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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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084-死に際の一撃

 カウンターの顔面、そしてボディ、再度の顔面。

 それで多少吹き飛んでも、アールは魔物が起き上がるよりも早く追いつき、再度のグローブが叩き込まれる。

 円を描く様に内側に弾き飛ばし、まるでピンボールの様に打撃を継続的に打ち込んでいる。


 他の魔物が近くに居ればついでに『天の裁き(ガランメルシア)』で頭を吹き飛ばし、近寄ることすら出来ていない。


『ジェ、アッ、ジャァア!』

「フンッ」

『ジョッ!?』


 黒い魔物が何とか反撃しようとしても、その全てを軽々とかいくぐり、同時にカウンターする。

 そうして重い打撃音が10発以上も続き、明らかにアールは魔物を圧倒していた。

 しかしそれでも尚、魔物は死んで居らず、甲殻もひびだらけではあるものの、完全に砕けては居ない。


「『何て奴だ……』」


 アールの攻撃も凄まじいが、あの魔物のタフネスも尋常では無い。

 吹き飛びすぎないようにアールが加減していたとしても、あれだけ殴られれば普通は瀕死くらいにはなるだろう。

 だが見る限り、あの魔物はまだピンピンしていてアールに反撃を繰り出している。


 とは言え、あれではもう時間の問題なのも確かだろう。

 俺がそう判断して周囲に目をやると、ちょうどバルダメリアさんが俺の側に駆け寄ってくるところだった。


「デルミス、大丈夫か!?」

「『は……』ハい」

「ホントか? さっき何か変だっただろ。どこかやられたんじゃないのか?」


 彼女は俺の身体に変なところがないかグルグルと見始めたので、俺はお腹を押さえるジェスチャーを彼女にして見せた。


「食ベル、少ナい」

「食べる? ……ってああ、何だ、腹が減ったのか?」

「ハい」

「ったく、心配させんなよな」


 ただの空腹であると分かったせいか、バルダメリアさんは露骨に安堵して胸をなで下ろしている。

 周囲を見渡してみればちらほらと他の神官の姿が見えていて、もう魔物に対して押されているような様子も見られない。


「チェレミー様! 良かった、ご無事だったんですね」

「アンタ達……も無事で良かったわね。でも後で再教育だから」

「は!?」


 チェレミーも他の神官と合流しており、彼らは大穴の方に向けて『天の裁き(ガランメルシア)』を連射している。

 また、見れば大穴の方から来る魔物の数も徐々に減っているように見えるし、これならもう俺が戦う必要も無いだろう。


「神官様に任せてアタシ達も下がろうぜ。デルミスも疲れただろ」

「ハい」


 バルダメリアさんもそう判断したらしく、彼女は俺の左腕を掴んで引っ張った。

 その時ちょうど、ゴォン! という一際大きな重低音が響き、何事かと目をやれば、アールが上を見上げてグローブを腰だめに構えている。

 彼の視線の先では黒い魔物が天高く吹き飛ばされているので、どうやら大技で決めにかかるところらしい。


「これで───」


 カッ! とアールの全身が光り輝き、彼が魔物に向かって大きく跳躍しようとした、その時だ。

 空中でグルグルと回転しながらも、魔物の胸が大きく膨れ上がり、明らかに何かをやろうとしていた。

 そしてその瞬間、奴はアールでは無く俺たちの方に視線をやり、俺は確かにあの黒い魔物と目が合った気がした。


「終わりです!」

『ジェェェェ……ナアアアアアアアアア!!!』


 アールが跳躍し、その拳が一瞬で奴の元に届く、その刹那。

 黒い魔物の口が大きく開かれ、ほんの短時間だけ、白い線がその口から発射された。

 ヒュンッと空気を裂くような音と共に、俺の直ぐ側を縦に白線が走る。


「チィッ!」

『ヴァッ!?』


 直後にアールの拳が届き、その首が捥ぎ取られて魔物の攻撃は止まった。

 しかし既に行われた攻撃は、確かに俺たちに届いていたのだ。


「え?」

「『あぐっ!?』」


 俺の左の上腕が急に熱を持ち、身体が右に傾く。

 そちらを見ればバルダメリアさんが俺の腕を持っていて、その腕は下に垂れ下がっている。

 明らかに角度がおかしく、俺が自分の左腕の場所を確認すると、そこには俺の腕は無く、ただ切断面からボタボタと青い血を垂れ流しているだけだった。


 もう腕を失うのは何度目だろうか?


「「キャアアアアア!?」」

「で、デルミス、腕、腕が……」


 そんな事を考えていると、背後の町人の方から多数の悲鳴が上がった。

 バルダメリアさんも酷く動揺していて、自分の持った腕と俺の腕の切断面を何度も見比べている。

 俺の腕もそうだが、守られていた町人は固まっていたから、今の攻撃で何人も死んだだろう。


 バルダメリアさんには当たらなかったし、俺も再生できるので、ギリギリ幸運だった。

 ほんの少し確度が違えば、俺か彼女も死んでいただろう。


「『ぐぅぅ……くそっ』」


 しかし傷は傷で、痛いことには変わりない。

 魂のエネルギーは残り少ないが、早々に回復してしまわなければ。


「あ、アンタ、それ……」


 だが俺がそれを実行する前に、横合いから呆然としたような声が聞こえた。

 チェレミーの声だ。彼女は俺の方を見て目を見開き、非常に驚いた表情をしている。

 それほど怪我が衝撃的なのか、それとも今の一撃が衝撃的だったのだろうか?


「青い……何で……」

「!」


 しかし彼女が驚いていたのはそんな事では無く、彼女は俺の血の色に驚愕していたのだ。

 青い血は魔物の証。

 血を見れば俺が魔物であることは一発でバレる。


 戦いに必死になりすぎて、俺はそんな事すら失念してしまっていたのだ。


「『ぐぅぅぅぅ……っ!』」

「あ……って何だ、デルミス?」


 それに気が付いた瞬間、俺は即座に『力』を集めて腕を瞬時に復元して、バルダメリアさんが握っている腕を抱え込んだ。

 他の誰かに見られてはいないだろうか?

 周囲に視線を走らせると、ぱっと見ではこちらを見ている神官はいないし、こちらを凝視している町人などもいない。


 殆どの人間が何が起こったのか分からず、視線をさまよわせているようだ。

 まぁ多くの人間が返り血で真っ青なので、見ていたとしても見間違いだと思ってくれているのかも知れない。


「くっ何が! チェレミー様、今のはいったい……」

「そんな……」

「チェレミー様?」

「……」


 ただチェレミーには確実に見られた。

 彼女は神官であり、絶対にバレてはいけない相手だったのに。

 俺は彼女が何かを言う前に口止めをするか、早々にここから逃げ出さなければいけなくなったのだ。

ただでは死なん!

道連れ攻撃とか、最後まで嫌なことをしてくるっていう。

まぁこれだけ強くてあっさり死ぬボスキャラなんて、そうそう居ないよなぁって。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 戦闘がドラゴ〇ボール的格闘シーンで再生されます。ふっとびシーンはロマン [気になる点] 見られちゃいけない相手にこそバレるのが秘密の常。でも変に逃げるのも認めたようになるし、難しいところ。…
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