表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

はじめての副業

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


 《速報です。》


 《昨日未明、地方議員『居眠(いねぶり)マコト』さん83歳が議会場の正面玄関の上に磔にされて死亡しているのを常駐してきた警備員が発見したとのことです-____》


 《『居眠(いねぶり)マコト』さんは数年前から何人もの女性に性的被害を行ったとされています。しかし、不起訴になり____》


 《警察からの発表では犯人は【ドクター】と名乗る殺人鬼であり_________》


 《殺人鬼【ドクター】は有名俳優や市議会議員、暴力団幹部などの高齢の権力者ばかりを狙う殺人鬼です。数日前に元総理を護衛の六段の能力者(・・・・・・)47名も殺害されています________》


 《殺人鬼【ドクター】は最重要指名手配されています。世界各国が結束して殺人鬼【ドクター】の逮捕を_______》


 《しかし、殺人鬼【ドクター】は若者達から絶大な人気があります。》


 《凶悪指名手配犯の殺害を始め、汚職や犯罪を犯した有名人著名人の殺害未遂。他に_______》


 《________。ですが、政府は殺人鬼【ドクター】の行為は決して許される行為ではないと_____》


 《もし、殺人鬼【ドクター】を目撃した場合は、刺激をせずに警察にご連絡をお願い致します。》


 《!》


 《そ、速報です!あ、新たな速報です!》


 《………た、たった今、総理官邸が、ど、【ドクター】にとって破壊され》


 《さ、更地になったと、》

 


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



 友達、いなかったよ。


 うん、本当に友達がいないわけではない。


 私がしている仕事はカレンダー通りの休み。土日祝休み……なのだが、月に二回は出社。月から金まで働いて40時間になるし土曜日は残業代とかは出ない。何故ゆえに。まあ不満を持っても仕方がない。それを理解した上で働いてるんだもの。


 で、大学時代の学友は私の様な働き方ではなく土日祝は一番忙しい。つまり、そういうことだ。


 久々の土曜日。


 何時もなら昼まで寝てしまいたい気分ではあるものの、副業の面接の為に面接会場に訪れていた。


 場所は………あれ、どこだろう。


 電話したのは覚えてる。対応してくれた人は女性だったのも覚えている。そして、場所を、時間を確かに聞いたのにも関わらずわからない(・・・・・)。そしてここまでどうやって来たかも覚えていない(・・・・・・)。しかも目の前、【ダンジョン(・・・・・)】なんだけど……?


 はてさて、どうしたものか。



 「おや、こんにちは」


 「ぇ、あ、こ、こんにちは」



 途方に暮れていると白衣を着た青年と出会った。白衣を着ているからか、医者の様な方だと思ったけれど。少し、というよりか何処かでその顔を観たような気がする。けれども、思い出せない。



 「お嬢さん、お出掛けかい?」


 「あ、いえ、面接に」


 「面接……?ふむ、君は学生なのかな」


 「あ、いえ。これでも社会人で、成人、して、ます。どうぞ、お気にならさずに」


 「そうかい?いや悪いね。年頃の女性が一人だと危ないからね」


 「あ、ハイ。ソウッスネ」


 「しかし、社会人でバイト……か。副業ってトコかな。ん、嘆かわしい。一生懸命働いているのに、それ相応の対価を払わない経営者は経営者ではない。クズだ。君はそう思わないかい?」



 ………あれ、何か語り始めたぞ。




 「人を感情もない道具だと勘違いしているゲロ共が多いんだ。安い賃金で働かせる癖に、その仕事量は多い。しかし、休みは満足に取れない。しかしゲロ共は変わりは幾らでもいると無知な考えをしている。そして若者から搾り取るんだ。本来、搾り取られるのは逆なのにね」



 頭、ヤバい人かな。



 「昨今の日本も酷いものさ。権力さえあれば、犯罪なんて幾らでもしていいからね。と勘違いするバカ。若者を喰いモノにする老害。まあ、それは自然の摂理とは違うものだと私は思うんだ」



 あ、やべ。


 これマジの―――――。



 「私は色々と考えた。考えて考えて………そして、結論に至った。


 人は増えすぎた。


 確かにそうだ。


 しかし、厳密には。


 さっさと死ねばいい老害共が蔓延っているだけだ、と。


 自然の摂理だ。


 朽ちて、腐った実は


 枝から堕ちて、大地の養分になるべきだ、と。


 本来行き渡る筈の若い実、その栄養を奪われないように


 お嬢さん、君もそうは思わないかい?」



 空気が、重くなる。


 息が、苦しくなる。


 胸が、押し潰されたかの様に上手く空気が吸えない。徐々に息が苦しくなって、必死に肺を動かそうとするけど。



 「私は、今の世を恨む。そして憎む。


 人は最大の過ちを犯した。


 それは、命の延命(・・・・)だ。


 かの大神(・・・・)が、何故あの医者(・・・・)を殺したのか……今ならその理由は理解できる。


 今の世、その医学は延命ではない。


 蘇生(・・)だ。」



 は?そ、蘇生なんてある筈が。



 「人が生き返るなんて」


 「心肺停止した場合は、電気ショック。これだけでも十二分な蘇生だ。また心臓マッサージも然り。これもある意味蘇生。更には現代の延命治療全てが、蘇生に該当する(・・・・・・・)


 

 んなめちゃくちゃな……。


 心臓マッサージとかって、若い人にもなるんだから。それをダメだなんて。それを過ちだなんて。



 「死は、死だ。確かに身近にいる家族や恋人、親友が死ぬのなら………受け入れることは難しかろう。そして死は、恐ろしいものだ。が、さして死というものは存外恐ろしいものではない、と私は思う。まあそれは関係ない、か」



 ……ヤバい、思い出した。


 【ドクター】だ。


 この人、大量殺人鬼(悪い権力者とか犯罪を犯したのに無罪になる方々や裏組織の方々が割合を占めている)であり、日本だけではなく海外でもその名を轟かせる大犯罪者。日々、世界中の悪い方々がドクターに恐れて日々を過ごしている。


 けれど、戦争を止めたり戦地で巻き込まれたそこの原住民の治療。冤罪で捕まった政治家に無罪の証拠やその冤罪を仕向けた警察などの悪事に加担した者達の言い逃れ出来ない証拠をメディアや裁判所などに送付することもあり、一概に悪者とは言い切れない。


 私は嫌だなーって思う。あ、嫌いではないよ?多分、権力で己の願望を振る舞う人達にとっては天敵であり、強者から摂取される弱き人々にとっては正義の味方……弱者の味方なんだろう。


 でも、なんと言うか。言葉で表現しにくい。こういうところが、安月給なんでしょうか。はあ、もっと語彙力があれば。


 兎も角、ヤバい。


 語彙力無くてごめんなさいだけど、そんな目の前に大量殺人鬼はダメだって。これ、死ぬんじゃ!?



 「さあ、君は」


 「おーぅい!遅れてごめんねぇ!」



 !?


 え、誰?


 でも、声は………電話の人!



 「んー?おろ。面接の子って、君だよね?あれ、医者の人?アンタも面接?あられー?おっかしーな。一人のハズなんだけどさ?」


 「………いえ、私は偶々ここに居合わせた者ですよレディ」


 「あ、そーなの!おやぁまぁ、こんな場所に来るなんて中々物好きだねぇ」


 「そうですか?ダンジョンを探索する者達は日頃通るでしょう」


 「ほーぅ?今、関係者以外(・・・・・)立入禁止(・・・・)なんだけど?」


 「………」


 「因みに原因は、事件があった(・・・・・・)から。テレビとかみたい感じ?私はラジオ派なんだけど、速報してたんだよねー」


 「それはそれは。恐ろしい世の中になったものですね」


 「まあ総理官邸はやり過ぎじゃね?とは思うけどさ。ま、あたしら(・・・・)には関係ないこと。でも、心配になっちゃうんだよ」


 「はて、心配ですか」



 こ、怖い怖い。


 何フツーの会話かと思ったら、急に温度が下がるこの展開。あのー、一般人なんですけど私!



 「あーごめんごめん!君が【山田(やまだ)早苗(さなえ)】さんかな?」


 「!は、はい!」


 「よい返事~。じゃ、今から面接………といきたいんだけどね。ちょっと、問題解決してくるねー?」


 「は、はい!?」



 問題解決って、まさか!



 「なるほど。私を捕らえる、と?」


 「【ドクター】さん、だっけ?頭の悪そうな異名を貰えてハッピーかい?厨二病なら嬉しいでしょ」


 「ははは。そんな頭の可笑しい名を名乗ったつもりはないのですが」


 「じゃ、正義の味方は楽しいかい?」


 「いえ全く。正義の味方………そのようなものを目指した結果が、このザマですよ」


 「へー。じゃ、止めればいいじゃん。あとここから出ていってくれない?ここは乙女の花園なのー!男性禁制なんだよねー!」


 「ははは。それは困った。何せ……レディ。貴女を無視できない(・・・・・・)。余りにも………」


 

 ドクターは明らかに警戒している。この………面接官の人。

 艶やかな長い黒髪をサイドポニーテールで結ってるけど、その纏められた毛先に括られていたのは竹筒。 


 竹筒?たけ、つつ?またはbamboo tube.



 “こんちゃっす”



 竹筒から、小さな狐がひょっこりと。


 絵文字で例えるとまさしく【(。・ω・)ノ(コレ)】だ。あ、かわいい。サイズ的に掌サイズ。かわいい、兎に角かわいい。こんな私にわざわざ挨拶ありがとうございます。あ、可愛くて何でか感情が緩む。



 「危険すぎる」


 「そりゃこっちのセリフだよ。さっきから辺りに()張り巡らせて宣戦布告かってー……………のっ!」


 「!」



 刹那、両者が衝突した。


 女の人は、両手に白と黒の剣を背中から抜き出して辺りそこらにある何か(・・)を剣舞の如く舞いながら切り裂き、そしてドクターに斬りかかった。

 ドクターはそれに迎え撃つようにトンファーで防ぐ。けれど、武器の性能。つまり、切れ味や耐久性は互角。どちらも欠けることも砕けたりなど破壊されていない。

 ならば、それ以外の話。


 ドクターが、吹き飛ばされた。弾丸の様に、ビュン!と音を置き去りにして。後から破壊音が響き渡った。



 「じゃ、面接しよっか山田ちゃん」



 面接どころの話じゃなくないですか?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ