよ。長々と質問しちゃってごめんねー?」
「い、いえ!私も質問したので。それに……あの、私。学生時代のアルバイトとか、就活してた時の面接はとても、嫌なこととか………結構返答に困る質問とか、プライベートな、こととか質問されて苦手というか怖かった、んです。け、けど、クロエさんの話……とても、あの、変かもですが、新鮮でした」
「あははー!ま、普通の面接のようでそうじゃないかな。在り来りの質問ってさ。予め用意してるだろー?そんな用意された返答は意味はないと思うんだよねー?それに、新卒なら同じ質問されてめんどくさくるでしょー?知らんけど~」
まあ、確かにそうかも?とは思ってしまう。
他の人は知らんけど。
「そうそう!そのチラシって、何処で手に入れたのさ?」
「え?えっと………実家にある神社で。子供の頃から日課のお参りをしてたら目の前に」
「神社かぁ………因みに、その神社って、鳥居が一杯ある京都だったり?」
「あ、そうです」
「そっかぁ……伏見かぁ」
鳥居が多い神社って、限られてるからね。
「ま、それに関しては無視していいかな。よぉーし!山田サナエくん!」
「は、はい!」
「君、採用ね」
「あ、ありが………はへ?」
採用?サイヨウ………早すぎませんか?
こ、これって、人材不足のブラック企業がよくやるパターンのやつでわぁ!
「採用とは言っても、結局やってみないと結果的にはわからないからね。三ヶ月は試用期間だから、もしその期間に無理だととか辞めたいとかになったら遠慮なく言ってよ。因みに試用期間中の待遇は変わらないよ。変えたら試用期間の意味なくなっちゃうし」
い、一理あるのかな?
「じゃ、来週の土曜日からお願いしよっかなー?あ、日曜日出社の場合は、午前中にシフト入れるからねー。仕事前日の午後からはゆっくりしたいでしょー」
あ、ありがたいかもー!
「出勤は来週の土曜日9時からでいいかな?」
「はい!」
「。じゃ、君にはこれを渡しておこーう!」
クロエさんから渡されたのは、竹筒でした。このサイズ、一節だから12cmかな。え、ナニコレ。
「これは君を仕事場に連れていってくれる子さ!」
“よろしくっすー”
あ、管狐でした。
クンクン私の匂いを嗅いでる……可愛い。え、でもこの子の面倒とかは。
「普段は竹筒だから、中にはいないさ。けど指定の時間になったら現れるから………君の部屋に現れても良い場所に置くか、サイズも変えられるし小さくして日頃から手から離さず持ってても問題ないからねー」
「あ、そうなんですね」
「じゃ、来週の土曜日!よろしくねー!」