自動人形のコックさん
そんなこんなでできた村の少し離れた場所にうちの雇い主のやしきはある。
大災害の前からあるもので、災害前から残ってる他の施設同様広大な地下施設が広がってる。
どこまで続いてるかわからない上に他の地下施設と繋がってるとかで迷ったらまず助からないと言われている。
ボディーガード対象のここの双子の子供だけど、前に木の上に引っかかったボールをとってやってそれっきり。
虫が怖いから木には登れなかったので地面に落ちてる石をボールに当ててなんとか落とすというなんとも格好の付かないやり方で落とした。
虫は怖い。
いくら体が頑強でも関係ない。
ここの子供に前、蛾の幼虫を見せてもらった。
見せてもらったと言ってもこっちから見たいって頼んだんじゃなくて、ある日いきなり何の脈絡も無く見せてきた。
新しく雇われた大人の俺と距離を詰めようと気をきかせてくれたのだろうと、なんとか醜態を晒さずに切り抜けることができたが、かなり危なかった。
僕みたいな虫嫌いはそれを連想させるものを見るだけで、自分の首筋に気持ち悪い幼虫がくっついてるんじゃないかって錯覚に襲われて気が気じゃなくなる。
そんな感じでここの子供達とは虫をプレゼントされるくらいには打ち解けている。
ここの主人には子供が全部で五人おりうち三人がすでに成人している。
三人はもうここには住んでいないとはいえ、頻繁に屋敷に顔を出すためボディーガードの仕事もそこまで緊張感無くても許されている。
だが、僕が雇われたことにより、これから顔を出す頻度も減ってくるだろう。
彼らも忙しい。
僕も一日のうち会話するのが飯屋のオジサンだけという状況よりは随分と楽しい。
ここではメイドさんと僕の他にコックがいると言ったけど、コックは人間じゃない。
この屋敷にくっついてた管理人のような何かだ。
リクエストすれば食事の時間じゃなくても料理してくれることに最近気づいた。
午後三時にチャーハンとオムライスをセットで頼んじゃったりしてる。