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異世界少女、放浪記。  作者: げっとは飛躍のせつなさ
第1-7章 首都、マリーナへの遠征と、初めての大都市、のおはなし

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38 - マリーナでお仕事探し

 人混みをかきわけかきわけ、菜優は仕事を求めて歩みます。マリーナの街はまだ右も左も分かりませんが、ガードの人たちならきっと詳しいでしょう。菜優は掲示板とガードの両者を探しながら、マリーナの街を彷徨い歩きました。


 しばらくして、ようやくガードの人に出会うことが出来ました。仕事を求めているので、依頼の掲示板がどこにあるかを聞くと、ガードの人は丁寧に答えてくれました。そして菜優の胸元に輝くバッチを見つけると、続けざまにこうアドバイスをくれました。


「キミ、たすけあうジャパンの組合員だね?なら、むこうの通りをまっすぐ行った突き当たりに、たすけあうジャパンの本部があったはずだ。掲示板を覗くより先に、そちらへ挨拶に行ったほうが良いかもしれないね」


 菜優はそれを聞いて、それなら先にたすけあうジャパンの本部へ行ったほうが良いと思いました。ヴァレンタインと同じようならきっと、そこに依頼も集まっているでしょうし。菜優はガードの人に頭を下げながら、たすけあうジャパンの本部へと向かいました。


 教えてもらった通りに歩いていくと、やがて道路は丁字路に突き当たり、その正面に大きな建物が見えてきました。白い煉瓦を積み上げて作られたそれは、菜優たちが通っていた学校よりも高く聳え立ち、ところどころに小さな窓が据えられているのが見えます。まるで、お姫様のの住む城のようだな、と菜優は思いました。


 門は開いており、その奥にある扉すら開かれています。そこから、人の出入りも多く見られるので、入りづらさはありませんでした。菜優はするすると門の中へと、そして建物の中へと進入していきました。


 中は天井から吊るされた赤褐色のランプに暖かに照らされていて、柱と天井のつくところに浮き彫りがされていたり、カウンターは丁寧に磨かれた檜にワックスがかけられていたり、羽根ペンが据えられたり。天井を見やればシャンデリアを模した照明が、橙の光を放っていたり。


 ヴァレンタインにあった、酒場のような雰囲気すら感じられるあの支社とはほど遠く、とても豪奢な内装を施されているのです。


 菜優は多少の居心地の悪さを感じながらも、受付へと訪ねました。受付の人は菜優を、そして胸元に輝くバッチを認めると、菜優を同志として迎え入れてくれました。


「ようこそ、我らの同志よ。見ない顔だけれど、マリーナの街ははじめてかい?」


「はい。ここには今日着いたばかりで」


「そうかい。ならいくつか説明したいことがある」


 そう言って受付の人は、カウンターの奥へと引っ込んでいきました。ややあって、受付の人が戻ってくると、資料らしきものを手に持って戻ってきました。


「とりあえず、これらを持っていきなさい。マリーナとここの地図に、この施設の利用の仕方や規範が書かれた手帳だ。ああ、あと手帳にも書いてあるけれど、この裏手には短期滞在用の宿舎がある。自由に使ってくれて構わないよ」


 宿舎があると聞いて、菜優はしめたと思いました。落ち着いて情報を整理したり、寝泊まりするのに使えそうです。


 よくよく考えると今日すぐに仕事が見つかるとも限らないですし、次の驢馬車の定期便がくるかも把握出来てません。そんな菜優にとっては、とても都合よく聞こえました。


 宿舎は受付の裏手、一、二分ほど歩いたところにありました。裏手と聞いた割には遠くありましたが、それだけたすけあうジャパン本社の敷地が広いということでもあります。


 地価高いはずの首都の真ん中で、これほど大きな敷地と、立派な建物を持てるということが、この組合がどれほど大きな力を持っているのかの証左でもあるのですが、大人と呼ぶには幼い菜優では、まだ意識出来ないことでしょう。


 たどり着いた宿舎は、向かって左手の男性寮と右手の女性寮に分かれていたので、菜優は右手へと折れて女性寮のほうへと向かいました。中は受付の豪奢さとは打って変わって質素な作りでした。


 飾り気のない柱と柱の間は白壁に埋められていて、天井をみやれば傘のついた白熱灯が吊るされていて、淡い橙に輝いて廊下を照らしつけています。


 受付のあった入口の建物とのギャップに菜優は驚きましたが、元いた世界で通っていた学校のような雰囲気のあるこちらのほうが親しみを持てるというものです。それにぱっと見た感じ綺麗に清掃されているので、居心地の悪いものでもありません。


 菜優は、宿舎の受付に声をかけて、部屋を借りたい旨を伝えます。


「すみません、部屋を借りたいのですけれど」


「分かりました。何日ほど滞在されますか?」


 聞かれて、菜優は戸惑ってしまいました。そう、具体的に何日滞在するつもりなのか、目算をつけていなかったのです。


 それでも聞かれたからには答えなきゃいけないと、菜優は必死に頭を回しました。次にヴァレンタインに帰れる驢馬車がくるのがいつかはわからないからなるべく長く取りたいけど、長すぎるとかえって迷惑かもしれない。とはいえ短すぎれば、逆に自分が困ってしまう。


 待たせてるから早く答えなきゃと焦るたびに、菜優の思考は混線していきます。ああでもないこうでもないと唸っていると、やがて受付の人から声をかけてきました。


「決まってないようなら、とりあえず一日にしておきます。延長が必要になったらまた申しつけください」


 そう言われて、菜優はあっけに取られました。なんや、延長すれば良かったんか。というか、早めに言うてくれればええのに。なんて独り言ちながら鍵を受け取り、そこに書かれた部屋、〇三一一号室を目指すのでした。

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