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ステゴロソウルイーターの冒険譚  作者: 鳥野啓次
第四章 ハルマトン・ダンジョン
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083-タイムアップ

 魔物の体を覆う黒い甲殻がひび割れ、吹き飛んだ黒い魔物は地面へと叩きつけられる。

 しかし奴は一度大きくバウンドしたものの、その直後には空中で体を捻り、四肢を使って地面へと着地していた。


『ジェェェナァァァァ……』

「『チッ』」


 何という耐久度、そして動体視力と身体能力をしているのか。

 奴は躱すことこそ出来なかったものの、視線だけは捉えられていた。

 しかも甲殻は割れてはいるものの、欠片が剥がれた程度で砕きれず、動きもそれほど鈍った様には見えない。


 ダメージ自体はある様だが、くたばる程にはとても見えなかった。

 あれを倒すには、今の打撃を何発も打ち込まなければいけないだろう。


「『なら───うっ!?』」


 何度でも殴ってやろう。

 そう思った筈が、俺はその場で思わず踏みとどまって、腹を押さえた。

 これは───空腹感だ。


「『こんな時に……!』」


 残されたエネルギーの量は魂にして1つか2つ程度だろう。

 いつの間にそれほど使ったのかは分からないが、これだけ戦い続けていればそうもなる。

 一番抜かってはいけないところで抜かった。


 もう限界だ。今すぐにバルダメリアさんを連れて、ここから逃げ出さなくてはならない。

 そうしなければ俺が周囲の人間を襲ってしまうことになる。


「デルミス、どうした!?」

「バル───」

『ジェナアアッ!!』

「『ぐぅっ!?』」


 しかし俺が彼女に声をかけようとしたところで、黒い魔物はお返しとばかりに襲いかかってくる。

 俺はそれに対して、極力『力を』使わずに防御しなければならず、腕からする嫌な音と共に、俺は吹き飛ばされてしまった。

 分かっていたことだが、この魔物は膂力も恐ろしく、そして俺は『力』なしではそれに対抗できないくらいに貧弱だった。


「デルミス!?」


 同じ魔物という括りである筈なのに、なぜこうも異なるのか。

 この魔物には理性というものが存在せず、凶暴で、俺が逃げ出せばその力でチェレミーや町人を襲うだろう。

 それは許されてはいけないことだが、俺にはそれを止めるだけの力がもう残されていない。


 酷く理不尽で、どうしようもない話だ。

 しかしだからと言って、諦めろというのか?


「『痛っつ……くそっ』」


 こんな怪我など直ぐに治るが、そんなことよりも、今は無力なことがただ悔しかった。

 そんな風に俺が悔しがっている間も時間は過ぎていて、黒い魔物はひたすら俺に襲い掛からんとしている───その時だ。

 空から一本の白い光が降り、奴に直撃したのは。


『ジェナァッ!』

「上!?」


 あれは『天の裁き(ガランメルシア)』だ。

 魔物の黒い甲殻はその全てを散らしたが、それでも奴の注意は即座に上方に逸れ、チェレミーも驚愕の声を上げる。

 何故ならあの角度から打ち込まれたということはつまり、誰かが上空に飛んで魔法を撃ったからに他ならないからだ。


 しかしその直後に白いシルエットが俺の横を通り過ぎ、気が逸れていた黒い魔物の胴体を殴りつけた。


『ジュアッ!?』

「むっ!」


 殴られた魔物は多少なりと吹き飛び、殴りつけた方も拳を庇う様にして大きく飛び退く。


「え? あっ、アーリスマディオ!」


 その神官は俺がよく見知ったアールだった。

 彼は町で戦っていたはずだが、そちらの方が片付いたのか、こちらの戦場に駆けつけてくれたらしい。

 俺は大きく安堵した。彼は俺が知る中では誰よりも強い筈だ。


 とは言え、アールが強いのは魔法であり、あの黒い魔物はそれを無効化してしまう。


「ソイツに魔法は───!」

「分かっています。そして、見ていました」


 チェレミーもそれに気が付いて警告をしようとするが、アールは彼女の声を遮って両手のひらを地面に向けた。

 すると地面から灰色の粉末が吹き出し、彼の両手を一瞬の間に煽っていく。

 彼の手よりも大きく、カバーの様に集まって固まり、金属光沢を放つ。


 それは頑強な鋼鉄のグローブの様に俺には見えた。

 あれで殴るつもりなのだろうか?

 しかしそれを作っている間は彼はファイティングポーズも取っていない隙であり、魔物は彼の準備を待たずにアールに襲いかかる。


「アレがデルミスさんの───」

『ジェナアアアギョゴバッ!?』

「拳で傷つくところを」


 しかしアールの方の準備など、既に終わっていたのだ。

 ゴン! という重い音が響き、カウンターで魔物の顔面に叩き込まれたグローブが奴の甲殻にひびを入れ、一歩踏み込んで流れる様に腹にボディブロー、そして体が曲がったところに首筋にチャッピングライトが叩き込まれる。

 神速のコンビネーション。それも3発目は特に強力だったらしく、魔物の体は地面に叩きつけられて転がっていった。


「つまり、固いもので殴ればダメージはあるということです」

『ジュッ……アッ……』


 今まで全く魔力光を見せなかったアールの腕が発光しており、その膂力が尋常でないことを窺わせる。

 その証拠に魔物を殴った鋼鉄のグローブも大きくひび割れて凹んでいたが、その損傷はあっという間に修復されて、元の形状に戻ってしまっていた。


「チェレミーは、酷くやられたようですね?」

「うっ」

「だから気をつけろと言ったのですが。……まぁいいでしょう。さて、貴方は降伏する気はありますか?」

「はぁ?」


 アールはそうしてほんの少しだけ背後に視線をやったが、直ぐに前に向き直ると、黒い魔物に問いかけを投げた。

 チェレミーはその姿に疑問の声を上げていたが、アールは人型の奴が俺と同じ様な存在なのか、念の為に確認したのだろう。

 しかしあの魔物は強くて特殊なだけの魔物だ。


『ジェッ……ジェナアアアアアア!!』

「そうですか」


 案の定、問いに対して飛び掛かることで返答した魔物に対して、アールも分かっていたとばかりに、その顔面に拳打を叩き込んでいた。

色々やってたら更新が遅れに遅れた。ぐへぇ。

主人公が活躍しないシーンって長く書いていいのか分かんなくなるよね。

俺ツエーものってその辺悩まなくて良いから楽そう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 敵の体勢や動きが逐一想像できる形で書かれていて分かりやすい。 怪物・強い、だけの説明で押し通す作品と比べて空想する楽しさがあります [気になる点] 敵の叫びがだんだん某吸血鬼の『ウリィィィ…
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